引取(読み)ひきとる

精選版 日本国語大辞典 「引取」の意味・読み・例文・類語

ひき‐と・る【引取】

[1] 〘他ラ五(四)〙
① 引いて手もとへ移す。自分の手もとへ引き寄せて取る。受け取る。
源氏(1001‐14頃)宿木「こだになど少しひきとらせ給ひて、宮へとおぼしくて、もたせ給ふ」
② 無理に自分のものにする。奪い取る。盗み去る。
書紀(720)綏靖即位前(北野本訓)「神渟名川耳尊(かむぬなかはみみのみこと)、其(そ)の兄(いろね)所持(もた)弓矢掣取(ヒキトル)
③ 引き受けて手もとに置く。自分のところへ預かって世話をする。
※浮世草子・世間娘容気(1717)二「一人の姪、近き比より手前へ引とり養育せられしかば」
④ 話などのあとを受けつぐ。
※談義本・根無草(1763‐69)後「とかふの詞も出でざれば、長右衛門引とりて」
⑤ (多く「息を引き取る」の形で) 死ぬ。絶息する。ひききる。
浄瑠璃・大職冠(1711頃)三「さらばと斗り夕潮の、引とる息や波の泡、終にはかなくなりにけり」
[2] 〘自ラ五(四)〙
① その場から退き去る。また、もといたところにもどる。
※近世紀聞(1875‐81)〈染崎延房〉七「萩へ引取(ヒキトリ)慎み罷在べき処」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉二「挨拶一通り済んだら、校長が今日はもう引き取ってもいい〈略〉と云った」
軍勢がひき退く。退却する。〔日葡辞書(1603‐04)〕

ひき‐とり【引取】

〘名〙
① 受け取ること。
狂言記・内沙汰(1660)「牛をひきとりにせう」
② 受け取りの証文奉公人を引き取るという証文。
歌舞伎御摂勧進帳(1773)二番目「妹を渡すからは、引取りを書いて貰ひませう」
③ 退き去ること。引き払うこと。
※歌舞伎・八重霞曾我組糸(1823)中幕家主が何を申しましても、未だ引取りを致しませぬ」

ひっ‐と・る【引取】

〘他ラ四〙 「ひきとる(引取)」の変化した語。
※日葡辞書(1603‐04)「ヂンヲ fittoru(ヒットル)
※雑俳・登梯子(1705)「ひっとって娘は嚊(かか)がつれてのく」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

普及版 字通 「引取」の読み・字形・画数・意味

【引取】いんしゆ

獲得する。

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