変種(読み)へんしゅ

精選版 日本国語大辞典 「変種」の意味・読み・例文・類語

へん‐しゅ【変種】

〘名〙
植物および動物分類学上の階級の一つ。種あるいは亜種の下におかれる。通常少数の顕著な遺伝性質によって識別できる種内の個体群をいう。植物では変種は重視され、命名規約で認められ、その適用を受ける階級となっているが、動物では規約上の適用は受けない。〔植物小学(1881)〕
栽培植物や飼育動物の品種などの俗称。
※東京年中行事(1911)〈若月紫蘭〉六月暦「花菖蒲と云っても、園芸的変種(ヘンシュ)の数は随分沢山あり」
③ 比喩的に、あるものから派生して出た変わりだね。
文学批評方法論(1940)〈岩上順一〉「文学批評の一変種として是認する」

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デジタル大辞泉 「変種」の意味・読み・例文・類語

へん‐しゅ【変種】

基本的には同類であるが、どこかが違っているようなもの。変わり種。
生物分類で、種の基準標本との形態差異があり、地理的に分布の異なる個体群。植物で用い、種名または亜種名の次にvar.(varietas)と記す。
[類語]変型変わり種バラエティー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「変種」の意味・わかりやすい解説

変種
へんしゅ

動植物の各種内にみられる種々の型、個体的あるいは集団的な変異、地方的変異などに対して用いられてきた術語。型と同様に、分類学上、亜種に相当するような地域的な変異、地方型、遺伝子相違によって生ずる色彩・形態あるいは生態などの変異型、環境状態の違いによってできる変異型、奇型は別として、個体的変異の著しい異常型のようなものまでが含まれている。厳密にいう場合には、互いに交配可能な1個体群(種にあたる)のなかに現れる不連続な変異型、つまり「中間型でほかの構成員と連続しない型」に限られるのが普通であるが、その範囲を定めることは、実際ではかならずしも容易ではない。

 植物では、現在も亜種より変種のほうがよく用いられており、規約上でも品種(型)とともに認められていて、学名では種名または亜種名のあとにvar. (varietasの略)と記してあるのが変種の意味で、そのあとにある語が変種名である。

 動物でも変種の扱いは、かつては普通に用いられていたが、現在の「国際命名規約」ではほかのいろいろな型名とともに公式には除外されている。そのため1960年(昭和35)以前からの変種と型は、一部の例外を除いて亜種として扱われる。

[中根猛彦]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「変種」の意味・わかりやすい解説

変種
へんしゅ
variety

生物分類の一階級で,種 speciesの下におかれる。同一種であるが,形質が基本種 (母種) と少し異なる場合に変種とする。差異が,ことに地域差と組合わさって明瞭に認められるときには,亜種 subspeciesとするが,種,亜種,変種,品種 (変種よりもさらに軽度の差異) の区分けは,習慣的なものもあって,動植物の群により,一様ではない。学名の表示法は,通常の二名法をイタリック体で,次に変種を意味する var.を記し,変種名を書く (たとえば,雑草のヌカボは Agrostis clavata var. nukaboとする) 。

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