社会的連帯(読み)しゃかいてきれんたい(英語表記)social solidarity

改訂新版 世界大百科事典 「社会的連帯」の意味・わかりやすい解説

社会的連帯 (しゃかいてきれんたい)
social solidarity

個人および各種類の集団(民族国家も含む)が相互的な依存関係のなかで形成している密接な結合状態をいう。連帯責任,階級的連帯連帯主義などといわれる。相互に結びついている形態や結びつきの深さ,結びつきを左右する動機根拠とその確定の程度,その結びつきの媒体となる紐帯およびその紐帯の強さには,いくつもの種類とさまざまな度合がある。社会学者のデュルケームは《社会分業論》(1893)のなかで社会の進化を論じ,社会生活において諸個人および諸集団が相互に依存しあう結びつきの全体的な特徴を〈機械的連帯〉と〈有機的連帯〉とに分けた。前者は,分業の未発達な段階で互いに類似した同質的な--その意味でさながら機械の部品のように取りかえやすい性質をもった--成員が相対的に閉じた空間内で結合しあう共同状態を指す。後者は,分業が発達して各種の職業につき,さらには空間的に開いた社会・文化・心理的な状況において宗教,民族,言語,関心などさまざまな点で異質的な成員が,それぞれの個性を前提としながら相互に直接・間接の依存関係におかれる状態を指す。それは,人体など有機体の諸器官がそれぞれに微妙なかかわり方をしながら生命維持に貢献している姿を連想させる。ただしこの二分法的な類型論は,あくまでも社会全体の特徴を概括したものである。

 客観的な事実として成り立った連帯は,そこに密接な結合があるというだけではなく,その直接・間接の相互依存関係をとおして,たとえば友情や愛情,同志や仲間など,成員相互の意識上の密接な結合を生み出す傾向がある。そしてこの結合の客観的・主観的な事実があってこそ,その依存関係を持続していること,またそのためになすべき思考や行動が,結合しあう成員個々にとって一種義務や責任として自覚され,ときには内面での拘束外側からの強制力として作用することにもなりうる。これはまさに連帯の規範的側面であって,デュルケームは,この連帯の可能性を問うことによって道徳の客観的な基礎を説明しているのである。
分業[社会的分業]
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会的連帯」の意味・わかりやすい解説

社会的連帯
しゃかいてきれんたい
social solidarity

一般的には,諸個人の相互作用の形態が調和的関係として相互依存的であることをいう。近代ヨーロッパ社会思想史に即してみると,その思想的デッサンはフランス革命後のいわゆる伝統主義,つまり L.G.A.ボナール,J.メーストルらの主張に起点をもち,コント学説のうちに継承された。第3共和制期のいわゆる連帯主義はその思想的結晶であったということができる。社会学の領域では É.デュルケムの主張が傑出している。彼によれば,社会的連帯とは機械的連帯と有機的連帯とに区別される。前者は社会成員の同質性を基盤として成立するのに対し,後者は成員の異質性を基盤とし,異質者の間に行われる連帯である。社会的分業の視点からみれば,前者は同質的分業であり,後者は異質的分業である。さらに社会形態からいえば,機械的連帯に基づく社会が環節的社会,有機的連帯に基づく社会が有機的社会であって,巨視的には前者から後者への社会進化を認めることができると主張される。

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