精選版 日本国語大辞典 「心無」の意味・読み・例文・類語
こころ‐な・い【心無】
〘形口〙 こころな・し 〘形ク〙
※万葉(8C後)一五・三七八四「許己呂奈伎(ココロナキ)鳥にそありけるほととぎすものもふ時に鳴くべきものか」
③ 俗世から離れ喜怒哀楽の情を持たない。世捨人の境地である。
※山家集(12C後)上「こころなき身にもあはれはしられけり鴫たつ沢の秋の夕暮」
④ 風雅、風流を解する感受性がない。情趣を解しない。もののあわれがわからない。無風流である。
※千載(1187)秋上・二五八「野分する野辺のけしきをみる時はこころなき人あらじとぞ思ふ〈藤原季通〉」
⑤ 進んで心を働かそうとしない。関心をもたない。気を使わない。
※俳諧・笈の小文(1690‐91頃)「紙布(かみこ)、綿小(わたこ)などいふもの、帽子、したうづやうのもの、心々に送りつどひて、霜雪の寒苦をいとふに心なし」
⑥ 私意、私情をもたない。虚心である。ふたごころがない。
※義経記(室町中か)二「その時御目にかかり始めて、又こころなくして、奥州に御ともして」
⑦ (人間以外の生物や無生物に対して用い) 知、情、意を具有していない。人間の心をもっていない。
※謡曲・西行桜(1430頃)「心なき草木も、花実の折は忘れめや」
⑧ 無心である。期待しない。
[語誌]→「こころなし(心無)」〔名〕の語誌。
こころな‐げ
〘形動〙
こころな‐さ
〘名〙
こころ‐なし【心無】
〘名〙
① 思慮、分別がないこと。また、その人。
※源氏(1001‐14頃)若紫「例の、心なしの、かかるわざをして」
② 風雅心、風流心のないこと。また、その人。無風流者。
こころ‐な【心無】
(形容詞「こころない」の語幹) 無情なさま。無風流なさま。感動表現に用いる。
※万葉(8C後)一〇・二三〇二「ある人のあな情無(こころな)と思ふらむ秋の長夜をねさめ臥すのみ」
こころ‐ない【心無】
〘連体〙 (形容詞「こころない」の連体形から) あたたかい心がない。理解がない。
※都会の憂鬱(1923)〈佐藤春夫〉「あまりに心ないわざのやうに彼には思へた」
しん‐なし【心無】
〘名〙 中にしんを入れてないもの。内部がからになっているもの。
※俳諧・物種集(1678)「夕風にくんなりと成柳原〈西鶴〉 霞のうすきしんなしの筆〈正甫〉」
こころ‐な・し【心無】
〘形ク〙 ⇒こころない(心無)
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