デュルケーム(読み)でゅるけーむ(英語表記)Émile Durkheim

精選版 日本国語大辞典 「デュルケーム」の意味・読み・例文・類語

デュルケーム

(Emile Durkheim エミール━) フランス社会学者。コント実証主義発展させ、客観主義的な社会学を樹立。現代フランス社会学の主流を形成した。主著「社会分業論」「社会学的方法の基準」「自殺論」「宗教生活の原初形態」。(一八五八‐一九一七

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デジタル大辞泉 「デュルケーム」の意味・読み・例文・類語

デュルケーム(Émile Durkheim)

[1858~1917]フランスの社会学者。コント実証主義から出発し、社会的事実を客観的に考察する科学としての社会学の方法論を確立。著「社会学的方法の規準」「自殺論」「宗教生活の原初形態」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「デュルケーム」の意味・わかりやすい解説

デュルケーム
でゅるけーむ
Émile Durkheim
(1858―1917)

フランスの社会学者。4月15日東フランス、ロレーヌ地方のエピナルに生まれる。1882年エコール・ノルマル・シュペリュール(高等師範学校)を卒業。ボルドー大学、ついでパリ大学の教授を務めた。社会学の固有の方法の確立に努め、それに基づき分業、自殺、家族、国家、法、社会主義など当時の西欧社会の諸問題の研究や、社会生活の原型を求めての未開の宗教の考察などに取り組み、豊かな成果をあげた。また『社会学年報』(1898~1913)を創刊、主宰し、デュルケーム学派の名でよばれる多数の社会学者グループを指導し、その後の社会学の展開に大きな影響を及ぼした。おもな著書としては『社会分業論』(1893)、『社会学的方法の規準』(1895)、『自殺論』(1897)、『宗教生活の原初形態』(1912)などがある。

 哲学的思弁からも、個人主義的、心理的説明方法からも独立した、独自の社会的事実の科学としての社会学の確立を企図した。社会的事実を個人の心意には還元できない一種独特の実在としてとらえ、これを「事物のように」客観的に考察し、その発生や展開を社会的諸環境と関連づけて説明することが、彼の定式化した方法の中心的原理である。以上の方法がさまざまな研究対象に適用され、分業については、その発展が人口増大をはじめとする社会形態の変化によって説明され、自殺については、各社会の示す自殺率の変動が社会経済的ならびに道徳的環境の影響によって説明されている。とくに彼の自殺研究は、データとしてヨーロッパ各国の統計を大規模に用いており、経験的な社会学研究の古典、雛型(ひながた)として評価されている。また、晩年に努力を傾注した宗教研究は、宗教の社会事象としての性格をオーストラリア先住民のトーテム信仰に即して明らかにしたもので、後の宗教社会学の発展に大きな寄与をなした。

 しかし、これらの研究は方法的関心のみによって導かれているのではなく、急激かつ無規制的な当時の産業化の引き起こした社会変動に対する危機認識にも基づいている。分業の無規制の結果である社会的連帯の崩壊、社会からの個人の孤立化と功利主義蔓延(まんえん)、欲求の異常肥大と自殺の増大などが、そのような視角からとらえられている。これらの問題状況をアノミー(無規範、無規制)という独自の概念をもって把握し、診断し、あわせてその解決のための方途を追究したところに彼の社会学的思考の実践的性格があることも無視されてはならない。1917年11月15日パリで死去した。

宮島 喬]

『宮島喬訳『自殺論』(『世界の名著47』所収・1968・中央公論社)』『田原音和訳『現代社会学体系2 社会分業論』(1971・青木書店)』『宮島喬訳『社会学的方法の規準』(岩波文庫)』『古野清人訳『宗教生活の原初形態』(岩波文庫)』『宮島喬著『デュルケム社会理論の研究』(1977・東京大学出版会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「デュルケーム」の意味・わかりやすい解説

デュルケーム
Émile Durkheim
生没年:1858-1917

フランスの社会学者。社会学の方法の確立につとめ,それにもとづき当時の西欧社会のさまざまな社会問題を考察し,社会生活の原型を追究して未開地域の宗教の解明にも取り組むなど,多面的な成果をあげた。のちにデュルケーム学派とよばれるようになる社会学者のグループを形成,指導し,フランスにおける社会学の発展に大きく寄与した。

 ユダヤ系のフランス人として東部フランスのロレーヌ地方エピナルに生まれる。1882年パリの高等師範学校を卒業,ドイツ留学ののちボルドー大学教授となる。98年には《社会学年報》を創刊し,これがデュルケーム学派のいわば機関誌の役割を果たす。1902年よりパリ大学教授を務める。おもな著書として《社会分業論》(1893),《社会学的方法の規準》(1895),《自殺論》(1897),《宗教生活の原初形態》(1912)などがある。

 デュルケームは,社会的事実を,個々人の心意やそれらの単なる総和には還元できない一種独特の実在としてとらえることを要請し,これを対象としてのみ固有の方法をもった社会学が成立しうるとした。この社会的事実を〈事物のように〉個人に外在的な対象として客観的に考察し,その成立や発展をもっぱら社会的諸環境と関連づけて説明することが,彼の定式化した社会学的方法の中心原理である。これは,哲学的思弁,心理主義,功利主義的個人主義などの傾向から決別して社会学の独自の方法を確立しようとする企図であり,重要な意義をもつものであったが,反面,〈社会学主義〉としてその排他的主張がしばしば批判の的とされてきた。いずれにせよ,このような考察方法が彼の著作ではさまざまな対象に適用されている。たとえば分業については,その発展が人口増大・集中等にもとづく社会形態の変化によって説明され,自殺については,各社会の示す自殺率の変動が社会経済的・道徳的環境の変化によって説明されている。とくにその自殺研究はデータとしてヨーロッパ各国の自殺統計を大規模に用い,この種の経験的社会学研究の古典として今日なお高く評価されている。また,晩年の一大業績である宗教研究は,宗教がすぐれて社会的事象であることをアボリジニートーテミズムに即して明らかにしたもので,その後の宗教社会学の発展に大きな寄与をなした。

 しかし,デュルケームの諸研究が単に方法的関心ばかりでなく,時代の投げかけてくる課題にこたえようとする実践的関心にもみちびかれていたことは見逃されてはならない。すなわち,急激かつ無規制的な産業化によってひきおこされた西欧社会の変動にたいする危機意識が,その諸研究のなかに色濃く反映されている。分業の無規制の結果である社会的連帯の崩壊,功利主義のまんえんによる弱肉強食の競争の激化,個人の孤立化や欲求の異常肥大によって生じる自殺の増大などがそのような観点から考察され,診断されているのである。これらの問題状況を〈アノミー〉という概念をもって把握し,その原因を探求し,解決のために産業の規制,職業集団の組織化などを構想したところに,彼の社会学的思考の実践的性格がよくうかがわれる。
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百科事典マイペディア 「デュルケーム」の意味・わかりやすい解説

デュルケーム

フランスの社会学者。従来の生物学的(社会有機体説)・心理学的方法に代わる,社会学に固有な,客観的・社会学的方法を提唱。社会現象は個人的心理的現象に還元され得ない独自の領域をなす。したがって〈社会的事実〉としての諸現象は感情的評価から離れて,〈もの〉として客観的に観察・記述されねばならないとする。彼を中心にデュルケーム学派が形成され,社会学主義に基づく道徳・宗教・経済・法律・言語などの各方面において社会学的研究を展開した。著書に《社会分業論》《社会学的方法の規準》《自殺論》《宗教生活の原初形態》などがあり,アノミー論,集合表象論はいまなお大きな影響を与えている。
→関連項目逸脱行動ギデンスギュルビッチグラネ現象学的社会学自殺社会学社会的分業集合表象高田保馬タブーバーガーモースレビ・ブリュール連帯主義

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大学事典 「デュルケーム」の解説

デュルケーム
Émile

高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)卒業後,リセ(高等学校)での数年間の教員を経て,1887年にボルドー,次いで1902年にパリのソルボンヌで大学人としての経歴を歩み,フランスにおける社会学の定礎者として知られるデュルケームは,フランス東部ロレーヌ地方のエピナルに1858年に生まれ,1917年パリに没している。普仏戦争(1870~71年)におけるフランスの敗北後の第三共和政期に「祖国の再建」を目指した大学人の世代に属する彼は,グランド・ゼコールとの対比の中で大学をとらえている。すなわち前者が技術・職業教育の場,科学の応用を学ぶ場として性格づけられるのに対して,後者を科学の中心地としてとらえ,この科学によるフランス社会の再興を求めたのである。『自殺論』(1897年)等の社会学的な著作のほかに,大学に関連する著作としては「ドイツの大学における哲学」(1887年),「パリ大学の歴史」(1918年),『フランス教育思想史』(1938年)などが挙げられる。
著者: 白鳥義彦

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旺文社世界史事典 三訂版 「デュルケーム」の解説

デュルケーム
Emile Durkheim

1858〜1917
フランスの社会学者
社会を個人に優越するものとして客観主義的社会学を確立した。『社会分業論』『自殺論』などの著書がある。

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世界大百科事典(旧版)内のデュルケームの言及

【アノミー】より

…社会規範の動揺や崩壊などによって生じる混沌状態,あるいはその結果である社会の成員の欲求や行為の無規制状態をいう。フランスの社会学者デュルケームによって用いられるようになった社会学上の概念。語源的には,〈無法律状態〉などを意味するギリシア語のanomosに由来するといわれるが,デュルケームが《社会分業論》(1893)および《自殺論》(1897)でこの概念を用いて以来注目され,今世紀の社会学者によって社会解体,価値の不統合,疎外などさまざまな現象を分析し記述する際にさかんに用いられるようになった。…

【逸脱】より

…一定規格からの偏倚を総称して逸脱という。したがって,単に統計的な意味で出現頻度のごく少ない現象をそう呼ぶこともできるが,一般には,その上になんらかの道徳的判断が加わり,ルールから外れた望ましくない行動ないし態度を指して,逸脱ということが多い。当初,学問の世界でこの言葉が採用された事情は別であった。異常,違反,病理など,どう呼んでも一般世人の常識ないし偏見に影響される現象について,より科学的な,あるいはより公平な態度でのぞむべく,学問的要請にこたえて採用された言葉であった。…

【エゴイズム】より

…日常用いられている意味では,エゴイズム(利己主義)とは自己の欲望の充足あるいは利益の追求をもっぱら念頭において行動し,その行動が他者や社会一般に及ぼす迷惑を考慮に入れない態度を指す。エゴイズムという語は個人主義individualismという語と同じ意味に用いられることもある。しかし個人主義という概念は自律autonomyの要素を含むと考えるなら,エゴイズムはしばしば個人主義ではない。なぜなら,エゴイストはしばしば特定の対象を他者が欲しているがゆえにその対象を自分もほしがり,一般に利益と思われているものを自分の利益と考えるからである。…

【教育学】より

…教育の本質,目的,内容,方法,さらに制度,行政など,教育現象のさまざまな分野,問題についての個別研究をふくみ,教育現象の全体的構造を統一的に把握しようとする学問。
【教授の学としての教育学】
 〈教育学〉の語は中国から渡来したのではなく,ヨーロッパ語系のペダゴジー(ドイツ語ではPädagogik,フランス語ではpédagogie)の訳語として,1880年代から使用され始めた。この語を使用した最初の著作は伊沢修二著《教育学》(1882)である。…

【教育社会学】より

…教育といういとなみを一つの社会現象としてとらえ,社会学的角度から分析・研究しようとする実証的経験科学。教育心理学が心理現象としての教育に心理学的角度から接近しようとするのに対して,教育社会学は社会学的接近方法をとる点に両者の相違がある。また従来は,教育といういとなみを主として学校教育に限定し,人間発達に対する学校教育の影響・効果を主たる研究テーマとしてきたが,近年は,人間の発達成長は決して学校教育のみに規定されているわけではないという事実認識に立って,その研究領域を,家族集団の人間形成機能,子ども集団の人間形成機能,さらにはマス・コミュニケーション,子ども文化,青年文化のそれなどへと拡大してきている。…

【儀礼】より

…宗教的な儀式や,一定の法にのっとった礼式をさす。しかし,19世紀末以降の人文・社会科学,ことに民族学者・社会人類学者らによる調査と研究は,この言葉により深い意義と広がりとを与えた。すなわち,儀礼という行動様式は,ふだんの生活とは異なった時間と空間の中で行われ,さまざまな歌や踊り,色鮮やかな衣装や飾り物などを伴って,ある場合は荘厳な雰囲気を,またある場合は陽気な喧噪状態を作りだし,日常生活の中の言語や通常の技術的道具などでは表し伝ええない,社会の連帯といった価値や,結婚・死といった重大なる事件を明確に表現し,心に強く刻みこむ働きを持つ,ということが明らかになった。…

【自殺】より

…みずからの意志でみずからの生命を絶つ行為。ヨーロッパ語でも日本語同様に〈みずからを殺す〉という意味の合成語である。したがって,人に犠牲を強いられたり強制されたりして死ぬのは自殺とはいわない。古来,自殺に対する評価も多様であり,宗教上の教義とも深くかかわっている。コーランやタルムードでは自殺を罪悪として厳しく禁止しており,キリスト教も自殺を罪悪としてきた(一時期,凌辱を避けるための婦人の自殺の是非についての論議があった)。…

【実証主義】より

…一般に,経験に与えられる事実の背後に超経験的な実体を想定したり,経験に由来しない概念を用いて思考したりすることを避け,事実のみに基づいて論証を推し進めようとする主張をいう。positiveという形容詞には,negative(〈否定的,消極的,陰性の〉)と対をなす〈肯定的,積極的,陽性の〉という意味もあるが,それとは意味論的に区別され,negativeとは対をなさない〈実証的,事実的〉という意味もあり,それは次のような事情で生じたものである。…

【社会心理学】より

…社会的諸条件の下におかれた人間の心理や行動を,それらの条件に根ざす諸要因と関連づけて理解し,説明しようとする社会科学の一部門。ただし,ここでいう社会的諸条件とは,他の人間,集団,集合(群集,聴衆など),社会過程,制度,社会構造,文化等を含むものである。社会心理学は,実際には心理学と社会諸科学の境界科学という性格が強く,その立場によって関心の焦点やアプローチの方法にもかなりの差がある。大別すると,社会的因子を重視しつつ個人の心理や行動の理解をめざす心理学的な社会心理学の立場,および社会構造やその変動の心理的諸帰結,もしくは集合行動や集合的心理現象それ自体に関心を示す社会学的な社会心理学の立場が区別されよう。…

【社会的連帯】より

…個人および各種類の集団(民族や国家も含む)が相互的な依存関係のなかで形成している密接な結合状態をいう。連帯責任,階級的連帯,連帯主義などといわれる。相互に結びついている形態や結びつきの深さ,結びつきを左右する動機や根拠とその確定の程度,その結びつきの媒体となる紐帯およびその紐帯の強さには,いくつもの種類とさまざまな度合がある。社会学者のデュルケームは《社会分業論》(1893)のなかで社会の進化を論じ,社会生活において諸個人および諸集団が相互に依存しあう結びつきの全体的な特徴を〈機械的連帯〉と〈有機的連帯〉とに分けた。…

【社会発展】より

…社会構造が別のものに変化したり,より単純な構造のものからより複雑な構造のものへ変化したりするときのプロセスやその形態をいう。この変化が漸進的で量的なものなのか,それとも革命的で質的なものなのか,また,この変化が望ましい状態に向けての変化であるのかどうか,あるいはまた変化の原因が社会の内部にあるのかそれとも外部にあるのか,などについて論者の意見は異なる。 この変化の過程を一定の方向に向かっての直線的で累積的なものとしてとらえるのが社会進化論の立場である。…

【社会分業論】より

…フランスの社会学者デュルケームの著書。1893年刊行。社会における分業の発達の原因をさぐり,その発達によって生じる社会的・道徳的変化を考察する。デュルケームによれば,分業は人口の増大・集中,環節的社会構造の崩壊,交通手段の発達などにともなって進行する。その結果しだいに職能の専門化が進み,集合意識の斉一的な支配が弱まり,社会成員の異質化と個性化が生じる。それは社会の諸単位が異質化しつつ相互依存性を深めていくことを意味するわけで,そこに新たな連帯,〈有機的連帯〉がつくり出されていく。…

【社会変動】より

…社会や社会現象の変化をあらわす言葉は多いが,端的にいって,社会変動とは社会構造の変動を意味している。要するに構造変動である。その場合,社会組織や社会制度といった巨視的な構造のレベルで生ずる変動が重要である。たとえば,技術革新の普及により企業組織の人員配置に大きな異動がおこり,専門職への需要が増大して,教育制度や雇用制度が変動していき,さらに階級構造の変動へ波及していくというのは,社会変動の具体的な過程の一例である。…

【宗教】より


【宗教をどのように考えるか】
 1970年代のことであるが,月面に立ったアメリカの宇宙飛行士12人のうち3人までが,地球に帰還したのち宗教的な仕事に就いた。神にふれた経験を語り,心霊科学に関心を寄せるようになったのである。彼らはおそらく原始人類がこの地球上で感じたであろう恐怖と神秘とを,宇宙空間で体験したにちがいない。ところで,第2次世界大戦期におけるナチズムによるユダヤ人迫害はよく知られているが,強制収容所での組織的集団虐殺は1940年からの5年間に600万人に達したという。…

【宗教教育】より

…広義には聖職者養成を目的とした教育を含むが,一般的には,世俗人の絶対者(神・仏)への帰依,信仰心の育成を目的とした教育をいう。宗教教育は,絶対者の前における人間の平等を教えた反面,現世の秩序・権力への服従を肯定しがちな傾向を示した。学校における宗教教育の位置づけは,(1)教育の最高目標,(2)諸教科のなかの一つ,(3)学校教育からの排除(教育の世俗化)の三つに大きく分けられるが,近代学校では(1)(2)から(3)への移行が世界的流れといえる。…

【宗教社会学】より

…宗教的行為や宗教制度などの宗教的現象を社会学的方法論を用いて説明しようとする学問。学問の分野としては,宗教学と社会学の境界領域,文化人類学,社会人類学,社会心理学ととくに関係があり,宗教史,思想史,民族学,民俗学,心理学,人文地理学とも関連する。宗教社会学は,19世紀後半に西ヨーロッパで成立した。そこには近代社会におけるキリスト教の位置と価値に対する再検討の必要性や,キリスト教以外の宗教への新しい認識の必要性に迫られたという背景がある。…

【犯罪学】より

…狭義の犯罪学は犯罪現象と犯罪原因とをおもな研究対象とする学問をいう。人間に関する経験科学の成果に基づいて,犯罪行動と犯罪人について総合的に研究する。広義では犯罪の防止と鎮圧のための諸方策を研究する刑事政策学をも含む。狭義の犯罪学は,犯罪生物学,犯罪心理学,犯罪精神医学(後2者は広義の犯罪生物学に含まれる),犯罪社会学などに分かれる。また刑事学という用語も狭義または広義の犯罪学と同義に用いられる。
[犯罪の生物学的・心理学的要因]
 実証的な犯罪学研究は19世紀後半のヨーロッパに始まるといえるが,犯罪人類学の祖で《犯罪人論》(1876)を著したイタリアのロンブローゾは,犯罪人についての解剖学的調査結果や精神医学的知見に基づいて,犯罪人の中には一定の身体的・精神的特徴を具備した者がおり,このような者は必然的に犯罪におちいるものであるとし,これを隔世遺伝説によって説明する〈生来性犯罪人説〉を主張した。…

※「デュルケーム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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