八ヶ岳
やつがたけ
長野・山梨県境にある火山群で、佐久盆地と諏訪盆地(すわぼんち)を分ける。中央地溝帯の東縁に噴出し、北から横岳、縞枯(しまがれ)山、天狗(てんぐ)岳、硫黄(いおう)岳、横岳、赤岳、権現(ごんげん)岳、編笠(あみがさ)山など2500メートル前後の山々が南北約20キロメートルにわたって続く。最高峰は南端に近い赤岳で標高2899メートル。東、南、西に広大な裾野(すその)を形成し、広原、野辺山(のべやま)、富士見(ふじみ)、清里(きよさと)などの高原がある。硫黄岳の鞍(あん)部を通る夏沢峠(なつざわとうげ)を境に、北八ヶ岳と南八ヶ岳に分かれ、南八ヶ岳は侵食が進んで山頂付近まで渓谷が達しているが、北八ヶ岳は穏やかな山容で、山頂部東側に白駒、雨池、二子などの湖がある。裾野一帯は1600メートルあたりまでカラマツやアカマツが多く、2500メートル付近まではシラビソ、コメツガ、ダケカンバなど、それより上部はハイマツに変わる。またヤナギラン、マツムシソウなどの高山植物も多い。硫黄岳と横岳の間にはキバナシャクナゲ自生地があり、国の天然記念物に指定されている。山頂からは日本アルプスをはじめ、富士山、浅間山など中央日本の高山が大観できる。連峰を横断する峠は麦草峠、大河原峠、夏沢峠などがあるが、車道が通じるのは麦草峠(2151メートル)だけで、快適なドライブウェーになっている。山腹には東側に本沢(ほんざわ)、稲子湯(いなごゆ)、春日(かすが)、西側に奥蓼科(おくたてしな)などの温泉がある。登山コースのうち、稲子湯温泉から夏沢峠を経て南八ヶ岳を縦走し、JR中央本線小淵沢(こぶちざわ)駅へ至るコースは約18時間、2泊3日を要する。
[小林寛義]
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デジタル大辞泉
「八ヶ岳」の意味・読み・例文・類語
やつ‐が‐たけ【八ヶ岳】
長野県東部から山梨県北部にまたがる火山群。天狗岳・硫黄岳・横岳・阿弥陀岳・権現岳などからなり、最高峰は赤岳で標高2899メートル。南麓には多くの湧水があり、裾野の高原では高冷地農業が行われる。
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やつがたけ【八ヶ岳】
長野県東部と山梨県北部にまたがる火山。八ヶ岳の〈八〉は特定の8峰の意味でなく,多数の峰を表したものと考えられる。狭義には主峰赤岳(2899m)を中心として南北に連なる西岳,編笠(あみがさ)山,権現岳,阿弥陀(あみだ)岳,横岳,硫黄岳,峰ノ松目などの山列を指す。近年はこれらを南八ヶ岳としてまとめ,夏沢峠以北の根石岳,天狗岳,中山,縞枯(しまがれ)山,横岳などを北八ヶ岳として,両者を合わせて南北20km以上にわたって連なる標高2200~2900mの山列を八ヶ岳と呼ぶのが一般的となった。
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八ヶ岳
やつがたけ
北巨摩郡と長野県にまたがる山。標高二〇〇〇メートル級の連峰からなり、一連の火山列と考えられている。フォッサマグナ上の断層群によって構成されているため、長期の浸食作用などにより複雑な山容をつくり出した。南端の編笠山(二五二四メートル)から北端の蓼科山(二五三〇メートル)までは二五キロの長さに及ぶ。最高峰は標高二八九九・二メートルの赤岳。長野県南牧村の夏沢峠付近を境に北八ヶ岳と南八ヶ岳とに二分することもあり、県内では八ヶ岳といえば赤岳を中心とした南八ヶ岳をさすのが一般的である。山名の由来はこれまで八の峰よりなると説明するのが通説となっている。たとえば「此山西は信濃国諏訪郡北は佐久郡なり嶺分れて八有故に八カ嶽と云」(甲斐名勝志)や、「八岳 又谷鹿岳と作く長沢、西井出、谷戸、小荒間、上笹尾、小淵沢等の諸村の北に峙立て檜峯権現岳トモ云、小岳、三頭岳、赤岳、箕蒙岳、毛無岳、風三郎岳、編笠山等八稜に分るゝゆえに此名あり」(甲斐叢記)などの記述にみられるように、江戸時代の地誌類はいずれも同様の認識にたつ。
八ヶ岳
やつがたけ
南佐久郡・諏訪郡・茅野市・山梨県北巨摩郡にまたがり、千曲川水系・富士川水系・天竜川水系の分水嶺をなす。赤岳(二八九九・二メートル)を主峰として北に横岳(二八三〇メートル)・硫黄岳(二七四二・一メートル)、西に阿弥陀岳(二八〇七メートル)、南に権現岳(二七八六メートル)・編笠岳(二五二三・七メートル)があり、ほかに西岳(二三六四メートル)・峰の松目岳(二五六七メートル)を入れ、八つの峰を数え上げるが、「八」という字は数多いの意味と解すべきか。富士火山脈に属する火山群で、本州地溝帯に沿って噴出したものという。浸食作用が甚しく山形は旧態をうかがえない。
赤岳は、火口壁の岩角一面が酸化鉄のため赤色を帯びるためこの名があるという。阿弥陀岳との中間の中岳が、かつての中央火口丘で、この中岳に面した二つの山の急斜面は火口壁であったといわれる。北に延びる横岳を経て硫黄岳に至る間はお花畑でコマクサ・ウルップソウ・クロユリ・這松などがあり、近年発見されたこの山の新植物の種類は種は一九、変種二二、品六があり、高山植物の宝庫となっている。
八ヶ岳
やつがたけ
県東南部にあって、日本列島を東北と西南に二大区分する糸魚川―静岡構造線(フォッサ・マグナ)の中心地帯にあたり、富士火山帯の北部を占めて長野・山梨の面県にまたがる火山列。特に、北西延長部には霧ヶ峰―八子ヶ峰地域の火山岩類が、標高一五〇〇―二〇〇〇メートルの台地を作って広く発達している。最高峰は赤岳(二八九九メートル)で、南端の編笠山から北端の蓼科山まで南北二一キロにわたる一連の火山列を形成している。八ヶ岳とよばれているのは、見る場所によって数える峰が異なるが、諏訪地方では南の編笠山から順次北の方へ西岳・権現岳・赤岳・阿弥陀岳・横岳・硫黄岳、それに峰の松目あるいは天狗岳を加える。しかし、これは通称南八ヶ岳を指している。構造的には火山活動の末期に起こった大爆裂と長い年月の風化浸食によって山体が著しく開析され、今日見るような幾つかの峰を現すようになったいわゆる二重式成層火山列である。
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報