桂川(読み)かつらがわ

精選版 日本国語大辞典 「桂川」の意味・読み・例文・類語

かつら‐がわ ‥がは【桂川】

[一] 京都市西部を流れる川。大堰(おおい)川が京都盆地に流入して淀川に合流するまでの部分をいう。
[二] 山梨県東部、相模川の上流部の称。山中湖から発して神奈川県に入るまでをいう。全長約五三キロメートル。

かつらがわ かつらがは【桂川】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「桂川」の意味・読み・例文・類語

かつら‐がわ〔‐がは〕【桂川】

京都市西部を流れる川。保津川の下流部。鴨川を合わせ、淀川に注ぐ。
相模さがみの上流部。山梨県の山中湖に発し、郡内地方を経て相模湖に至る。流域に河岸段丘が発達。

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日本歴史地名大系 「桂川」の解説

桂川
かつらがわ

丹波国船井ふない郡・同北桑田くわた郡・同南桑田郡(現亀岡かめおか市)・山城国葛野かどの郡・同乙訓おとくに郡を貫流する京都最大の河川の一つ。源は北桑田郡広河原(現左京区)で、諸川を合流しつつ亀岡盆地を東南流して、名勝保津ほづ峡の山間部を曲折し、嵐山あらしやま(現西京区)に至る。嵐山より河川敷を広げながら、京都盆地西部をやや東南に屈折をみせながら南流し、梅津うめづ(現右京区)松尾まつお(現西京区)・桂(現西京区)を左右に通過して、下鳥羽しもとば(現伏見区)に至ってかも川を併せ、淀川に注ぐ。全長約一〇七・八キロ。

古代は葛野川(河)と通称し(「山城国風土記」逸文・「日本後紀」延暦一八年一二月四日条ほか)、また大堰おおい(秦氏本系帳・「日本後紀」延暦一八年八月一二日条ほか)大井おおい(弘法大師弟子伝ほか)・大堰川(河)(「日本紀略」延長四年一〇月一〇日条ほか)・西河(「三代実録」貞観二年九月一五日条ほか)かつら(「三代実録」仁和三年八月二〇日条ほか)などとも記される。「土佐日記」にも「桂川、月のあかきにぞわたる」とみえる。流域によって呼称が異なり、嵐山付近及び上流では大堰川・大井川と書き、また保津川とも記す。嵐山下流では桂(葛)川と通称するが、梅津付近では梅津川ともよんだ。

古くは桂川には法輪寺ほうりんじ(渡月橋、右京区)佐比さひ(南区の佐比河原)のほかに橋はなかったと思われるが、臨時に松尾付近で浮橋が架設されることがあった。この浮橋(舟橋)については、「李部王記」延長六年(九二八)一二月五日条に「至桂河辺、上降輿就幄、群臣下馬、上御輿群臣乗馬、渡浮橋方舟為梁梁上敷板」とあり、「源氏物語」行幸の巻にも、

<資料は省略されています>

とみえる。「本朝世紀」久安五年(一一四九)八月一〇日条は「去夜大雨降、今日松尾行幸延引、依桂河浮橋流損也」と記す。

桂川
かつらがわ

山中湖やまなかこ村の山中湖を水源として北西へ流れ、忍野おしの村で新名庄しんなしよう川を合せ、富士吉田市で流れを北東に転じてみや川・小佐野おざの川を合せる。都留つる市で鹿留ししどめ川・柄杓流ひしやくながし川・大幡おおはた川・羽根子はねこ川・朝日あさひ川・たか川・くぼ川が合流、大月市で笹子ささご川を合せて東へ流れを変え、浅利あさり川・葛野かずの川・小沢おざわ川・宮谷みやたに川・軽沢かるさわ川、上野原うえのはら町で谷田やだ川・千足せんぞく川・つる川と合流して神奈川県に出、津久井つくい郡内で相模湖に流入する。河川法上は相模川であるが、相模湖より上流を山梨県では桂川とよぶ。流路延長五二・八五キロ、流域面積一二一五・一平方キロ。一級河川。

もともと山中湖から大月市域までは深いV字谷となっていたが、度重なる富士山の噴出物によって谷が埋められ、現在の地形が形成された。富士火山の古期活動で流出した猿橋溶岩は大月市猿橋さるはし町の下流にまで至り、中期溶岩は都留市十日市場とおかいちば、新期溶岩は富士吉田市上暮地かみくれちまで流出し、溶岩台地を形成している。

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改訂新版 世界大百科事典 「桂川」の意味・わかりやすい解説

桂川 (かつらがわ)

京都市南西部を流れる川。大堰(おおい)川の下流で,保津峡の出口嵐山から南流して淀川に入るまでの区間をさす。延長約22km。亀岡盆地東端から嵐山までの上流部分は保津川(保津峡)と呼ばれ,老ノ坂山地を貫流して峡谷をつくり,途中で清滝川を合し,嵐山で京都盆地に入る。次いで有栖川,御室(おむろ)川,鴨川,小畑川を合流してはんらん原をつくり,天王山と男山との間の京都・大阪府界において宇治川木津川と合して淀川となる。右岸に長岡京,左岸に平安京が相ついで造営されたため,早くから京都人に親しまれた河川である。今日の保津峡,高雄,嵐山,嵯峨野は,史跡や古社寺が集中する景勝の観光地として著名で,保津川舟下りやハイキングコースもあり,四季を通じて訪れる市民や観光客が多い。梅津・西京極付近には友禅染工場が多く,河原での友禅の水洗作業は,京都の冬の風物詩であったが最近姿を消した。下流沿岸では住宅地と工場の進出によって急速に市街地化が進んでいる。
執筆者:

古くは郡名を負って葛野(かどの)川と称したが,大堰をつくり一帯を開発したという秦氏の伝承(〈秦氏本系帳〉)により,大堰(井)川ともいい,また桂川の称も早くから生まれている。平安時代には鴨川を東河というのに対して西河と呼ばれ,防鴨河使と同様,防葛野川使が置かれていた。桂には浮橋(舟橋)が架設され,また嵯峨,梅津,桂(楓),佐比(さひ)(いずれも現,京都市)などには津が設けられ,木材をはじめ物資の陸揚地となったが,とくに梅津には木屋が置かれ,馬借・車借の活動も早くから認められ,中世に及んでいる。近世にも多数の材木屋が構えられ,〈三ヶ所材木屋〉と称された。平安京の西郊であるところから王朝貴族の舟遊びに利用され,別荘も営まれた。ことに藤原道長の桂山荘は著名で,近世初期,八条宮智仁・智忠親王2代にわたって造営された桂離宮は,道長の山荘跡を利用したものである。桂川は秦氏の昔より農業用水として用いられ,なかでも今井用水にかかわる西岡11ヵ郷が契約を結び,用水の掟の順守を誓い合ったこと(南北朝期)はよく知られているが,その後争論もしばしば起こっている。近世初頭,1606年(慶長11),角倉了以は,幕府の許可を得て保津峡の開削を行い,丹波からの薪炭などの運搬水路として利用されるようになった。
執筆者:

桂川 (かつらがわ)

相模川の上流部,山梨県内を流れる部分の呼称。富士山北麓,山中湖を水源とし,西流して富士吉田市付近を通り,流路を北にとって大月市に至り,西から来る支流笹子川を合わせて東流し,上野原市上野原付近で相模湖に入る。山間部を流れるため峡谷の部分が多く,流れも急で峡谷美に富んでおり,アユ釣りなども盛んである。河岸段丘の発達が著しく,上位から三つの段丘面が区別され,集落や耕地の多くは第2段丘面の上にのっている。水源が湖であり,また流域に湧水も多いため渇水期でも水量が多く,早くから水路式発電所が各地に設けられ,明治から昭和初年にかけて,京浜地方の重要な電源であった。また大月市内の河谷には富士溶岩流の柱状節理が露出しており,古富士火山噴火の際溶岩流が桂川河谷に沿って流下したことを示している。甲州街道,中央本線,中央自動車道がほぼ川沿いに通じる。
執筆者:

桂川[町] (けいせん)

福岡県中央部,嘉穂郡の町。人口1万3863(2010)。北から西は飯塚市に接する。中央を遠賀川支流の泉河内川,北部西を穂波川が北流し沖積低地を形成するほかは,丘陵が広く分布する。いたるところに古墳があるが,特にJR筑豊本線桂川駅北方にある王塚古墳(特史)は装飾古墳として有名である。明治中期以降,炭鉱が開発されて急速に発展,1940年町制を施行した。しかし55年以後,石炭産業は崩壊して大小10炭鉱はすべて閉山し,一時2.3万人を数えた人口も半減,過疎と鉱害の町と化した。その後,炭住再開発によるベッドタウン化と工場誘致による工業化が進められている。特産品として土師焼の民芸品がある。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「桂川」の意味・わかりやすい解説

桂川
かつらがわ

京都市南西部を南流する川。淀川水系の一部。上流は大堰川,保津川と呼ばれ,嵐山付近から桂川となって京都盆地へ流れ出たのち,南流して山崎付近で宇治川,木津川とともに淀川に合流する。全長 114km。沿岸の平野は早くから開発され,条里制の遺構もみられる。川の水は友禅染の水洗いにも利用された。中流域右岸に桂離宮があり,淀川との合流点付近には工場が立地する。宅地化が進み,沿岸は変容が著しい。

桂川
かつらがわ

山梨県南東部を流れる川。相模川の上流部で,全長 53km。富士山北東麓の山中湖に発して北東流し,大月市からは東に向きを変え,神奈川県に入る。富士山の噴出物によって形成された広い河岸段丘は,平坦地の少い郡内地方では重要な生活の場で,都留市,大月市などの中心市街地が立地。大月市までは急流をなし,多くの湧水を集めて流量も多いために,早くから水路式発電所が造られた。川に沿って国道,鉄道,中央自動車道が通り,交通路ともなっている。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「桂川」の解説

かつらがわ【桂川】

群馬の日本酒。酒名は、蔵近くを流れる桂川に由来。もち米四段仕込みによる甘口タイプの酒を醸す。大吟醸酒純米酒本醸造酒などがある。平成2、15、20年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は若水、美山錦山田錦など。仕込み水は赤城山系の伏流水。蔵元の「柳澤酒造」は明治10年(1877)創業。所在地は前橋市粕川町深津。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「桂川」の解説

桂川
(通称)
かつらがわ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
道行瀬川仇浪 など
初演
天明1.3(江戸・市村座)

桂川
かつらがわ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
安政6.11(大坂・筑後芝居)

桂川
〔宮古路〕
かつらがわ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
初演
安永1.5(大坂・市山座)

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デジタル大辞泉プラス 「桂川」の解説

桂川

群馬県、栁澤酒造株式会社の製造する日本酒。甘口の本醸造酒のほか、純米吟醸酒などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の桂川の言及

【相模川】より

…幹線流路延長109km,全流域面積1680km2。上流は桂川といい,その水源は山中湖と,その北岸の山梨県忍野(おしの)村の山中にある。桂川が神奈川県に入って相模川となり,山梨県の道志(どうし)山地から流出する道志川を津久井(つくい)湖で,丹沢山地から流出する中津川を厚木市街地で合わせ,平塚市の東辺で湘南砂丘を切って相模湾に入る。…

【大堰川】より

…京都府北桑田郡南部から船井郡園部町,八木町と亀岡市を経て,保津峡(この部分は保津川とも呼ばれる)に入るまでの河川。保津峡の出口嵐山から下流は桂川と名を変えて淀川に合流する。丹波高地南東部の流水を集める河川で,全長83km。…

【葛野川】より

桂川の古名。山城(山背)国葛野郡を流れていたところから郡名をとって葛野川と称された。…

※「桂川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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