鳥羽(市)(読み)とば

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥羽(市)」の意味・わかりやすい解説

鳥羽(市)
とば

三重県中東部、志摩半島の北東端にある市。1954年(昭和29)鳥羽町と加茂長岡、鏡浦、桃取(ももとり)、答志(とうし)、菅島(すがしま)、神島(かみじま)の7村が合併して市制施行。市名は古名の泊浦(とまのうら)がなまったとする説もあるが、鳥羽となったのは戦国時代以降で詳細は不明。鳥羽湾に注ぐ加茂川流域と多くの離島を市域とするが、全域紀伊山地の延長の丘陵性山地で平地に乏しい。伊勢(いせ)湾口に列状に愛知県渥美(あつみ)半島に向けて並ぶ答志島、菅島、神島などはこの山地の延長である。全体が沈水地形のため海岸は典型的なリアス海岸で、鳥羽湾、生浦(おうのうら)湾、的矢(まとや)湾など大小の湾入をつくり、それぞれに漁村が立地している。中心市街の鳥羽も鳥羽湾に臨む狭い平地に発達している。国道42号、167号が通じ、JR参宮線の終点のほか、近畿日本鉄道鳥羽線、志摩線が名古屋、大阪と直結し、志摩観光の玄関口となっている。伊勢志摩スカイラインとパールロードの起点であり、海上ではフェリーが伊良湖(いらご)岬へ定期就航している。古くから熊野灘(なだ)と遠州灘の間の避難港、風待ち港として繁栄した。1569年(永禄12)には九鬼嘉隆(くきよしたか)が鳥羽城を築いて九鬼水軍の本拠とした。江戸時代は鳥羽藩城下町、また志摩第一の港であった。造船、電機の工場もあるが、主産業は観光と水産業。伊勢エビ、真珠ハマチカキ、ノリ、ワカメ養殖が盛んで、アワビ、サザエをとる海女(あま)漁業も残存する。真珠博物館、鳥羽水族館、海の博物館、イルカ島海洋遊園地など観光施設も多い。庫蔵寺(こぞうじ)本堂と鎮守堂は国の重要文化財、同寺のコツブガヤは国の天然記念物に指定されている。河内(こうち)・松尾地区に残る志摩(しま)加茂五郷の盆祭行事(火柱祭り)は国指定重要無形民俗文化財。面積107.34平方キロメートル、人口1万7525(2020)。

[伊藤達雄]

『小久保栄一著『鳥羽の歴史』(1969・三重出版商事)』『『鳥羽市史』全2冊(1991・鳥羽市)』


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