日本大百科全書(ニッポニカ) 「接尾語」の意味・わかりやすい解説
接尾語
せつびご
接辞のうち、語基の後に添加されるもの。通常「接尾語」とよばれるが、これは独立の語ではないので、厳密には「接尾辞」とよぶほうがよい。このように定義しても、「漕(こ)ぎ手」「知らんふり」「書きだす」「宣伝マン」「悲観ムード」の下線部のように、接尾語と認めるべきか否かについて、意見の相違がおこりうる場合がある。接頭語と比べて、接尾語は種類も多く、造語力も高い。
接尾語には一般に、〔1〕意味だけを添えるものと、〔2〕意味に加えて、語基の語の文法上の性質を変えるものとがある。日本語では、〔1〕の例として、「社長さん」「青果業」「会社員」など、〔2〕の例として、(1)名詞をつくる「寒さ」「寒け」「弱み」、(2)形容動詞の語幹をつくる「楽しげ」「うれしそう」、(3)形容詞をつくる「重々しい」「女性らしい」、(4)動詞をつくる「サボる」「ジョギングする」「迷惑がる」「春めく」、(5)サ変動詞の語幹をつくる「合理化」「同一視」、(6)副詞をつくる「とくに」「はっきりと」「事実上」などがある。これらの例のような和語系、漢語系のものに加えて、「ゆっくりズム」「頑張りスト」のような外来系の接尾語もある。
英語では、屈折接尾語(boys, deeper, painted, painting)と、派生接尾語(boyish, deepen, painter)とを区別するが、狭義の接尾語は後者だけをさし、本稿でもそれに従う。〔1〕に属するものは少なく、「指小」を示すcabinet, manikin, leafletなどがこれにあたる。〔2〕は、(1)人を表す名詞をつくるbaker, spinster、(2)抽象名詞をつくるfreedom, kindness、(3)形容詞をつくるearthen, boyish、(4)動詞をつくるdarken, clatter、(5)副詞をつくるactually, afterward(s)などがある。〔2〕であげた例はすべてゲルマン系であったが、それらに加えてラテン系(student, assistance, brilliant)、ギリシア系(democracy, realize)の接尾語もある。
[杉浦茂夫]