日本大百科全書(ニッポニカ) 「沢庵漬け」の意味・わかりやすい解説
沢庵漬け
たくあんづけ
乾燥した大根を米糠(ぬか)と塩を混ぜた床に漬けたもの。日本の代表的漬物で、長期間保存がきく。沢庵漬けの起源については諸説があるが、沢庵宗彭(そうほう)(1573―1645)との関係説が有力である。沢庵和尚(おしょう)は但馬(たじま)(兵庫県)出石(いずし)の宗鏡寺(すきょうじ)の門に入り、のちに京都大徳寺の僧から江戸品川の東海寺に迎えられた高僧であるが、宗鏡寺時代に考案されたものと伝えられる。野菜類を糠と塩で漬ける方法はそれよりずっと以前から行われていたが、沢庵和尚が創意工夫を加えて、今日の沢庵漬けの基礎をつくり普及させたためにその名がつけられたものであろう。
沢庵漬けには、美濃早生(みのわせ)、練馬(ねりま)、宮重(みやしげ)などの系統の品種がよいとされている。乾燥した大根を用いるが、保存期間により、乾燥の日数が違う。当座漬けでは5日~1週間日に当てて干すが、半年以上保存する場合は折り曲げて輪になるくらいまで干す。干し上がった大根は平らな板の上で転がしながらもんで柔らかくして漬け込む。糠は塩とあわせたものを使い、塩の量も保存期間により異なる。長く貯蔵するものほど塩の量を多くし、糠は少なくする。漬け物容器に、塩とあわせた糠をふりかけながら、干し大根をきっちりと並べる。できたすきまは小形の大根や干した大根葉で埋める。すきまができるとそこに漬け水がたまり、変質したり早く酸味が出る。いちばん上には塩糠を多めにふり、干した大根の葉をかぶせ、蓋(ふた)をして重石(おもし)をする。沢庵漬けは、糠の成分が糠の中に含まれている酵素によって分解されて甘味を生じ、乳酸発酵によって一部の糖が酸に変わり、これらが大根に浸透して塩味とともによい風味を出す。市販品には、乾燥大根は用いず、生のまま食塩水につけて脱水し、これに、糠、食塩、うま味調味料、着色料、保存料などを加えたものをふりかけて数日漬けたものも多く出回っている。
沢庵はその土地自慢のものもたくさんある。概してよいダイコンのとれる地方、ダイコンを干すのに都合のよい潮風の当たる所に多く産し、静岡県の七尾沢庵、三島(みしま)沢庵、愛知県の渥美(あつみ)沢庵、三重県の伊勢(いせ)沢庵、和歌山県の紀ノ川漬け、山口県の山口沢庵などがよく知られている。