拘禁
こうきん
司法上の目的をもってする、自由な社会生活の場からの強制的な隔離と、それに伴う行動の自由の制限をいう。制限の程度と質は、拘禁施設の規律秩序維持の目的のほか、拘禁の目的によって異なる。自由刑(懲役、禁錮(きんこ)、拘留)執行の形式的要素として行われるもの(刑法や刑事収容施設法では「拘置」という語を使用。刑法12条・13条・16条、刑事収容施設法2条5号ないし7号)、罰金・科料を完納できない者に対する労役場留置、被疑者・被告人に対して証憑(しょうひょう)隠滅の防止・身柄確保の目的で行われるもの(刑事訴訟法上の勾留(こうりゅう)=未決拘禁)、鑑定留置、死刑確定者に対し身柄確保の目的で行われるものなど、比較的長期間にわたる隔離を通常「拘禁」の語でとらえる。しかし、逃走罪で「法令により拘禁された者」(刑法99条・100条)という場合は、短期間であっても、適法に隔離による行動の自由の制限を受けた、いっさいの者をさすと解される。また、比較的長期間の隔離でも、少年院、少年鑑別所、児童自立支援施設、婦人補導院、精神科病院(精神保健福祉法上の措置入院)などとの関係では、通常「収容」の語を用い、逃走罪も成立しないと理解するのが一般である。なお、憲法上の用語としては、比較的短期間の行動の自由の制限(逮捕、勾引など)を「抑留」として区別している。
[須々木主一・石川正興]
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拘禁【こうきん】
身体の自由を拘束すること。憲法では,比較的長期の身体の自由の拘束をいい,短期の拘束である抑留に対する。刑事訴訟における勾留(こうりゅう)はこれに当たる。何人も,理由を直ちに告げられ,かつ,直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留・拘禁されない。また,正当な理由がなければ拘禁されず,要求があればその理由は直ちに公開の法廷で示されなければならない(勾留理由開示)。不当に長く抑留・拘禁された後の自白は証拠とできない(憲法34,38条)。なお,自由刑の執行による自由の拘束も拘禁と呼び,独居拘禁・雑居拘禁などの区別がある。
→関連項目刑事補償|拘置|拘置所|釈放|収監|逃走罪|犯人蔵匿罪|保釈|予防拘禁
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拘禁
こうきん
比較的長期にわたって身体の自由を拘束することをいい,一時的な身体の拘束である抑留と区別される。刑事訴訟法上の勾留がこれに相当する。日本国憲法は,「何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,抑留又は拘禁されない」と定める (34条) 。さらに憲法は,不当に長く抑留または拘禁されたのちの自白は証拠とすることができないと規定している (38条2項) 。
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こう‐きん【拘禁】
〘名〙 つかまえて、とめておくこと。身体に拘束を加えて、比較的長期間にわたり一定の場所に閉じ込めておくこと。
監禁。
※刑法(明治四〇年)(1907)九九条「法令に因り拘禁せられたる者を奪取したる者は」 〔
福恵全書‐刑名部・賊盗下・盗賊家口〕
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デジタル大辞泉
「拘禁」の意味・読み・例文・類語
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普及版 字通
「拘禁」の読み・字形・画数・意味
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世界大百科事典内の拘禁の言及
【拘置】より
…刑法は,監獄や拘留場に〈拘置〉することを自由刑の内容としており,死刑囚も執行まで監獄に〈拘置〉されるとして,罰金・科料の不払いによる労役場留置と区別している(11,18条など)。しかし,監獄法では,いずれの施設もそれぞれの者を〈拘禁〉する所とされ,区別はない。刑法の〈拘置〉は,この〈拘禁〉と同じ意味だとされている。…
【抑留・拘禁】より
…いずれも身体の自由を拘束することをいうが,日本国憲法は両者を区別している。〈抑留〉は一時的な身体の自由の拘束をさし,〈拘禁〉は継続的な自由の拘束をさすと解されている。憲法第34条によれば,〈何人も,理由を直ちに告げられ,且つ,直ちに弁護人に依頼する権利を与へられなければ,抑留又は拘禁されない。…
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