傍白(読み)ボウハク(英語表記)aside

翻訳|aside

デジタル大辞泉 「傍白」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐はく〔バウ‐〕【傍白】

演劇で、相手役には聞こえず観客だけに知らせるかたちでしゃべるせりふ。内心のつぶやきなどを表す。わきぜりふ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「傍白」の意味・読み・例文・類語

ぼう‐はく バウ‥【傍白】

〘名〙 演劇で、舞台上の相手役には聞こえず観客だけに知らせることにしていうせりふ。わきぜりふ。
※苦の世界(1918‐21)〈宇野浩二〉一「少し耳の遠い母には聞こえぬやうに私に傍白(バウハク)して」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「傍白」の意味・わかりやすい解説

傍白 (ぼうはく)
aside

劇のせりふの一種独白の特殊なもの。〈わきぜりふ〉ともいう。通常の独白が原則として舞台上にただ一人いる人物によって語られるのに対して,傍白は舞台上に複数の人物がいる状態で特定の人物によって語られ,他の人物には聞こえないたてまえになっている。語り手の秘密の計画本心など,他の人物に知られたくない情報を観客に提供するために用いられる。これによって語り手と観客は状況認識を共有し,劇の進行距離をおいて眺めることができるようになるから,アイロニーを生むためには有効な手段である。17世紀から19世紀にかけてのヨーロッパの劇では頻繁に用いられたが,他の人物に聞こえないという不自然なたてまえによっているため,リアリズム劇では退けられた。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「傍白」の意味・わかりやすい解説

傍白
ぼうはく
aside

劇のせりふの一種で,モノローグ (独白) の特殊なもの。舞台上に複数の人数がいるとき,特定の人物が他の人物に知られては困る事実や考えを観客にだけ知らせるせりふで,他の人物には聞えないというたてまえになっている。伝統的な劇ではよく使われたが,近代以後の劇では不自然であるとして退けられることも多い。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の傍白の言及

【台詞】より

…よく行われるせりふの形式上の一分類としては,2人あるいはそれ以上の登場人物の間で交わされる〈対話(ダイアローグdialogue)〉。登場人物が自分自身の考えや感情などをみずからに問いかける形をとる〈独白(モノローグmonologue)〉(モノローグ劇),対話中に対話の当の相手には聞こえないという約束で横を向き独りごとのように言う〈傍白(アサイドaside)〉などがある。【編集部】
[せりふの言語表現の特質]
 せりふは,戯曲表現の唯一の直接的な実質であり,筋や役の性格を含めて,劇的な行動のいっさいがそれを通じて表現される。…

【台詞】より

…よく行われるせりふの形式上の一分類としては,2人あるいはそれ以上の登場人物の間で交わされる〈対話(ダイアローグdialogue)〉。登場人物が自分自身の考えや感情などをみずからに問いかける形をとる〈独白(モノローグmonologue)〉(モノローグ劇),対話中に対話の当の相手には聞こえないという約束で横を向き独りごとのように言う〈傍白(アサイドaside)〉などがある。【編集部】
[せりふの言語表現の特質]
 せりふは,戯曲表現の唯一の直接的な実質であり,筋や役の性格を含めて,劇的な行動のいっさいがそれを通じて表現される。…

【独白】より

…人物が特定の相手に聞かせることを目的とせずに語るせりふ。舞台上に他の人物がいないときに語られる単なる独白と,他の人物がいるときに語られる傍白とに区別される。古典劇ではよく用いられ,シェークスピアやモリエールの劇には頻出する。…

※「傍白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」