殺菌
「殺菌」に関連する用語はいくつかあり,必ずしも明確に区別されていない.医学領域では,「殺菌」は一般的でなく,滅菌(sterilization)が正しい.微生物すべてを死滅させることで,例えば「器具の滅菌」「ガス滅菌」というように使う.他に,消毒(disinfection)があるが,これは滅菌することでなく,菌を殺したり,除去することによって菌数を減らし,感染の危険を減少させる作業である.例えば,「手指の消毒」というように使う.
食品関係でも「滅菌」はすべての微生物を死滅させる方法をいう.食品を滅菌すれば,微生物による腐敗は避けられる.例えば,缶詰やLL牛乳などは,通常滅菌されている.一方,pasteurizationは,「低温殺菌」とか「火入れ」とよばれるが,この操作は有害な微生物を殺すなどして減少させ,食べて安全な状態にする意味で使われる.無害な微生物は必ずしも除去の対象にはならない.他に,静菌という方法もあり,この方法は,微生物が増殖しにくい状況にすることで,薬剤を用いたり,高濃度の糖,塩などを添加して行われる.また,「殺菌料」というように,「殺菌」という言葉が使われるが,これはやはり微生物の数を減らしたり,食品を食べて安全な状態に維持する物質である.したがって,「滅菌料」とはいわない.以上のことから考えると「殺菌」は専門用語というよりは,一般用語といえる.ただし,医学辞典などでも,「殺菌」を「滅菌」のこととしているものもある.
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殺菌【さっきん】
滅菌とも。微生物のうち主として細菌を死滅させる,あるいは除去すること。病原菌による人体,家畜,農作物等の感染や,台所用具,医療器具等の汚染,食物など保存を要する物の細菌の活動による変質などを防ぐ目的で行う。物理的方法として乾燥,加熱(煮沸,高圧水蒸気,火炎)と両者の結合(乾熱滅菌),紫外線照射,放射線照射など。化学的方法として殺菌剤,消毒薬,有毒ガスの使用がある。細菌と抵抗力の強いその芽胞を殺すに十分で,しかも人体や保存すべき物に変化を与えることが少ない方法がすぐれている。特に病原微生物を殺すことを消毒という。
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デジタル大辞泉
「殺菌」の意味・読み・例文・類語
さっ‐きん【殺菌】
[名](スル)細菌をはじめとする微生物、特に病原菌を死滅させること。「火を通して殺菌する」「低温殺菌」「殺菌作用」
[類語]毒消し・消毒・解毒・解毒剤
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さっ‐きん【殺菌】
〘名〙 細菌などの微生物、特に病原菌を死滅させ、無菌状態にすること。〔稿本化学語彙(1900)〕
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さっきん【殺菌 bactericide】
微生物の生細胞を殺すこと。一般には滅菌,消毒と同じように用いられているが,滅菌は非病原菌,病原菌,細菌胞子もすべて殺すことを意味し,消毒は病原微生物を殺すことを意味する。殺菌剤消毒滅菌【駒形 和男】
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世界大百科事典内の殺菌の言及
【殺菌剤】より
…細菌の生活力を奪う薬剤をいうが,日本では殺菌の語は単に細菌を殺すことだけでなく,もっと広い意味で用いられ,ウイルス,芽胞,カビなど,多くの種類の微生物を不活化することをいう。アメリカなどでは殺菌はbactericideというが,ウイルスについてはvirucide,芽胞についてはsporicide,カビについてはfungicideと分けて使用することが多い。将来はわれわれも,殺菌,殺ウイルス,殺芽胞などと分けて使用したいものである。…
【殺菌剤】より
…殺菌薬ともいう。細菌の生活力を奪う薬剤をいうが,日本では殺菌の語は単に細菌を殺すことだけでなく,もっと広い意味で用いられ,ウイルス,芽胞,カビなど,多くの種類の微生物を不活化することをいう。…
【滅菌】より
…微生物の生細胞を殺すことを殺菌といい,滅菌とは非病原菌,病原菌,細菌胞子もすべて殺すことをいう。一般には同じように用いられている消毒とは,病原微生物を殺すことを意味する。…
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