南西諸島
なんせいしょとう
鹿児島県の薩摩(さつま)・大隅(おおすみ)両半島の南方洋上、北緯30度50分付近から北緯24度付近まで、南西方向に弧状に連なる島々の総称で、琉球列島(りゅうきゅうれっとう)ともよばれている。北は種子島(たねがしま)、硫黄島(いおうじま)などに始まり、南西端は沖縄県与那国島(よなぐにじま)、波照間島(はてるまじま)、西表島(いりおもてじま)などに終わる。沖縄県のほぼ全域をなし、鹿児島県の島嶼(とうしょ)部の大部分を占める。この間の距離は約1200キロメートルに達する。中ほどにある与論島(よろんじま)と沖縄本島の間に両県の県境がある。この県境以北の島々を薩南諸島(さつなんしょとう)、以南の島々を琉球諸島とよんでいる。前者はさらに北部から大隅諸島、吐噶喇(とから)列島、奄美諸島(あまみしょとう)と三分し、後者は沖縄諸島、先島諸島(さきしましょとう)と二分してよぶこともある。
大隅諸島のおもな島には屋久島(やくしま)、種子島が、奄美諸島には奄美大島、徳之島(とくのしま)、沖永良部島(おきのえらぶじま)が、沖縄諸島には沖縄本島、久米島(くめじま)が、先島諸島には西表島、石垣島、宮古島(みやこじま)などがある。現在の正式名称となっている「南西諸島」は歴史的意味があってつけられたものではなく、従来は主として海上保安庁水路部(現、海洋情報部)で用いられたものが1968年(昭和43)に協議決定されたものである。
各島の地形・地質や歴史は、それぞれ個性的であるが、この海域が日本海流(黒潮)の流路にあたるため海水温が高く、北部の若干の島々を除き、サンゴ礁の島々とよぶにふさわしい。また歴史的には南方および大陸文化の通路「道の島」として重要な位置を占めていたことも事実である。現在では、温暖な気候、亜熱帯植生、サンゴ礁海岸の景観などを主眼とする国立公園や国定公園域となっている所が多い。
[塚田公彦]
『中西進編『南方神話と古代の日本――古代東アジアの中の日本』(1995・角川書店)』▽『帝国書院編集部著『地図で訪ねる歴史の舞台――日本』最新版(1999・帝国書院)』▽『太田陽子著『変動地形を探る1 日本列島の海成段丘と活断層の調査から』(1999・古今書院)』▽『東喜望著『沖縄・奄美の説話と伝承』(1999・おうふう)』▽『住谷一彦、クライナー・ヨーゼフ著『南西諸島の神観念』復刻版(1999・未来社)』▽『谷川健一編『日本の神々――神社と聖地13 南西諸島』新装復刊(2000・白水社)』▽『町田洋・太田陽子・河名俊男・森脇広・長岡信治編『日本の地形7 九州・南西諸島』(2001・東京大学出版会)』▽『佐々木高明著『南からの日本文化』上下(2003・日本放送出版協会)』
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南西諸島
なんせいしょとう
九州島とタイワン (台湾) 島との間,太平洋上に飛び石状に連なる弧状列島。海上保安庁水路部が用いはじめた行政上の地名。北半は薩南諸島と呼ばれ,南半は琉球諸島と呼ばれる。薩南諸島は大隅諸島,吐 噶喇 (とから) 列島,奄美 (あまみ) 群島の3諸島および口之三島 (竹島,硫黄島,黒島) ,草垣群島,宇治群島から成るが,狭義には上記3諸島をさすこともある。琉球諸島は沖縄諸島,先島諸島から成る。地学的に,南西諸島そのもの,または南西諸島のうち奄美大島以南を琉球弧,琉球列島と呼ぶことがある。黒潮の影響を受け気候温暖で亜熱帯性植物が茂り,バナナ,パイナップルなどを産する。台風の通過コースに位置するため,しばしば大きな被害を受ける。第2次世界大戦後北緯 29°以南はアメリカ合衆国の管理下におかれていたが,1952年吐 噶喇列島,53年奄美群島,72年琉球諸島が日本に返還された。
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なんせい‐しょとう ‥ショタウ【南西諸島】
九州南端から台湾北東端に至る間の海域に連なる弧状列島の総称。大隅諸島・吐噶喇(とから)列島・奄美諸島(以上薩南諸島)・沖縄諸島・先島諸島(以上琉球諸島)からなり、太平洋と東シナ海を隔てる。吐噶喇列島北の吐噶喇海峡を境として、暖帯と亜熱帯とに分かれ、動植物の分布が異なる。琉球弧。
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「南西諸島」の意味・読み・例文・類語
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南西諸島
なんせいしよとう
九州島と台湾島の間に連なる島々の行政上の総称。一八八七年(明治二〇年)頃以降に明治政府の水路部によって使用され一般化した。薩南諸島(鹿児島県)と琉球諸島(沖縄県)に二大別され、さらに薩南諸島は大隅諸島・吐
喇列島・奄美諸島に、琉球諸島は沖縄諸島と先島諸島に分けられる。面積〇・〇一平方キロ以上を島とし、埋立で地続きになったり架橋されたものも含めると、薩南諸島は三八島、琉球諸島一六〇島で、南西諸島は総計一九八島となる。経緯度は北緯三一度一一分(大隅諸島・宇治群島宇治島)―二四度二分(先島諸島のうち八重山諸島の波照間島)、東経一二二度五六分(八重山諸島の与那国島)―一三一度二〇分(沖縄諸島のうち大東諸島の北大東島)に及ぶ。
自然地理的な分類や地学的な分類から九州から台湾まで島々が弧状に連なるため、とくに地学的に琉球弧や琉球列島と明治期から呼称された。ただし南西諸島に含まれる大東諸島や尖閣諸島はこの区分には含まれない。南西諸島の大半は千島弧や日本弧と連続する太平洋西縁の弧状列島群(琉球弧)に属するので、九州・四国などの西南日本(弧)と同様に帯状に連続する地質構造をなす。とくに沖縄諸島までの北・中琉球弧では古生代後期―中生代のオリストストローム層(秩父帯)、中生代後期―古第三紀の付加体である四万十累層群(四万十帯)の基盤岩類が、西(大陸側)から東(海溝側)へ古い順に配列する。
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世界大百科事典内の南西諸島の言及
【九州地方】より
…日本列島の南西部に位置し,九州本島と壱岐,対馬,五島列島,天草諸島,南西諸島など大小2500余りの島々からなり,北西方は朝鮮海峡を隔てて朝鮮半島と,南西方は台湾と隣接する。行政的には福岡,佐賀,長崎(以上北九州),熊本,大分(中九州),宮崎,鹿児島(南九州)と沖縄の8県に分かれる。…
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