日本の成長と教育(文部省)(読み)にほんのせいちょうときょういく

大学事典 の解説

日本の成長と教育(文部省)
にほんのせいちょうときょういく

文部省により1962年(昭和37)に発表された教育と経済成長との関係を扱った初期の政策文書。文部省調査局編,副題は「教育の展開と経済の発達」。1950年代後半から興隆してきた人的資本論の影響を受け,教育発展の経済効果や,教育の普及と社会・経済の発展,教育投資の配分などに関する史的・比較的考察がなされ,教育投資の観点からみた長期総合教育計画の必要性などが論じられている。なかでも教育発展の経済効果については,シュルツ方式・ストルミリン方式を用いて,教育投資の増加によって国民所得の増加のうち33%・25%が生み出されたとする計測がなされている。またソ連や欧米諸国における長期総合教育計画への取組みを踏まえて,①国民所得等に占める教育費の程度,②教育費の有効な配分方法,③教育費負担のあり方の3面を含んだ教育計画の必要性を説く。同時に教育投資の停滞状況に対する反省や,有効な投資先として①後期中等教育拡充,②高等教育への配分率の上昇,③科学技術教育振興などが挙げられ,教育投資に関する国の役割の増大の必要性が指摘されている。
著者: 島一則

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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