祇園祭礼信仰記(読み)ギオンサイレイシンコウキ

デジタル大辞泉 「祇園祭礼信仰記」の意味・読み・例文・類語

ぎおんさいれいしんこうき〔ギヲンサイレイシンカウキ〕【祇園祭礼信仰記】

浄瑠璃時代物。五段。中邑阿契なかむらあけい豊竹応律とよたけおうりつ黒蔵主こくぞうすらの合作。宝暦7年(1757)大坂豊竹座初演。「信長一代記」を題材とし、特に四段目の「金閣寺」が有名。

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精選版 日本国語大辞典 「祇園祭礼信仰記」の意味・読み・例文・類語

ぎおんさいれいしんこうき ギヲンサイレイシンカウキ【祇園祭礼信仰記】

浄瑠璃。時代物。五段。中邑阿契(なかむらあけい)・豊竹応律・黒蔵主らの合作。宝暦七年(一七五七)、大坂豊竹座初演。「信長記」に題材をとり、足利家に逆心を抱く松永大膳が木下東吉の知謀によって討ち取られるまでを脚色。四段目の「金閣寺」が有名。

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改訂新版 世界大百科事典 「祇園祭礼信仰記」の意味・わかりやすい解説

祇園祭礼信仰記 (ぎおんさいれいしんこうき)

人形浄瑠璃。時代物。5段。中邑阿契(なかむらあけい)・豊竹応律・黒蔵主・三津飲子・浅田一鳥による合作。1757年(宝暦7)12月5日から大坂豊竹座で初演。小瀬甫庵の《信長記(しんちようき)》などで知られた信長一代記に取材したもの。好評作で,59年2月まで,3年越しの続演。四段目金閣寺の三重のセリ上げ・セリ下げという大道具の工夫(《摂陽奇観》)や,此下東吉(木下藤吉郎に当たる)の人形の首(かしら)を京都高台寺の秀吉木像に似せて造ったこと(《浄瑠璃譜》)などが人気を呼んだ。絵尽しにあるように,初め《祇園祭礼信長記》といったが,のちに改めた。《大和怪談頃日全書》に〈織田・羽柴等を造込みし故,遠慮弁へずとの事也〉とあるように,信長をはばかってのこととされるが,明らかでない。題名は,二段目に小田信長が,祇園牛頭天王の祭礼を再興させる説があることからでた。浄瑠璃としては三段目〈上燗屋〉〈是斎住家〉,四段目〈金閣寺〉が中心。(1)初段 松永大膳らは,主君足利義輝を酒色にふけらせる。小田信長はそれを心配する。(2)二段目 義輝は大膳の画策で殺され,此下東吉は,信長にとりたてられて大名となる。(3)三段目 若君輝若は逃れる。かつて大膳に一味した松下嘉平次(是斎)は,義を重んじて自害するが,下人新作は,名を曾呂利新左衛門と改めて,東吉に仕える。これには十河軍平,実は加藤正清の計らいがあった。(4)四段目 大膳は,足利家を横領し,金閣寺に居を構えている。義輝の母慶寿院は押し込められ,また,絵師雪村の娘雪姫とその恋人狩野直信も捕らえられる。雪姫は,縛られたまま爪先で描いたねずみに魂がこもって縄を食いきるので,助けられる。東吉は,大膳に降参すると見せかけ,狩野家の宝刀を奪い返し,慶寿院を救いだす。(5)五段目 大膳は討たれ,足利家も安泰となる。歌舞伎では翌58年1月京早雲長太夫座(南側芝居)で《祇園祭礼信長記》として上演される。京布袋屋梅之丞座(北側芝居)も信長記物の《けいせいにはとり山》を出し,両座競演となった。江戸でも同年夏(推定)森田座で初演。とくに〈金閣寺〉は絢爛たる舞台面が喜ばれて人気を呼び,《金閣寺》の通称で今日に伝わった。雪姫は歌舞伎では〈三姫〉の一つとされる大役である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「祇園祭礼信仰記」の意味・わかりやすい解説

祇園祭礼信仰記
ぎおんさいれいしんこうき

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。時代物。5段。中邑阿契(なかむらあけい)・豊竹応律(とよたけおうりつ)・黒蔵主(こくぞうす)・三津飲子・浅田一鳥(いっちょう)合作。1757年(宝暦7)12月、大坂・豊竹座初演。織田信長の事績『信長記(しんちょうき)』に取材、作中の小田春永(はるなが)が信長、此下東吉(このしたとうきち)が木下藤吉郎秀吉を示す。春永が祇園牛頭天王(ごずてんのう)の祭礼を再興する話(二段目)が名題(なだい)の由来で、ほかに薬屋是斎(ぜさい)実は松下嘉平次の話(三段目)なども扱われているが、有名なのは四段目「金閣寺」。人形初演のとき金閣寺の道具のセリ上げ、セリ下げが評判になり、翌年歌舞伎(かぶき)化されてからも舞台機構の進歩に大きく貢献した。

 謀反人松永大膳(だいぜん)は足利(あしかが)将軍の母慶寿院(けいじゅいん)を金閣寺の楼上に押し込め、絵師狩野雪村(かのうせっそん)の娘雪姫(ゆきひめ)に恋慕して従えと迫る。雪姫は大膳を父の敵(かたき)と知って斬(き)りつけ、逆に桜の木に縛られるが、祖父雪舟(せっしゅう)の故事に倣って足で桜の花びらをかき集めてねずみの絵をかくと、絵は本物のねずみと化して姫の縄を食い切る。此下東吉は降参と見せかけて大膳を油断させ、慶寿院を救い出し、くやしがる大膳と再会を約して別れる。絢爛(けんらん)たる金閣寺を背景に、立敵(たてがたき)の大膳、さっそうたる武将の東吉、立女方(たておやま)の雪姫の3役がそれぞれ見せ場をもつ演目。ことに雪姫は八重垣姫(やえがきひめ)・時姫(ときひめ)とともに歌舞伎の「三姫」といわれる大役の一つで、縛られたままの姿でねずみの絵をかく「爪先鼠(つまさきねずみ)」のくだりは人形振りで演ずる俳優もある。

[松井俊諭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「祇園祭礼信仰記」の意味・わかりやすい解説

祇園祭礼信仰記
ぎおんさいれいしんこうき

浄瑠璃。時代物。5段。中邑阿契ほか合作。宝暦7 (1757) 年大坂豊竹座初演。当初の名題『祇園祭礼信長記』の信長をはばかり,信仰記と改めたもの。小田信長の家臣此下東吉が,足利将軍義輝を殺した逆賊松永大膳を知略をもって滅ぼす物語。通称「金閣寺」と呼ばれる4段目で金閣寺の三重のせり上げ,せり下げが人気を呼び,興行は3年越しの大当りとなった。文楽では3段目も上演する。歌舞伎では翌8年京都で初演。4段目の雪姫は八重垣姫,時姫とともに三姫の一つとして歌舞伎女方の難役とされている。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「祇園祭礼信仰記」の解説

祇園祭礼信仰記
ぎおんさいれい しんこうき

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
補作者
近松徳叟 ほか
初演
寛保1.3(大坂・中村十蔵座)

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