福恵全書(読み)ふくけいぜんしょ(英語表記)Fú huì quán shū

改訂新版 世界大百科事典 「福恵全書」の意味・わかりやすい解説

福恵全書 (ふくけいぜんしょ)
Fú huì quán shū

中国,清の黄六鴻著。32巻。1694年(康煕33)成る。著者が各地の知県(県知事)を歴任した経験を生かして,下級地方官の任地における執務心得を述べている。中国では〈官箴かんしん)〉といって,宋代の《州県提綱》以降,官吏の政治的心得を説いた指導書がいくつも作られ,清代だけでも《天台治略》《佐治薬言》《資治新書》等数多くあるが,本書はその中でも代表的なもので,地方行政の重要事項たとえば徴税,保甲,裁判,荒政などの処置について,知県の就任から離任までの心得を記しているので,地方末端の政治経済の実情を知るには欠くべからざる重要資料である。また本書は,中国においてより以上に,江戸時代の日本で治政の参考に利用された。小畑行簡訓点の和刻本(1850)がある。最近復刻された山根幸夫解題《和刻本福恵全書附索引》(1973)が利用に便利である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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