(読み)ホウ

デジタル大辞泉 「崩」の意味・読み・例文・類語

ほう【崩】[漢字項目]

常用漢字] [音]ホウ(呉)(漢) [訓]くずれる くずす
くずれる。くずれおちる。「崩壊崩落潰崩かいほう土崩瓦解どほうがかい
天子・天皇が死ぬ。「崩御崩殂ほうそ
[難読]雪崩なだれ

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精選版 日本国語大辞典 「崩」の意味・読み・例文・類語

くず・れる くづれる【崩】

〘自ラ下一〙 くづ・る 〘自ラ下二〙
① 山、崖、または、建造物などが部分的にこわれ落ちる。また、全体がばらばらになる。
播磨風土記(715頃)讚容「『此の山は、踰(ふ)めば崩(くづ)るべし』とのりたまひき」
※源氏(1001‐14頃)須磨「長雨についぢ所々くづれてなむと聞き給へば」
② 積まれたり束ねられたりして整った状態にあったものが乱れる。
※俳諧・続猿蓑(1698)上「夏の夜や崩(くづれ)て明(あけ)し冷し物〈芭蕉〉 露ははらりと蓮の椽先〈曲翠〉」
③ 集まっていた人々がばらばらに去る。解散する。
※浮世草子・好色五人女(1686)二「踊はくづれ桶夜更て化物」
④ 戦闘で、整った陣形が乱れる。敗れ散る。
※玉塵抄(1563)五「梁の軍がくづれたぞ」
⑤ 服装や姿勢が乱れる。態度や礼儀がだらしなくなる。
無名抄(1211頃)「人知れぬ涙の河の瀬を早みくつれにけりな人目つつみは」
※大阪の宿(1925‐26)〈水上滝太郎〉一五「居ずまひの崩れてゐたのが、きちんと坐り直して」
秩序や調子、様子などで、正常のもの、安定したもの、整ったものが乱れる。
説経節・をくり(御物絵巻)(17C中)五「きしうつなみとも、かかれたは、くつれて、ものやおもふらん」
※人情本・花筐(1841)初「珠吉三八も大きに酔ふて、坐も崩(クヅ)るるに至りしとき」
⑦ 安定していた天候が悪くなり、雨や雪が降る。
※闘牛(1949)〈井上靖〉「少しく空模様が崩れて来てゐた」
同額小銭に替わる。
⑨ 取引市場で、相場が下落する。
※金(1926)〈宮嶋資夫〉八「相場は凄じく崩(クズ)れて行った」

くずれ くづれ【崩】

[1] 〘名〙 (動詞「くずれる(崩)」の連用形の名詞化)
① 山、崖、または、建造物などが部分的にこわれ落ちること。また、全体がばらばらになること。また、そのところ。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※伊勢物語(10C前)五「わらはべのふみあけたる築地のくづれより通ひけり」
② 積まれたり、束ねられたりして整った状態にあったものが乱れること。また、そのような状態のもの。
※青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「梁の崩(クヅレ)案山子の古笠に堰かれて」
③ 秩序立っていたり正常であったりしたものが乱れること。また、そのような状態。
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉一〇「精神のくづれをからだにもあらはさないと済まないやうな恰好で」
④ 集まっていた人が散ること。会合などが終わって無秩序な状態になること。
※洒落本・古今三通伝(1782)「生花の会、俳諧の評物、どこぞの定会のくづれから女郎買へ引込」
⑤ 戦いで整った陣形が乱れること。潰散(かいさん)
※玉塵抄(1563)一一「宝剣は平家の二位の尼(あま)の、八嶋合戦のくづれに此の剣をさいて」
⑥ おちぶれはてること。なれのはて。零落。みじめな姿。
黄表紙・孔子縞于時藍染(1789)下「丁半のくずれが駈っこみ訴訟にゆくやうだ」
たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉二「いくら金が有るとって質屋のくづれの高利貸が何たら様だ」
⑦ 取引市場で、相場が急に下落することをいう。〔新時代用語辞典(1930)〕
[2] 〘語素〙 (身分職業などを表わす語に添えて) 以前そうであったが、今はそれ以下に落ちぶれていることを表わす。また、なろうと志して、それになれなかったことを表わす。
※二つの話(1946)〈井伏鱒二〉「この男は、〈略〉禅坊主くづれであると同時に茶人志願くづれである」

くず・す くづす【崩】

〘他サ五(四)〙
① 物をくだいてこわす。破壊する。削る。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「山をくづし、海をうめても」
② 整った状態のものを乱してばらばらにする。
※信長記(1622)三「此うへは我旗本を崩(クヅ)しかかれかかれと」
※私的生活(1968)〈後藤明生〉三「バランスを崩してわたしはベンチから転落した」
③ 身体の姿勢を楽にする。気持や態度、表情をやわらげる。また、礼儀や雰囲気(ふんいき)などを乱す。だらしなくなる。
※人情本・英対暖語(1838)二「横にならず行義も崩さず正座(しゃん)として居るゆゑ」
④ 正式の字画を簡略にする。くずしがきをする。
※吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉二「誉の字は崩した方が恰好がいいから」
⑤ すこしずつ、話すこと、書くことなどをする。
※源氏(1101‐14頃)花散里「昔語りもかきくつすべき人少なうなりゆくを」
⑥ 高額の貨幣を小銭にかえる。買物などをして金をこまかくする。
※洒落本・色講釈(1801)「草市の鬼灯(ほうづき)に、小判をくづしたよりやァ、まだつまらねへはなしだわな」
⑦ 取引相場で、相場を下げる。
※家族会議(1935)〈横光利一〉「北浜の株も仁礼の兄弟店で多少崩してゐる形跡を発見した」
⑧ 物の価格を下げる。
※茶話(1915‐30)〈薄田泣菫〉画家と商人「画家に会った為めに売値を崩(クヅ)すやうな事があっても詰らなかった」

くずし くづし【崩】

[1] 〘名〙 (動詞「くずす(崩)」の連用形の名詞化)
① くずすこと。また、そのもの。
② 「くずしがき(崩書)」の略。
※たけくらべ(1895‐96)〈樋口一葉〉四「真岡木綿に町名(てうめう)くづしを」
③ 模様などを簡略化すること。また、そのもの。
④ 謡曲で、ある謡の音階の途中で、その基調を変えて、調子を約半音低くすること。
⑤ 略した髪の結い方。本略崩しなど。
※江戸繁昌記(1832‐36)二「麻結に数種有、銀杏と曰、〈略〉曰苦追志(〈注〉クヅシ)」
※大乗院寺社雑事記‐寛正六年(1465)六月晦日「くつし二十五枚、卅五文」
[2] 〘接尾〙 名詞について、その名詞の意味する形を原形として、それとは形や調子の多少異なることを示す。多く歌謡や文様などにいう。「木遣くずし」

ほう‐・ずる【崩】

〘自サ変〙 ほう・ず 〘自サ変〙 天子、天皇、皇后、太皇太后、皇太后などが死去する。おかくれになる。崩御する。
※知恩院本上宮聖徳法王帝説(917‐1050頃か)「孔部間人母王崩」
※太平記(14C後)二一「新帝幼生にて御座ある上、君崩(ホウ)じ給たる後」

くや・す【崩】

〘他サ四〙 くずす。砕きこわす。
※書紀(720)仁徳一六年七月・歌謡「みかしほ 播磨はやまち 岩区(クヤス) かしこくとも あれ養はむ」

ほう・じる【崩】

〘自ザ上一〙 (サ変動詞「ほうずる(崩)」の上一段化したもの) =ほうずる(崩)

く・ゆ【崩】

〘自ヤ下二〙 ⇒くえる(崩)

ほう‐・ず【崩】

〘自サ変〙 ⇒ほうずる(崩)

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