打通(読み)うちとおす

精選版 日本国語大辞典 「打通」の意味・読み・例文・類語

うち‐とお・す ‥とほす【打通】

〘他サ五(四)〙
① 物の一端から一端までつき通す。物の表から裏へ突き貫く。
古事談(1212‐15頃)五「无間地獄をうちとほして、風輪際へいなむずればと」
② (「うち」は接頭語) 最初から最後まで続く。
四河入海(17C前)一三「うちとをして今まで有ぞ」
③ (「うち」は接頭語) 境を除いて一つにする。
兵隊の宿(1915)〈上司小剣〉七「二階の一番と二番とを打ち通した室に」
芝居などを長期間、上演しつづける。
随筆・雲錦随筆(1862)四「同年七月下旬まで打通(ウチトホ)し繁昌せしと也」

うち‐とお・る ‥とほる【打通】

〘自ラ四〙 (「うち」は接頭語)
① 通り過ぎる。ある所を過ぎて他へ行く。
平家(13C前)九「夜にまぎれて、そこをつっとうちとほり」
② 表から裏へつき抜ける。
合巻偐紫田舎源氏(1829‐42)二〇「打通りぬべく鉄砲雨
建物室内などにはいる。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉一二「単身(ひとり)玄関へ打通(ウチトホ)りて」

ぶっ‐とおし ‥とほし【打通】

〘名〙
① ぶっとおすこと。
② ぶちぬくこと。端から端までさえぎるものがないこと。
行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄「二階は打(ブ)っ通(トホ)しの大広間で」
③ 初めから終わりまで、継続して行なうこと。
※満韓ところどころ(1909)〈夏目漱石〉一四「一時間ぶっ通(トホ)しに立往生をしたものだ」

うち‐かよ・う ‥かよふ【打通】

〘自ハ四〙 (「うち」は接頭語)
① 往来する。通じる。特に男(夫)が女(妻)のもとに行く。
蜻蛉(974頃)中「日まぜなどにうちかよひたれば」
② 似る。共通している。
※浜松中納言(11C中)四「大将殿の君の御心ざま、けはひもうちかよひたる心ちして」

ぶっ‐とお・す ‥とほす【打通】

〘他サ五(四)〙 (「ぶっ」は接頭語) 「とおす(通)」の俗語的表現。
※歌舞伎・𢅻雑石尊贐(1823)中幕「おれもずっぷりぶっ通(トホ)し、かいたる汗を」
※刑余の叔父(1908)〈石川啄木〉四「五匁弾だもの。恁う貫通(ブットホ)されでヤ人だって直ぐ死んで了ふせえ」

うち‐とおり ‥とほり【打通】

〘名〙 (「うち」は接頭語) 寄り道をしないで行くこと。直行。また、素通りすること。
※評判記・色道大鏡(1678)五「芝居見たる次手(ついで)などに〈略〉うちとをりに見する」
※浄瑠璃・心中万年草(1710)中「私も在所から、はや飛脚にやとはれうちとおりにあがりました」

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