七厘(読み)しちりん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「七厘」の意味・わかりやすい解説

七厘
しちりん

七厘こんろの略。七輪とも書く。煮炊きに用いるこんろのうち、土製のものを俗に七厘といい、燃料は木炭を用いる。関西では「かんてき」(癇癖(かんぺき)の転訛(てんか)、間鉄器)、「かんでき」という。内部が空洞中段に「さな」(火をのせる格子形の棚、簀子(すのこ))を設け、前面下方には戸のついた空気穴がある。さなの上に炭と火種をのせ、下からの風の多少により火力の調節を行う。七厘が普及するのは江戸時代の中期以降とみられるが、当時の家庭はせいぜい二つの「へっつい」で、飯と汁の煮炊きがやっとの状態であった。軽量で移動しやすく、こまごまとした料理や湯沸かしに便利なため急速に各家庭へ浸透した。名前のおこりは、わずか七厘の炭でまかなえたからとか、さなの種類が7種類あったからとかいうが、さだかでない。明治以後は、どの家庭でも七厘が用いられた。変種として石油ガス七厘が現れ、また都市ガスのこんろも七厘というが、元来の七厘とは構造が異なる。

[宮垣克己]

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世界大百科事典(旧版)内の七厘の言及

【七輪】より

…七厘とも書く。家庭での炊飯に用いる,小型で移動のできる土製のこんろ。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」