労役場留置(読み)ろうえきじょうりゅうち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「労役場留置」の意味・わかりやすい解説

労役場留置
ろうえきじょうりゅうち

罰金または科料を完納することができない者に対して行われる処分。罰金または科料の言渡しと同時に留置期間を定めて言い渡す。留置期間は罰金の場合1日以上2年以下、科料の場合1日以上30日以下であるが、罰金を併科し、または罰金と科料を併科する場合には3年まで、科料を併科する場合には60日まで延長しうる。一部を納めた者に対しては、未納部分につき日割計算で期間を定めるが、留置1日に満たない金額は納付できないとされていたところ、2006年(平成18)の改正で、留置1日に満たない金額でも、留置1日分として納付することが可能となった(刑法18条)。労役場刑事施設に附置されることになっており、労役場留置者には刑事収容施設法上、懲役受刑者に適用すべき規定が準用される(刑事収容施設法287条・288条)。自由の制限が伴う点で実質的には換刑処分でありつつ、罰金または科料の特殊な執行方法ともされる。なお、少年に対する言渡しは禁止されている(少年法54条)。

[須々木主一・石川正興]

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改訂新版 世界大百科事典 「労役場留置」の意味・わかりやすい解説

労役場留置 (ろうえきじょうりゅうち)

罰金・科料の納付を間接強制し,不払いに備えるための制度。不払いの場合は,罰金については1日以上2年以下(併科の場合3年まで),科料は1日以上30日以下(同じく60日)の期間の範囲内で,裁判の際に,完納できない場合の留置期間が罰金額等とともに言い渡され,不払額に応じて留置される(刑法18条)。労役場は監獄付設され(監獄法8条),被収容者には懲役囚に関する規定が適用される(9条)など,その実質は短期自由刑であるが,年間2000人ほどが対象となり,1日平均130人ほどが留置されていた(1983)が,1994年における入所人員は0人であった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「労役場留置」の意味・わかりやすい解説

労役場留置
ろうえきじょうりゅうち

罰金または科料を完納できない者に対して,罰金の場合は1日以上2年以下,科料の場合は1日以上 30日以下の期間で強制的に身体を拘禁し作業を課すことを内容とする換刑処分。罰金または科料を言い渡すときには,その全体金額を日割り計算して判決で1日あたりの金額が言い渡されるので,自動的に留置期間は算定される (刑法 18) 。労役場は監獄に付設 (監獄法8) され,その執行にあたっては刑の執行に関する諸規定が準用される (刑事訴訟法 505) 。なお労役場への留置は,裁判確定後,罰金については 30日以内,科料については 10日以内は本人承諾がなければ執行できない (刑法 18条5項) 。罰金または科料を分納したときは相当する日数が控除される。

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