山梨[県](読み)やまなし

百科事典マイペディア 「山梨[県]」の意味・わかりやすい解説

山梨[県]【やまなし】

中部地方東部の県。県庁所在地は甲府市。4465.27km2。86万3075人(2010)。〔沿革〕 かつての甲斐国にあたる。中世を通じて甲斐源氏から出た武田氏が支配,武田信玄のとき最も隆盛したが,1582年織田信長に滅ぼされた。江戸時代には天領となり,府中(甲府)は甲州道中要衝,商人町として栄えた。1870年甲斐県となり,翌年山梨県と改称。〔自然〕 本州のほぼ中央に位置し,高山に囲まれた内陸県で,北は関東山地八ヶ岳(赤岳,2899m)火山,西は日本第2の高峰北岳(3193m)のある赤石山脈,東と南は富士山(3776m)と御坂(みさか)山地で,中央に釜無川笛吹川がつくる複合扇状地甲府盆地がある。東部は桂川流域で,河岸段丘上に集落が発達,郡内地方と呼ばれる。富士山北麓に富士五湖がある。中央高地型気候区に属する内陸式気候で,降水量が少なく冬は寒冷,夏は高温となる。〔産業〕 産業別人口構成は第1次8.5%,第2次30.6%,第3次60.1%(2005)。県内唯一のまとまった平地である甲府盆地では大正期までは集約的な水田経営と養蚕を主としていたが,気候と土壌,首都圏市場に近接することを利用して,昭和初期からブドウ・モモ・カキなどの果樹栽培が導入され,第2次世界大戦後急速に発展した。特にブドウ,モモの収穫量は全国の約3割(2003)を占め第1位である。八ヶ岳山麓では乳牛飼育,高冷地野菜栽培が盛んで,郡内では養蚕が行われるが,都市化の影響をうけ減少している,八ヶ岳山麓,野呂川流域,富士山麓などでは製材・パルプ用材を切り出す。鉱業は不振。工業は甲斐絹(かいき)の名で知られた絹織物と食品が中心であったが,近年は繊維が不振で,電気,一般機械器具工業が伸び県の製造品出荷額の55%(2003)を占めている。産業用ロボット製造など,先端技術を駆使した工場も進出している。食品ではブドウ酒生産が最も盛ん。他に市川三郷町の印章(旧・六郷町),和紙(旧・市川大門町),水晶細工から転換した甲府のガラス研磨工業がみられる。北部の山地秩父多摩甲斐国立公園西部の山地は南アルプス,南部の富士山麓は富士箱根伊豆の各国立公園,八ヶ岳山麓は八ヶ岳中信高原国定公園に属する。景勝地が多く身延山久遠寺恵林寺などの古寺もある。〔交通〕 大月,甲府,韮崎(にらさき)の各市を結ぶ中央本線,中央自動車道,国道20号線が最重要幹線で,甲府から富士川の河谷沿いに身延線,国道52号線が静岡県へ通じ,大月から富士吉田,河口湖へ富士急行,中央自動車道が通じる。また県北西端小淵沢から八ヶ岳の裾野を,小海線が通じる。甲府盆地を中心にバス交通も発達している。
→関連項目中部地方ほうとう

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