周礼
しゅらい
儒教経典。『儀礼(ぎらい)』『礼記(らいき)』とあわせて三礼(さんらい)とよぶ。原名は『周官(しゅうかん)』。前漢の武帝(ぶてい)期(前2世紀)に発見されたという。周公が周王国の官制を記した書として、劉歆(りゅうきん)はじめ古文学派に尊奉され、今文(きんぶん)学派の排斥にもかかわらず、後漢(ごかん)の鄭玄(じょうげん)の『周礼注』の盛行により、礼学上の権威を獲得した。ときに、現実の政治制度に一定の影響を与えた(新(しん)や北周など)。内容は、天地春夏秋冬の6部に分かれ、宮廷や財産関係の天官62種、地方行政や物産関係の地官76種、礼楽卜祝(ぼくしゅく)関係の春官69種、軍事や封建関係の夏官66種、司法や外交関係の秋官66種について、その員数と職務を詳述する。冬官は当初より欠け、工人の職務30種を記す『考工記』をもって補われている。『周礼』は、戦国以降に著述された理想上の職官書であるが、春秋戦国期の現実内容を反映する部分も多い。鄭玄の『周礼注』に基づき、唐の賈公彦(かこうげん)が『周礼注疏(ちゅうそ)』(『十三経(じゅうさんぎょう)注疏』の一つ)を著し、清(しん)末の孫詒譲(そんいじょう)は清朝考証学の成果を大成して『周礼正義』を著した。
[高橋忠彦]
『原田種成校閲、本田二郎著『周礼通釈』上下(1977、79・秀英出版)』
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周礼
しゅらい
Zhou-li
中国の十三経の一つ。『周官』ともいう。6編。成立年未詳。古くは,周公旦 (前 12世紀) が周王国の太平を築いた制度を記録したものと信じられていたが,実際は,前漢末期に古伝承を集めて編纂されたらしい。戦国時代末期にその主要部分ができていたという説もある。王のもとに天官冢宰 (宮廷) ,地官司徒 (教育) ,春官宗伯 (祭祀) ,夏官司馬 (軍事) ,秋官司寇 (裁判) ,冬官司空 (工事) の6官庁に分け,それぞれの官吏の数,分職の内容を記している。ただし冬官は亡失したとして『考工記』で補っている。儒教の政治理念を制度化したもので,王国の制度制定の参考とされた。前漢末の王莽 (おうもう) が重視したことでも有名である。
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しゅらい【周礼】
(「しゅ」「らい」はそれぞれ「周」「礼」の
呉音) 中国の
経書。十三経の一つ。六編、三六〇官。周公旦の撰と伝え、劉歆偽作説もある。もと「周官」といったが、唐の賈公彦の疏ではじめて「周礼」と称するようになった。天地春夏秋冬にかたどって官制を立て
天命の具現者である王の国家統一による理想国家の
行政組織の細目規定を詳説。「儀礼
(ぎらい)」「礼記
(らいき)」と共に三礼
(さんらい)の一つ。注釈書として漢鄭元注、唐賈公彦疏の「周礼注疏」が知られている。
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周礼【しゅらい】
中国,最古の礼書の一つ。《周官》とも。《礼記》《儀礼》とあわせ〈三礼〉ともいう。周公(公旦)の撰と伝え,周代の行政制度を記述。秦の焚書(ふんしょ)にあったが,漢代に5編が発見され,《考工記》を補って6編とした。王莽(おうもう)は同書によって新の制を粉飾しようとし,王安石は同書をもって自己の新法を正当化しようとした。
→関連項目周|宗教法|青銅器|六経
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周礼
しゅらい
中国の経書で,十三経の1つ。周官ともいう
周公旦 (たん) が周代の官制を記したものといわれ,天官(総理)・地官(教育)・春官(祭礼)・夏官(軍事)・秋官(司法)・冬官(土木)の6官に分けて記述。戦国時代の作とする説が有力。『儀礼 (ぎらい) 』『礼記 (らいき) 』とともに三礼という。
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デジタル大辞泉
「周礼」の意味・読み・例文・類語
しゅらい【周礼】
中国の儒教教典の一。三礼の一。周公の作と伝えられるが、成立は戦国時代以降。周王朝の官制を天地春夏秋冬の六官に分けて記述したもの。そのうち冬官は失われたため「考工記」で補われている。周官。
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しゅらい【周礼 Zhōu lǐ】
古くは《周官》ともいった。中国古代の礼書,三礼の一つ。西周王朝の行政組織を記述したものとされ,天官大宰,地官大司徒,春官大宗伯,夏官大司馬,秋官大司寇(だいしこう),冬官大司空の6人の長官に統帥される役人たちの職務が規定されている。これら六つの官は,理念的にはそれぞれ60の官職から成り,合計360という職務は1年の日数に対応するのだとされる。ただ冬官大司空の篇は古く失われ,漢代に替りに〈考工記〉が補われた。
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世界大百科事典内の周礼の言及
【三礼】より
…中国の礼に関する3種の古典,《周礼(しゆらい)》《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》の総称。《周礼》は《周官》ともいい,理想の官制をしるした行政法典。…
【葬制】より
…死他界【内堀 基光】
【中国】
[葬礼]
中国は,礼の国と言われるほどに各種の儀礼が発達しているが,その中でも死者に対する葬礼は細微な点に及んで複雑である。それは,危篤が確認されたときから始まり,儒家の経典である《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》《周礼(しゆらい)》の三礼(さんらい)に基づいて進められる。賓客の来訪に備えて家を清掃し,病人を北牖(まど)の下に頭を東にして寝かせる。…
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