コンタクトレンズ
こんたくとれんず
contact lens
眼球に密着(コンタクト)させて目の屈折異常を矯正する小さくて薄いレンズで、19世紀末から使われ始めた。最初はガラス製で、1930年以降にプラスチック製のものが出現した。一般に、ハードコンタクトレンズは直径8~9ミリメートル、厚さ0.1~0.3ミリメートルくらいの皿状をしたプラスチックのレンズで、角膜に涙の表面張力を利用して直接装用する。
コンタクトレンズは、強度の近視、遠視、乱視、円錐(えんすい)角膜のほか、左右の目の屈折力に大きな差がある不同視、あるいは白内障の手術後など、眼鏡では矯正のむずかしい場合のほか、現在では美容、職業、スポーツなどの関係で装用されることも多くなっている。結膜炎、角膜炎、涙嚢(るいのう)炎など、目に炎症のある人などの場合は、コンタクトレンズの装用は避けなければならない。コンタクトレンズの長所としては、眼鏡での矯正のむずかしい場合に使用できること、視野が広くて曇りにくいこと、装用していることがわかりにくいことなどがあげられる。しかしコンタクトレンズにも欠点がある。眼鏡に比べて取扱いがめんどうで、紛失しやすい。また、目の中に大きな異物を入れるわけであり、初めて使うときは練習が必要で、慣れるまで種々の症状が出現する。さらに、角膜を傷つけやすく、装用中に角膜の傷に気がつかなかったり、無理に入れたり不規則な使い方をすると、細菌が感染して角膜潰瘍(かいよう)になることもある。いずれにしても、コンタクトレンズを装用している人は、レンズのひずみや角膜の変化、屈折度の変化などについて、少なくとも3か月に1回の定期検査が望ましい。なお、装用の仕方が不規則であったり、装用したまま眠ったりすることで激痛に悩まされることもあり、装用中に目の痛みなどがあったり、いつもと装用感が異なったりした場合には、すぐに眼科専門医の検査を受ける必要がある。
ハードコンタクトレンズは材質が硬く、角膜に密着して、まばたきや目の動きによってレンズが動き、そのために涙が入れ替わり、角膜への酸素供給が行われる。これに対してソフトコンタクトレンズは、含水率が40~80%くらいで軟らかく、酸素を透過させる。装用感はハードコンタクトレンズよりもよくて長時間装用できるし、練習も少なくてすむが、変形しやすいので視力の矯正がときに不安定になることがある。また、軟らかいために、もちが悪く、寿命は約2年くらいである。なお、もっとも注意しなければならないことは、カビや細菌がつきやすく、毎日きれいに洗ったり、煮沸消毒も何日かに1回は必要で、管理がややたいへんなことである。そのほか、角膜に傷がついても痛みがハードコンタクトレンズに比べて軽いため、気づいたときは手遅れになる場合もある。近年はソフトコンタクトレンズの連続装用が可能になり、使い捨てコンタクトレンズ(毎日、あるいは2週間ごとに新しいレンズに取り替える)も普及して、とくに白内障の手術後や涙液の減少した乾性角結膜炎に長期間、問題もなく装用していられるようになってきた。ソフトコンタクトレンズ装用の場合は、ハードコンタクトレンズに比較して定期検査も多くする。月に1回くらいは必要である。
なお、初めてコンタクトレンズをつくる場合は、コンタクトレンズを扱っている眼科で診察を受け、コンタクトレンズ装用の適応や注意すべき事項について十分に相談のうえ、屈折の度と角膜のカーブを測って処方をしてもらう。また、痛くなったり、異常を認めたときにすぐ診てもらえる眼科を決めておくことも必要である。
[中島 章]
『曲谷久雄著『失敗しないコンタクトレンズ選び』(CBS・ソニーブックス)』
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百科事典マイペディア
「コンタクトレンズ」の意味・わかりやすい解説
コンタクトレンズ
プラスチック製の薄いレンズで,普通裏面を角膜の湾曲に合致させ,角膜前面に直接装着して屈折異常を矯正するもの。強度の近視や不正乱視,左右の屈折度の著しく異なる不同視,角膜面の凹凸のはなはだしいものなどにはきわめて有効。また,視野が広く,眼鏡(めがね)のように水滴やほこりの付くことも少なく,外観上も目だたないなどの利点がある。反面,慣れるまで多少の異物感や炎症が起こり,少しずつ装用時間を延ばしていかねばならない面倒さがあり,アレルギー性の人や角膜などに眼疾患のある人には不適などという欠点もある。材質の硬軟によりハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズがある。また,1991年には使い捨てコンタクトレンズも発売され,1996年にはコンタクトレンズ出荷額の3分の1を占めた。その後2001年2月までに遠近両用コンタクトレンズ(ハード,ソフト,使い捨てソフト)が実用化されている。
→関連項目矯正視力
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コンタクトレンズ
contact lens
角膜表面に直接装着して使用する矯正レンズ。材質は通常アクリル系合成樹脂で,含水量の多寡によりハードレンズとソフトレンズに分けられる。屈折異常の矯正に広く用いられ,ことに不同視眼,無水晶体眼,強度の角膜乱視,強度近視などに適する。コンタクトレンズは,角膜前面に密着して眼球とともに動くので,種々の収差が起らない。短所としては,流涙,羞明,異物感,霧視などを訴えることがあり,ことに神経質の人には装着がむずかしい。ソフトレンズは,角膜疾患の場合の角膜保護に用いたり,薬剤を取込ませて長時間にわたって徐々に放出させ,治療に役立てる目的で用いられることもある。ソフトレンズの連続装用の研究が盛んに行われ,実用化も進んでいる。
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精選版 日本国語大辞典
「コンタクトレンズ」の意味・読み・例文・類語
コンタクト‐レンズ
〘名〙 (contact lens) 眼鏡のかわりに、涙の表面張力で角膜上に密着させ、視力を矯正するレンズ。プラスチック製のものが多い。接眼眼鏡。コンタクト。
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デジタル大辞泉
「コンタクトレンズ」の意味・読み・例文・類語
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コンタクトレンズ
コンタクトレンズ
contact lens
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
世界大百科事典 第2版
「コンタクトレンズ」の意味・わかりやすい解説
コンタクトレンズ【contact lens】
眼に近視,遠視,乱視などの屈折異常があるときは,眼鏡を装用してその屈折異常を矯正するが,レンズを小さくして,角膜上に直接密着させて用いるものをコンタクトレンズという。コンタクトレンズは,19世紀前半にその着想が始まり,後半には実験段階に入ったが,初めはガラスを材料としていたため,装用は非常に困難であった。しかし,1940年代になると,プラスチックのコンタクトレンズができ,その後,レンズの材質は,著しく改良されている。
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世界大百科事典内のコンタクトレンズの言及
【屈折異常】より
…病的近視では眼底に網脈絡膜萎縮などの変化を伴い,網膜剝離(はくり)や眼底出血などの合併症をおこしやすい。
[近視の治療]
凹レンズの眼鏡またはコンタクトレンズを用いる。近視は教室で黒板の字を見るときなど,遠方が見にくいだけなので,眼鏡を用意しておいて,必要なときだけ用いるようにしてもよい。…
※「コンタクトレンズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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