大体・大抵・大底(読み)たいてい

精選版 日本国語大辞典 「大体・大抵・大底」の意味・読み・例文・類語

たい‐てい【大体・大抵・大底】

[1] 〘名〙
① その事柄根本を形成する要素や部分。思想、考え方などの本質大宗。おおもと。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※花柳春話(1878‐79)〈織田純一郎訳〉四八「若し夫れ圧制を論ずるあらば大体(タイテイ)を抱ひて終に大害を醸すあらん」
② 事柄のあらまし。大略。おおよそ。また、多くを数えあげる中での大部分。おおかた。だいたい。
※九暦‐九条殿記・殿上菊合・天暦七年(953)一〇月二八日「自余雑物大底如左」
坊っちゃん(1906)〈夏目漱石〉二「是で大抵は見尽したのだらう」
③ ある事柄に該当するもののうちの大多数。特異なものに対して、普通一般をいう。なみ。おおよそ。
※虎明本狂言・二人袴(室町末‐近世初)「そうじておのれはあはうじゃ程に、大体のじぎをいふたらば、むさとしたる事をいひをるな」
[2] 〘副〙
事物、事態の数量や度数が、全部ではないにしてもほとんどすべてに及ぶさまを表わす。ほとんど全部。おおよそすべて。あらかた。だいたい。
※小右記‐長和二年(1013)正月九日「而無奏聞、又不代官、外記暗所行也者、大底如泥云々」
※古今集遠鏡(1793)一「まあたいてい哥のしなの六いろに分れうことは、どうもさうはわけられぬことでござる」 〔史記‐酷吏伝〕
② (否定表現を伴って、状態が普通の程度にとどまらないさまを強調する用法) 並一通りのさま。ありきたりに。
歌舞伎幼稚子敵討(1753)二「皆寐てから、わしが部屋へそっと来て、大ていしつこい事じゃなかったわいのふ」
浄瑠璃・新版歌祭文(お染久松)(1780)野崎村「自慢じゃないが髪は大てい上手じゃござらぬ」
※松翁道話(1814‐46)一「皆顛倒の衆生というて、逆様になってあるいてゐる。大体(タイテイ)くるしいものぢゃない。〈略〉難儀なものぢゃ」
③ (否定表現を伴うことなしに) 状態が普通の程度にとどまらないさまを表わす。ずいぶん。たいそう。とても。
咄本・詞葉の花(1797)水茶屋「コレ両国の水茶屋へめったに行くな。たいてい銭を出さねばならねえ」
④ 一つの判断が、絶対確実とはいえないまでも、ほぼ間違いなく成り立つという気持を表わす。多分。まず…だろう。
※浄瑠璃・傾城反魂香(1708頃)中「いやと云はたいていどうよく者と言(い)はれふず。心得(へ)たといふてから迷惑(めいわく)するは我ひとり」
金毘羅(1909)〈森鴎外〉「もう大抵お帰になる頃だとは存じましたが」
[3] 〘形動〙 ある事柄に該当するものの中で、特別でない一般の部類に属するさまをいう。
① 普通であるさま。あたりまえで通りいっぺんなさま。並大抵。下に打消の表現を伴って、逆に特別であることを強調する場合に用いることが多い。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「よい所へ御出、大ていの女夫(めうと)いさかいにあらずと」
※油地獄(1891)〈斎藤緑雨〉六「当節のやうに世が悪くっては、芸者もたいていではないので、落籍(ひっこ)んだとしたら容易に出ません」
② (「たいていでない」の意を込めていう) たいそう。
※浮世草子・傾城色三味線(1701)大坂「たのしみといふは大底(タイテイ)の事、罪もむくひも、女房子の事もわすれはてて、おもしろがる中に」
③ 多くを数えあげる中での大部分を占めるさま。十中八九。おおかた。
※社会百面相(1902)〈内田魯庵〉犬物語「何か知らぬが猶(ま)だ猶だ金ピカピカの本が西洋書棚に一杯あるさうで、大抵な者は見たばかりで烟に巻かれるさうだ」
[補注](1)「大体」と「大抵」とは同じように用いられたが、現代では「大抵」の方が優勢である。
(2)「大体」は、漢音「たいてい」、呉音「だいたい」で両様の慣用があるが、確証のない例はこの項に収めた。→だいたい(大体)
(3)(二)③の挙例「詞葉の花」の「出さねばならねえ」は、否定表現ではなくて二重否定である。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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