日本大百科全書(ニッポニカ) 「判決」の意味・わかりやすい解説
判決
はんけつ
裁判所が裁判の結果を示す判断の一つで、決定、命令と並ぶもの。
[内田武吉・加藤哲夫]
民事訴訟における判決
裁判所が、原則として口頭弁論に基づいて、法定の方式に従った判決原本を作成し、公開の法廷で言い渡すという厳格な方法により当事者に告知する裁判をいう(民事訴訟法252条、253条、民事訴訟規則157条)。判決で裁判しなければならない事項は、通常の訴訟では、訴えや上訴の適法性、訴訟物である権利主張の当否、中間判決事項などである。そのほかに仮差押え、仮処分手続、公示催告手続において判決がなされることがある。判決は原則として口頭弁論に基づくことを必要とするから、判決する裁判所はその口頭弁論に関与した裁判官によって構成されなければならない(民事訴訟法249条1項)。ただし、口頭弁論を経ないで判決できる場合(同法78条、140条、290条、319条)がある。
判決の言渡し後、裁判長は判決原本を書記官に交付し(民事訴訟規則158条)、書記官はその正本を作成して2週間内に当事者に送達する(民事訴訟法255条1項、民事訴訟規則159条1項)。なお、判決が法令に違反したことを発見したときは、言渡し後1週間内に限り変更の判決をすることができるし(民事訴訟法256条)、判決に計算違い、誤記、その他これに類する明白な誤りがあるときは、いつでも判決の更正ができる(同法257条1項)。また、裁判所が請求の一部について判断を脱漏したときは、追加判決をすべきである(同法258条)。
[内田武吉・加藤哲夫]
種類
判決は種々な見地から分類することができる。まず、事件を当該審級において完結する終局判決と、終局判決をなす準備をし、審判を整序する目的でなされる中間判決とに区別される。終局判決には、全部判決、一部判決、追加判決などがある。訴えまたは上訴に対して、その適法性と理由具備性の判断につき、それぞれ訴訟判決と本案判決とに分けられる。本案判決は原告勝訴の場合に、その内容によって給付判決、確認判決、形成判決(創設判決)に分類される。また、その手続および主体からみた形式的分類として、裁判には、判決、決定、命令がある。それらを主体の面からみると、判決・決定は裁判所のなす裁判であり、命令は裁判長・受命裁判官・受託裁判官がその資格に基づいてなす裁判である。手続の面からみると、判決が前記のように、もっともていねいであって、より簡易な手続に基づいてなされる決定・命令と区別される。決定・命令の場合は、口頭弁論を開くかどうかは任意的であり(同法87条1項但書)、相当と認める方法で告知すれば、その効力を生ずる(同法119条)。
[内田武吉・加藤哲夫]
刑事訴訟における判決
法律の認める裁判の一種をいい、事態の重大なものは判決をもってし、これに次ぐものは決定をもってし、さらに軽微なものは、命令をもってする。判決は、特別の定めのある場合を除いては、口頭弁論に基づいてこれをしなければならない(刑事訴訟法43条1項)。また判決にはかならず理由を付さなければならない。なお、判決は判事補が1人でこれをすることはできない(同法45条)。第一審の判決に対する不服申立ての方法としては、控訴、上告がある。第一審公判の判決の種類としては、(1)管轄違いの判決、(2)公訴棄却の判決、(3)免訴の判決、(4)無罪の判決、(5)有罪の判決がある。このうち、無罪の判決は、被告事件が罪とならないとき、または被告事件について犯罪の証明がないときにこれを言い渡す(同法336条)。有罪の判決には、刑の言渡しの判決と刑の免除の判決の2種類がある。被告事件について犯罪の証明があったときは、刑を免除すべき場合を除いては、判決で刑の言渡しをしなければならない(同法333条1項)。刑の執行猶予、仮納付の裁判は、刑の言渡しと同時に、判決でこれを言い渡さなければならない。保護観察に付する場合も同様である。被告事件について犯罪の証明はあったが、刑を免除するときは、判決でその旨の言渡しをしなければならない。控訴審、上告審での原判決破棄の判決、控訴棄却の判決、上告棄却の判決、非常上告での棄却の判決、破棄の判決などもある。
[内田一郎]