(読み)トウ

デジタル大辞泉 「倒」の意味・読み・例文・類語

とう【倒】[漢字項目]

常用漢字] [音]トウタウ)(呉)(漢) [訓]たおれる たおす
立っていたものがひっくりかえる。たおれる。たおす。「倒壊倒産倒幕倒木昏倒こんとう卒倒打倒転倒
さかさま。「倒置倒立
程度状態がはなはだしいことを表す語。「驚倒傾倒絶倒罵倒ばとう

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精選版 日本国語大辞典 「倒」の意味・読み・例文・類語

たお・す たふす【倒】

〘他サ五(四)〙
① 立っている物を横にする。ねかす。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「この林より西に、木をたふす斧の声、遙かに聞こゆ」
② 人などをころばす。ころげさせる。
書紀(720)神武即位前(寛文版訓)「又、賊衆(あたとも)戦死(たたかひう)せて屍(かはね)を僵(タフシ)
③ 国家、政府などをくつがえす。滅ぼす。
※文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉一「元を殪(たふ)して旧に復し大明一統の世となりたるは」
中世、土地などにかかわる権益を否定する。
※久米田寺文書‐宝治二年(1248)一二月五日・関東下知状「且木嶋新庄当寺免田参町余被倒畢、人用者非本免之故也」
⑤ 殺す。死なす。
※延喜式(927)祝詞(出雲板訓)「畜(けもの)仆志(タフシ)
⑥ 勝負をして、負かす。戦って相手をうち負かす。「強敵をたおす」
⑦ 人をだます。特に、外見や評判などで相手を屈伏または失敗させる。
日葡辞書(1603‐04)「ネイジンワ ヒトヲ イイ tauosu(タヲス)〈訳〉人にへつらい、真心のない人は他人を駄目にする」
浄瑠璃・京羽二重娘気質(1764)四「一度ならず二度三度、此前髪に倒されたと」
⑧ 他人に金銭上の損害を与える。支払うべき金を支払わない。ふみたおす。
仮名草子東海道名所記(1659‐61頃)六「主にかかりは、おやかたをたをし」
腕くらべ(1916‐17)〈永井荷風〉一三「山井の倒すのは下宿屋ばかりでない。出版商からは原稿料を前借して其のまま本は書かず」
⑨ (動詞の連用形に付いて) 徹底的に…する。…し通す。「値切りたおす」
※彼の歩んだ道(1965)〈末川博〉四「とにかく、徹底的に野次りたおされたので」

たおれ たふれ【倒】

〘名〙 (動詞「たおれる」の連用形の名詞化)
[1]
① たおれること。また、屈すること。
源氏(1001‐14頃)胡蝶「恋の山には孔子(くじ)のたうれ」
② 貸した金などが取り戻せないこと。貸しだおれ。損失。損害。
※浄瑠璃・生玉心中(1715)下「さがが死ぬると大きなたふれ」
[2] 〘語素〙 (「だおれ」の形で)
① その事に限度を越えて金を使い、財産をなくしてしまうこと。「着倒れ」「食い倒れ」
② うわべだけで、期待されるような内容を伴わないこと。「看板倒れ」「評判倒れ」

たおし たふし【倒】

〘語素〙 (動詞「たおす」の連用形から) 体言に付けて用いる。
① 実質が伴わないのにその事物で相手を屈伏させる意を表わす。「見かけ倒し」「からだ倒し」「正直倒し」など。
② 限度を越えてその事をする者の意を表わす。「食らい倒し」

たお・る たふる【倒】

〘自ラ下二〙 ⇒たおれる(倒)

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