精選版 日本国語大辞典 の解説
よ・る【寄・倚・凭・拠・縁・依・因・由】
〘自ラ五(四)〙
[一] (寄) ある物やある所、また、ある側に近づいて行く。
① ある所、ある物、ある人に向かって近づく。近寄る。
※竹取(9C末‐10C初)「あやしがりてよりて見るに、筒の中光りたり」
② ひと所に集まる。
③ 途中でおとずれる。立ち寄る。
※竹取(9C末‐10C初)「わが御家へもより給はずしておはしましたり」
④ 一方へ近づき集まる。また、ある基準から一方へかたよる。
※蜻蛉(974頃)中「山風のまづこそふけばこの春の柳のいとはしりへにぞよる」
※枕(10C終)一〇四「淑景舎は、北にすこしよりて、南向きにおはす」
⑤ (倚・凭) もたれかかる。
⑥ 相撲で、組んで押し進む。
⑦ (年、皺などが)積もり重なる。
※平家(13C前)四「入道も年こそよて候へども、子共ひきぐして参り候べし」
⑧ 寄進される。寄付される。
※宇治拾遺(1221頃)八「かかる所に庄などよりぬれば、別当なにくれなどいできて」
⑨ (神霊や物の怪などが)乗り移る。
※今昔(1120頃か)三一「弁幾(いくばく)も无くて病付て、日来を経て遂に失にけり。其の女寄(より)たるにやとぞ」
⑩ その日の相場が始まる。立会が始まる。
[二] (拠・縁) 気持が、そちらに引きつけられる。
① 気持が、そちらに傾く。
② 任せてそれに従う。
※万葉(8C後)一四・三三七七「武蔵野の草は諸(もろ)向きかもかくも君がまにまに吾は余利(ヨリ)にしを」
③ あてにしてそれにたよる。たよってそこに落ち着く。根拠としてとりすがる。
※徒然草(1331頃)二四三「仏のをしへによりてなるなり」
④ 味方になる。ひいきする気持になる。
※枕(10C終)一四四「あなたによりてことさらに負けさせんとしけるを」
[三] (依・因・由) よりどころとなる事柄に基づく。
① 原因する。基づく。
※万葉(8C後)一四・三四六四「人言の繁きに余里(ヨリ)てまを薦の同(おや)じ枕は吾(わ)は枕(ま)かじやも」
② それと限る。定める。
※虎明本狂言・鍋八撥(室町末‐近世初)「御せいさつには、何にはよるまじひ、さうさう罷出て、一のたなについだ者を、末代つけさせられうずるとのお事じゃ」
③ ((三)①から転じた用法) 「によりて」「によって」の形で接続助詞的に用いて、…のために、…からの意を表わす。
※平家(13C前)灌頂「五戒十善の御果報つきさせ給ふによて、今かかる御目を御覧ずるにこそさぶらへ」
※当世書生気質(1885‐86)〈坪内逍遙〉二「門限は十時じゃによって、少々早う戻ればえいは」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報