精選版 日本国語大辞典 「肥」の意味・読み・例文・類語
こ・える【肥】
〘自ア下一(ヤ下一)〙 こ・ゆ 〘自ヤ下二〙
① 体の肉が増す。肉付きがよくなる。ふとる。
※万葉(8C後)八・一四六〇「戯奴(わけ)が為吾が手もすまに春の野に抜ける茅花(つばな)そ食(め)して肥(こえ)ませ」
※源氏(1001‐14頃)宿木「まろにうつくしくこえたりし人の、少し細やぎたるに」
② 地味が豊かになる。土地の生産力が高くなる。
※書紀(720)安閑元年七月(寛文版訓)「今汝膏腴(コエ)たる雌雉(きじ)田を奉進るべし」
③ 植物がよく生育する。
※俳諧・続猿蓑(1698)春「みそ部屋のにほひに肥る三葉哉〈夕可〉」
④ (「目、舌、耳などがこえる」の形で) 多くの経験を積み、感じ方や理解力などが豊かになる。
※落語・恵方詣(1890)〈三代目三遊亭円遊〉「落語(おはなし)も年々に上品(ぢゃうび)て参り、お客さまのお耳が漸々(だんだん)発達(コヘ)て入らっしゃいました上に」
こえ【肥】
〘名〙 (動詞「こえる(肥)」の連用形の名詞化) 土地の養分を豊かにし、作物の生育を促進する目的で田畑にほどこすもの。下肥(しもごえ)、堆肥などをいい、また、人間のそれを用いたことより、人の糞尿をさしていう。こやし。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※朝の歌(1916)〈若山牧水〉残雪行「昼かけて雨とかはれる白雪の原のをちこち肥料(コエ)運ぶ見ゆ」
とと・う ととふ【肥】
〘自ハ四〙 肥える。ふとる。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
こ・ゆ【肥】
〘自ヤ下二〙 ⇒こえる(肥)
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