ネッタイチョウ(読み)ねったいちょう(英語表記)tropicbird

改訂新版 世界大百科事典 「ネッタイチョウ」の意味・わかりやすい解説

ネッタイチョウ (熱帯鳥)
tropicbird

ペリカン目ネッタイチョウ科Phaethontidaeの鳥の総称。この仲間は中型の海鳥で,世界の熱帯や亜熱帯海域に広く分布し,1属3種に分類される。全長81~100cm(長い尾を除いた全長は41~61cm),羽色は全体白色で,体の上面に小黒斑があったり,翼に黒斑をもつものもある。中央の2枚の尾羽が著しく長くのび全長の約半分に達する。この細長い尾を吹き流して,求愛飛翔(ひしよう)を行う。くちばしはやや太めで,先端がとがり,種によって赤色か黄色。翼は広く短めで,先はとがった形になり,すばやく羽ばたいて飛ぶ。脚は短く,水かきがある。魚類やイカ類を空中から海面に突入してとらえて食べる。眼は大きく,薄明薄暮でも採餌活動を行うことができる。巣は海に面した断崖の棚やくぼみ,岩の割れ目,あるいは樹木の中ややぶの中につくる。1腹1個の卵を産み,雌雄交替で約1ヵ月半抱卵し,雛は両親が口から吐き戻した餌を与えられ,孵化(ふか)後約15週間で巣立つ。繁殖に長期間かかるため,毎年ではなく隔年に繁殖する。

 アカハシネッタイチョウPhaethon aethereusはくちばしが赤色で尾は白く,背面に黒斑がある。熱帯アメリカの太平洋大西洋岸,インド洋に分布する。くちばしも尾も赤いアカオネッタイチョウP.rubricaudaは,熱帯・亜熱帯太平洋とインド洋に分布し,日本でも小笠原諸島西之島南硫黄島南鳥島で繁殖している。尾が白いシラオネッタイチョウP.lepturusは,熱帯・亜熱帯海域に広く分布している。この仲間ではもっとも小型でくちばしは黄色である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネッタイチョウ」の意味・わかりやすい解説

ネッタイチョウ
ねったいちょう / 熱帯鳥
tropicbird

鳥綱ペリカン目ネッタイチョウ科に属する海鳥の総称。この科Phaethontidaeの仲間は、全長80~100センチメートルと中形で、世界の熱帯・亜熱帯海域に広く分布し、3種が知られている。どの種も全体に白色で、体上面に小さい黒斑(こくはん)があり、翼に黒斑をもつ種もある。最大の特徴は尾羽の中央2枚で、著しく細長く約40センチメートルにもなり、全長の半分近い。この長い尾を吹き流して求愛飛翔(ひしょう)を行う。嘴(くちばし)は太めで、先は鋭くとがり、いくらか湾曲する。翼は広く短めで先はとがる。飛翔中、翼をすばやく羽ばたく。足は短く、水かきがある。魚群を求め外洋に出て、海面に突入して魚類やイカ類をとらえる。目が大きく、薄明でも採餌(さいじ)する。地上を歩くのは不得手で、海に面した断崖(だんがい)の棚やくぼみ、割れ目、あるいはやぶの中や樹木中に営巣し、1卵を産む。雌雄交替で1か月半近く抱卵し、雛(ひな)を15週間養育する。繁殖に9~12か月近くかかるため、隔年繁殖する。雛は親鳥が吐き戻した餌(えさ)を口移しに与えられる。アカハシネッタイチョウPhaethon aethereusは嘴が赤色で尾は白く、背に黒斑がある。アメリカ大陸の太平洋・大西洋岸、インド洋に分布する。アカオネッタイチョウP. rubicaudaは尾が赤色で嘴も赤い。この種は大西洋には分布しない。熱帯海域に広く分布するシラオネッタイチョウP. lepturusは、この仲間ではもっとも小さい種で、尾は白色、嘴が黄色である。

長谷川博]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ネッタイチョウ」の意味・わかりやすい解説

ネッタイチョウ
Phaethontidae; tropicbirds

ネッタイチョウ目ネッタイチョウ科の鳥の総称。アカオネッタイチョウ Phaethon rubricauda,シラオネッタイチョウ P. lepturus,アカハシネッタイチョウ P. aethereus の 3種からなる。全長 70~105cm。アジサシに似た体つきの海鳥で,尾羽は中央 2枚が非常に長く,全長の約半分以上を占める。羽色はほとんど白く,などに黒い部位があり,過眼線も黒いが,その色のパターンは種によって変化する。脚は体の後方についていて短く,歩くことができず,陸では体を押して動く。趾(あしゆび)の間には蹼(みずかき)があり,休むときには水面におりる。繁殖期以外に陸に上がることはない。多くのアジサシ類と同じように,海上を飛びながら海中に突入して食べ物をとる。熱帯海域に分布する。日本ではアカオネッタイチョウ,シラオネッタイチョウの 2種が記録されている。

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