出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
江戸時代の銀座にあって,銀吹極め並びに銀改め役を務めた家の初代。銀座役所は銀貨鋳造のいっさいを管理し,常是は吹所(ふきどころ)をもっていて,銀貨鋳造の作業に従った。幕府への上納銀(丁銀,小玉銀)の包封も,大黒常是の特権であって,それゆえにこそ銀改め役を兼ねていた。その由緒書によると,大黒常是はもとは堺の町人湯浅作兵衛で,慶長期(1596-1615)以前は,堺において南鐐座といって,桑原左兵衛,長尾小左衛門,村田久左衛門,郡司彦兵衛,長谷又兵衛らの5人と申し合わせ,諸国から灰吹銀を買い集め,これに銅を加えて銀貨を造り,その座の極印を打って商売をしていたと記されている。徳川家康は,1601年(慶長6)伏見に銀座を設立するに際し,湯浅作兵衛を召して大黒常是と改名させ,銀座の銀吹手とした。以来,常是は多数の手代を抱え,鋳造した銀貨(丁銀,小玉銀)に〈常是〉および大黒天像の極印を打った。京都銀座の銀吹所は初代常是の長男の作右衛門家であり,江戸銀座の銀吹所は次男の長左衛門家であったが,1800年(寛政12)8代目長左衛門のとき,預り銀引負いの責任を問われて断絶,代わって京都の10代目作右衛門が江戸に召され,以後は江戸,京両所の役儀を兼帯した。
執筆者:田谷 博吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
江戸時代の銀座役人代々の世襲名。銀座の銀吹極(ぎんふききわめ)所ならびに諸上納銀改役(あらためやく)を家職となし、常是役所において銀貨(丁(ちょう)銀・小玉(こだま)銀)鋳造の業務を行い、その職役は世襲化された。
初代常是は、和泉(いずみ)国(大阪府)堺(さかい)の町人湯浅作兵衛(?―1636)で、堺の南鐐座(なんりょうざ)において桑原左兵衛(さへえ)、長尾小左衛門(こざえもん)、村田久左衛門(きゅうざえもん)、郡司彦兵衛(ぐんじひこべえ)、長谷又兵衛(またべえ)の5人と申し合わせ、諸国から灰吹銀を買い集めて、これに銅を加え、めいめい極印を打って銀吹きを業務としていた。徳川家康は1598年(慶長3)に常是を伏見(ふしみ)に呼び寄せ、大黒の姓を与え、銀吹役・銀改役の特権を与えた。1601年に伏見に銀座を設け、常是は桑原ら5人を堺から召し連れ、銀座御用を勤め、銀貨に大黒像や常是などの極印を打った。その後、銀座は06年に駿府(すんぷ)(静岡市)に設けられ、翌07年には伏見から京都に移された。さらに12年には駿府から江戸に銀座が移転した。これらの銀座はいずれも常是の同族が銀改役となり、世襲化された。この銀貨の包封は常是の特権とされ、幕府に銀貨を上納するときなどには、この包封が必要であった。これを常是包とよぶ。
[作道洋太郎]
『小葉田淳著『日本の貨幣』(1958・至文堂)』▽『田谷博吉著『近世銀座の研究』(1963・吉川弘文館)』
江戸時代,銀座で銀吹極(きめ)・銀改役を歴代勤めた家の当主の名。堺で極印銀(ごくいんぎん)を製造していた湯浅作兵衛は,徳川家康に大黒の姓を与えられ,1601年(慶長6)に開設された伏見銀座の銀吹極・銀改役として丁銀(ちょうぎん)を鋳造した。これを最初として,その子孫が江戸・京都の銀座の常是役所で銀貨を鋳造して刻印を行い,包所で改めて包封をし(常是包)幕府に納めた。しかし利は薄く,江戸の大黒家は8代目で借金を理由として家職をとりあげられ,京都大黒家が江戸銀座の職務を兼任した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…江戸時代の銀貨の中心をなすもので,形状はナマコ(海鼠)形の銀塊,量目は43匁(1匁=3.75g)内外であった。金貨の大判,小判,二分金,一分金,二朱金,一朱金が額面の明示されている定位貨幣であったのに対して,銀貨の丁銀,豆板銀(小粒銀)は使用のつどその量目を調べなければならない秤量貨幣であった。豆板銀は1個1~10匁くらいで丁銀の補助的役割を果たした小額銀貨であった。丁銀は室町時代後期から造られ,鋳造者である富商や両替商の極印によって流通した。…
※「大黒常是」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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