あゆ【鮎・年魚・香魚】
〘名〙
アユ科の淡水魚。北海道南部以南の河川にすみ、美味で、古来より、食用として珍重されている。体は細長く、二〇~三〇センチメートルに達する。背面は緑褐色で腹面は白い。背鰭
(せびれ)の後方に小さな
脂鰭(あぶらびれ)があり、
鰓蓋(えらぶた)の後方に黄色斑がある。
うろこはきわめて小さい。秋、川を下って中流域の砂利底に卵を産む。
稚魚はいったん海へ下り、
早春に全長四~七センチメートルに成長して再び川をさかのぼる。ふつう寿命は一年で、
海中では
プランクトンを、川へ入ってからは主として付着藻類を食べる。
鵜飼い、友釣り、どぶ釣りなど、日本独特の
漁法がある。あい。《季・夏》
※
書紀(720)天智一〇年一二月・歌謡「み吉野の 吉野
(えしの)の
阿喩(アユ)」
※
万葉(8C後)五・八五五「
松浦川川の瀬光り阿由
(アユ)釣ると立たせる妹が裳の裾ぬれぬ」
[語誌](1)「年魚」の字は、一年で生を終えることによる。また、「鮎」は、
神功皇后がこの魚を釣って征韓の勝敗を占ったこと(書紀・
肥前風土記など)から、占と魚とを合わせた
国字(中国では「鮎」は
ナマズの意)。
(2)「
万葉集」では、
初夏の
景物として
若鮎(わかゆ)・年魚子
(あゆこ)が好んで歌われた。奈良県の
吉野川は
古代の名
産地。
肥前(佐賀県)松浦
(まつら)の鮎は、(1)の神功皇后の伝説と結びつくことで知られる。
諸国の
風土記や
延喜式の記事から産地は全国に広くおよんでいたことがわかる。調理保存の方法もさまざまであった。
(3)秋冬の稚魚は
氷魚(ひお)と呼ばれ、俳諧の季語としても好んで用いられている。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報