独白(読み)どくはく

精選版 日本国語大辞典 「独白」の意味・読み・例文・類語

どく‐はく【独白】

〘名〙
芝居で、登場人物心中の思いなどを観客に知らせるために、相手なしで、ひとりせりふを言うこと。また、そのせりふ。ひとりぜりふ。モノローグ
※江戸から東京へ(1921)〈矢田挿雲〉七「籠で貼った月を見上げながら大胆不敵で美しい独白(ドクハク)を述べるところなんざあ堪ったもんぢゃ有りませんと」
② 転じて、ひとりごとを言うこと。また、そのひとりごと。
故旧忘れ得べき(1935‐36)〈高見順〉六「その彼らしい感慨をこれ亦彼らしい愚痴っぽい独白で現はすと」

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デジタル大辞泉 「独白」の意味・読み・例文・類語

どく‐はく【独白】

[名](スル)
演劇で、登場人物が相手なしでせりふを言うこと。また、そのせりふ。モノローグ。「主人公真情独白する場面」「独白劇」
ひとりごとを言うこと。また、そのひとりごと。
[類語](1科白せりふ台詞モノローグダイアローグ/(2独り言独話独語独言モノローグつぶや独り

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改訂新版 世界大百科事典 「独白」の意味・わかりやすい解説

独白 (どくはく)
monologue

劇のせりふの一種。モノローグともいう。人物が特定の相手に聞かせることを目的とせずに語るせりふ。舞台上に他の人物がいないときに語られる単なる独白と,他の人物がいるときに語られる傍白とに区別される。古典劇ではよく用いられ,シェークスピアやモリエールの劇には頻出する。しかし近代リアリズムの確立によってしだいに退けられるようになった。それは,人間が現実生活において長々とひとりごとを言うことは考えられず,したがって劇でもそういうことはあってはならないとされるからである。ことに傍白は,舞台上の他の人物に聞かれては困ることを,他の人物には聞こえていないという想定で述べるものであるから,はなはだ不自然であるとされた。しかしこれは,独白を人物の内面心理の表現とのみみなすからであって,独白を観客への語りかけと理解すれば問題は解決される。すなわち,人物は当のせりふをとくにだれにあててというのでもなく,またみずからに向かって語るのでもなくて,観客に対して劇の理解のために必要な情報を提供している。したがって,語り手は当の人物自身とは必ずしもいえなくなる。

 このように考えれば,日本の能や歌舞伎のように語り物としての性格を強くもっている演劇のせりふも,一種の独白として理解できる。独白は劇と語り物としての文学との重要な接点なのであり,たとえば叙事演劇を提唱したブレヒトが,独白をしばしば用いているのは不思議ではない。また,チェーホフの《煙草の害について》のように独白だけで書かれた戯曲もある。
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百科事典マイペディア 「独白」の意味・わかりやすい解説

独白【どくはく】

モノローグ。対話(ダイアローグ)の対。舞台で登場人物が相手なしに一人で独立したせりふをいうこと。また,そのせりふをさすこともある。とくに他の人物がいるときは,傍白と呼ばれる。《フィガロの結婚》《ハムレット》などの独白が有名。登場人物がただ一人の独白劇もある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「独白」の意味・わかりやすい解説

独白
どくはく

モノローグ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「独白」の意味・わかりやすい解説

独白
どくはく

モノローグ」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の独白の言及

【台詞】より

…よく行われるせりふの形式上の一分類としては,2人あるいはそれ以上の登場人物の間で交わされる〈対話(ダイアローグdialogue)〉。登場人物が自分自身の考えや感情などをみずからに問いかける形をとる〈独白(モノローグmonologue)〉(モノローグ劇),対話中に対話の当の相手には聞こえないという約束で横を向き独りごとのように言う〈傍白(アサイドaside)〉などがある。【編集部】
[せりふの言語表現の特質]
 せりふは,戯曲表現の唯一の直接的な実質であり,筋や役の性格を含めて,劇的な行動のいっさいがそれを通じて表現される。…

※「独白」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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