アメリカ合衆国で発展した訴訟方式の一つで,集団代表訴訟,代表当事者訴訟,集合訴訟などと訳される。クラス・アクションは,利害を共通にする多数の者の集団(クラス)のメンバーのうちの1人または数人に,メンバー全員を代表する当事者となって訴訟を追行することを許し,その結果得た判決には,その全員が,たとえ現実に訴訟に関与していなくとも,拘束されるものとして,多数人の紛争を一挙に解決することを可能とする制度である。メンバーの1人または数人がみずから名のり出て訴訟を提起することで,裁判所から,メンバーを代表して訴訟を追行する権限を認められるのが特徴である。たとえば,企業間の価格協定の結果不当に高い価格で同種の工業製品を買わされた多数の消費者が,企業に対して損害賠償を求める場合など,個々人の権利の経済的価値が小さいため(少額多数被害),個別に訴訟をするのでは採算がとれない。このような場合に,クラス・アクションは,少額の権利を多数束ねて主張することで,訴訟を実効性ある手段とするのに役立つ。そのため,消費者・個人投資家・差別された有色人種など,社会的弱者の権利救済を実質的に保障する手段として注目されてきたが,反面で,代表当事者やその代理人(弁護士)が自己の利益の追求のみに熱心になったり,それを監督する裁判所の負担が大きいことなど,種々の困難を伴うので,近年はその有用性を疑問視する意見もある。
執筆者:上原 敏夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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