ニイニイゼミ(英語表記)Platypleura kaempferi

改訂新版 世界大百科事典 「ニイニイゼミ」の意味・わかりやすい解説

ニイニイゼミ
Platypleura kaempferi

半翅目セミ科の昆虫。〈閑さや岩にしみ入(いる)蟬の声〉に詠まれているセミとして有名で,梅雨明けとともに現れる。小型で,体は扁平,前胸側方は三角形に張り出す。前翅は広い暗灰色部と透明部があり,後翅黒色で翅縁は透明。体長20~26mm,前翅の開張65~73mm。中国,朝鮮半島,台湾,日本全国に分布し,日本での南限は沖縄本島である。平地から山地にかけて見られ,6月末から9月初めにかけて出現するが,7月後半にもっとも多い。種々の樹木に止まり,チーという澄んだ声で鳴く。終齢幼虫(脱皮殻)の体表面には泥をつけている。

 ニイニイゼミ属にはほかに4種が知られ,いずれも琉球特産種。奄美大島から沖縄本島にかけては小型で前翅の透明部の多いクロイワニイニイP.kuroiwaeが知られ,沖縄本島ではニイニイゼミよりはるかに多い。宮古島にはやや大きいミヤコニイニイP.miyakonaが分布し,石垣島と西表(いりおもて)島には,さらに扁平で前胸側板の著しいヤエヤマニイニイP.yayeyamanaが知られている。また,石垣島の一部には,1974年に発見されたイシガキニイニイP.albivannataが知られる。これは後翅の黒色部に白斑のある点で他種から区別される。
セミ
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニイニイゼミ」の意味・わかりやすい解説

ニイニイゼミ
にいにいぜみ
[学] Platypleura kaempferi

昆虫綱半翅目(はんしもく)同翅亜目セミ科Cicadidaeに属する昆虫。体長20~26ミリメートル、同翅端まで32~38ミリメートル。体はやや扁平(へんぺい)で、頭部胸部は緑褐色に黒色紋がある。前胸背側方は三角形状に広がる。前翅には灰褐色の大きな雲状紋があり、後翅は透明な周縁部を除き黒色。北海道から琉球諸島(りゅうきゅうしょとう)にかけて分布し、各地に普通にみられ、朝鮮半島、中国大陸、台湾にも知られる。7~8月に出現し、チーと鳴く。1世代は4年と推定される。脱皮殻は球形に近く、表面は泥で覆われる。日本にはほかに、クロイワニイニイP. kuroiwae、ヤエヤマニイニイP. yayeyamanaなど4種が知られ、いずれも南西諸島固有種である。対馬(つしま)には秋遅くに出現する独特なセミ、チョウセンケナガニイニイSuisha coreanaが知られる。

[林 正美]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニイニイゼミ」の意味・わかりやすい解説

ニイニイゼミ
Platypleura kaempferi

半翅目同翅亜目セミ科。体長 (翅端まで) 35mm内外。体は短太,やや扁平で緑褐色を帯び,体表に黄白色の微毛が生えている。頭部は短く,前胸より幅が狭い。前胸側縁は角張って突出する。中胸背は黒色で中央に褐色のW字状の紋がある。前翅は基部に黒褐色斑があり,先半は透明で黒褐色斑をもつ。後翅は黒色で外縁が透明。最も普通のセミで,夏にみられるセミのうちでは早い時期に現れ,「ちぃー……」と連続した声で鳴く。日本全土,台湾,中国,アジア熱帯地方に広く分布する。琉球列島にはほかにクロイワニイニイ P. kuroiwaeなど4種が分布する。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ニイニイゼミ」の意味・わかりやすい解説

ニイニイゼミ

半翅(はんし)目セミ科の昆虫の1種。体長(翅端まで)35mm内外,暗黄緑色に黒斑がある。日本全土に普通で,朝鮮,中国〜マレー,ボルネオに広く分布する。成虫は6月下旬から出現し9月ごろまでみられる。南西諸島には近縁種が4種,朝鮮と対馬には晩秋に現れるチョウセンケナガニイニイがいる。チョウセンケナガニイニイは絶滅危惧II類(環境省第4次レッドリスト)。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android