事件
じけん
大岡昇平の裁判小説。1961年(昭和36)から62年にかけて『若草物語』という題名で新聞に連載され、加筆訂正のうえ77年に新潮社から刊行。補筆はその後の文庫版、全集版でも続けられている。被告は恋人の姉を殺した容疑で起訴された19歳の少年で、殺意の有無が検察と弁護側の争点となる。殺人が傷害致死もしくは過失致死になれば大幅に量刑が軽くなるからである。公判の進行につれて意外な事実が暴露され、スリルとサスペンスが効果的に盛り上がる。しかも公判手続と尋問の克明な描写に重厚な現実感がある。日本の推理小説界では空白に近い法廷小説の欠を埋める力作として評価され、78年に日本推理作家協会賞を受賞した。
[厚木 淳]
『『事件』(新潮文庫)』
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じ‐けん【事件】
〘名〙
※慶応再版英和対訳辞書(1867)「Business 事務、事、職業、事件」
※西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉初「書中各国の条に掲載せる四目は唯其一国に限る所の事件とす」 〔福恵全書‐

任部・謹僉押〕
② 意外なできごと。話題、問題となるようなできごと。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「彌次郎北八の二人りの者が馬車より落し事件(ジケン)によりて」
③ (「訴訟事件」の略) 訴訟または審判手続の対象となっている事柄。
※刑事訴訟法(明治二三年)(1890)二一二条「
予審判事又は上級裁判所より事件を移す裁判ありたるとき」
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