(読み)タイ

デジタル大辞泉 「滞」の意味・読み・例文・類語

たい【滞〔滯〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]タイ(慣) [訓]とどこおる
物事一所にとどまって進まない。とどこおる。「滞貨滞納延滞凝滞渋滞遅滞沈滞停滞
ある場所に足をとめる。「滞欧滞空滞在滞日滞留

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精選版 日本国語大辞典 「滞」の意味・読み・例文・類語

とどこお・る とどこほる【滞】

〘自ラ五(四)〙
① 途中でつかえて、先へ行かなくなる。停滞する。つかえる。よどむ。
万葉(8C後)二〇・四三九八「ことどひすれば 群鳥(むらとり)の 出でたちかてに 等騰己保里(トドコホリ) かへり見しつつ いや遠に 国を来離れ」
② こりかたまる。むすぼる。集まる。こる。
書紀(720)神代上(兼方本訓)「重濁(かさなりにこ)れるものは淹滞(トトコホリ)て地(つち)と為(な)るに及むで」
③ からみついて、動く邪魔になる。
※万葉(8C後)四・四九二「衣手に取り等騰己保里(トドコホリ)泣く児にもまされる吾を置きていかにせむ」
④ 差し支えがあり、物事のなりゆきが順調でなくなる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)八「意に随ひて成就して礙滞(トトコホル)こと無からむと欲(おも)はむ者(い)は」
⑤ 自制して、心のままにふるまうことをさける。ためらう。ぐずぐずする。躊躇する。
※源氏(1001‐14頃)賢木「これは何事にかはとどこほり給はむ、ゆくゆくと宮にもうれへ聞え給ふ」
⑥ 流れているものがとまる。
※源氏(1001‐14頃)蜻蛉「おしのごひまぎらはし給ふとおぼす涙の、やがてとどこほらずふりおつれば」
⑦ 定期的に納めるべき金品が、未納のままたまる。順調に返済納付が行なわれなくなる。
拾遺(1005‐07頃か)神楽歌・六〇八「ととこほる時もあらじな近江なるおものの浜のあまのひつぎは」
和歌で「とどこほる」に「氷る」をかけていう。すらすらと氷がとけて行かなくなる。
斎宮女御集(985頃か)「谷深みやましたかげにゆく水はとくるもいさやとどこほりつつ」

とどこおり とどこほり【滞】

〘名〙 (動詞「とどこおる(滞)」の連用形名詞化)
① さしさわること。さしつかえること。よどむこと。停滞すること。また、そのもの。
※能因本枕(10C終)三一「寺には法師、神は禰宜などやうの者の、思ふ程よりも過ぎて、とどこほりなく聞きよく申したる」
※源氏(1001‐14頃)明石「遙々と物のとどこほりなき海づらなるに」
期限が過ぎても支払わないこと。所定の期限が過ぎても、返済・納付されないこと。また、その金額。滞納金。
評判記色道大鏡(1678)一五「或家よりよび込、古きとどこほりをことはる」

とどこおら・す とどこほらす【滞】

〘他サ五(四)〙
① 物事がつかえて進まないようにする。
※大慈恩寺三蔵法師伝承徳三年点(1099)「文句を上下に滞(トトコホラシ)、字音を平去に誤りつ」
② 期限を過ぎても支払わないままにする。
※倫敦消息(1901)〈夏目漱石〉三「少々家賃を滞ふらしたのが」

とどこ・る【滞】

〘自ラ四〙 =とどこおる(滞)〔字鏡集(1245)〕
※太平記(14C後)一七「小笠原上洛の路に滞(トトコッ)て、不慮に両度の合戦を致し」

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