彼様(読み)あのさん

精選版 日本国語大辞典 「彼様」の意味・読み・例文・類語

あの‐さん【彼様】

〘代名〙 (「あのさま(彼様)」の変化した語)
浄瑠璃傾城反魂香(1708頃)中「あのさんに腹切らせ、恩を受た四郎二郎、いづくの浦で聞付てもよもや生きてはゐられまい」
対称近世、主として遊里で用いられた。
洒落本・恵世物語(1782)そのあと「あのさんがた、二階へ御上りなされませ」

か‐の‐さま【彼様】

〘代名〙 (「さま」は接尾語)
① 他称。他者に対してかるい敬意をもっていう語(遠称)。あのおかた。例のおかた。
狂言記抜殻(1660)「頼ふだる人は、いつもかのさまへ行くおりは、酒をくれらるるが」
② 他称。親しみの気持をもって愛人をいう語。
※歌謡・業平躍歌(1681か)一五「取りや違へてよの人にやるな、花のかの様の手に渡せ」

あの‐さま【彼様】

〘代名〙 (「さま」は接尾語) 近世語。他称。話し手、聞き手両者から離れた人を指し示す(遠称)。主として遊女が客をさしていった。
歌舞伎景政雷問答(1700)三「『是々(これこれ)そちが深い馴染(なじみ)の客といふはどれぢゃ』『あの様(サマ)でござんす』」

あれ‐さま【彼様】

〘代名〙 (「われさま」の変化した語) 近世語。対称。対等程度の人に対して用いられた庶民階級の語。ありさま。われさま。
※浄瑠璃・公平化生論(1664)四「渡辺の武つな、さかたの公平殿とは、あれさまにて候ぞ」

あの‐よう ‥ヤウ【彼様】

〘形動〙 あのとおり。ああいう。
※虎明本狂言・薩摩守(室町末‐近世初)「世上にはぢひな人が御ざる。あのやうな人があればこそ、〈略〉行脚のものがたびがなれ」

あれ‐よう ‥ヤウ【彼様】

〘形動〙 物事内容状態があそこに示されたようであるさま。あのよう。
※土井本周易抄(1477)六「あれやうなる者は、〈略〉強暴の者を得るぢゃぞ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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