わせ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「わせ」の意味・わかりやすい解説

わせ
わせ / 早生

同じ種の作物のなかで、その標準的な開花期のものよりも早く開花し、早く成熟するものをわせといい、そのような品種をわせ品種という。反対に晩(おそ)く開花成熟する品種をおくて(晩生)品種という。わせ・おくての性質は、個体が栄養成長から生殖成長に転換する時期が早いか晩いかということであり、イネなど一年生作物では、発芽から成長して、花芽を分化するまでの早・晩、つまり栄養成長期間が短いか長いかということである。わせでもおくてでも、花芽ができてから、開花、成熟に至る生殖成長期間の長さは、あまり異ならないのが普通である。

 わせ・おくては、ある一定の地域内での相対的な違いであることが多い。たとえば、日本でおくてのイネの品種も、これを熱帯において栽培するときはわせとなる。同様に九州でわせの品種も北海道で栽培するときには、おくてとなることもありうる。これは、作物によって、また品種によって、花芽をつけるための環境条件が異なっており、その必要条件に達する時期が地域によって異なるからである。

 農作物の栽培においては、わせ品種は一般に収量は少ないが、早く収穫出荷できる点で、栽培上も経営上も有利なことが多い。山間高冷地は平坦(へいたん)地より、またやせ地は肥沃(ひよく)地よりわせの品種を栽培するのが普通である。また同一地域でも、わせ・おくての品種を組み合わせて、冷害台風などの被害軽減回避策とすることもある。

[星川清親]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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