デジタル大辞泉
「障」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
さわり さはり【障】
〘名〙 (動詞「さわる(障)」の連用形の名詞化)
① 妨げること。じゃますること。妨げ。
※万葉(8C後)一一・二七四五「湊(みなと)入りの葦別け小舟障(さはり)多み吾が思ふ君に会はぬ頃かも」
② さしさわること。都合が悪くなること。さしつかえ。支障。障害。
※万葉(8C後)一五・三五八三「
真幸(まさき)くて妹が斎
(いは)はば沖つ波千重に立つとも佐波里
(サハリ)あらめやも」
③ さとり、または
極楽往生の妨げとなる
煩悩や罪。悪いむくいを招くような行ない。罪障
(ざいしょう)。
※不空羂索神呪心経寛徳二年点(1045)「謗法等の障(サハリ)咸く除滅することを得てむ」
※風姿花伝(1400‐02頃)四「天下少しさはりありし時」
⑤ 欠陥。欠点。
きず。特に、身体上の障害。また、
外気に感じて病気になること。やまい。
※
浮世草子・色里三所世帯(1688)上「そうじて人の
はだへはさはり有て昼中には見ぐるしか
りきに」
⑥
月経。つきやく。月のさわり。月のもの。さわりのもの。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※浮世草子・
好色一代女(1686)四「さはりある女は此座敷出べき事にあらず」
⑦ めあての
遊女にすでに
先客があるなどして会えないこと。
※
洒落本・史林残花(1730)
芸文志「妓不
レ得
二相逢
一曰
レ障
(サハリ)」
さわ・る さはる【障】
〘自ラ五(四)〙
① 妨げとなる。じゃまになる。さえぎられる。
※
書紀(720)崇神一二年三月(北野本南北朝期訓)「
宗廟(くにいえ)を保つこと獲たれども明
(ひかり)も蔽
(サハル)所有り、徳
(いきをひ)も綏いこと能はず」
② さしつかえる。支障をきたす。都合が悪くなる。
※書紀(720)天武一三年閏四月(北野本南北朝期訓)「其れ馬有らむ者をば、
騎士(むまのりひと)とせよ。馬無からむ者をば歩卒
(かちひと)とせよ。並に当に試練
(ととの)へて、聚り会ふに障
(サワル)こと勿れ」
③ 健康がすぐれなくなる。病気になる。また、体、健康に害があったり、平常心を保つじゃまになったりする。また、月経になることもいう。
※大和(947‐957頃)五三「おなじ院にありける女、さはることありとてあはざりければ」
④ はばかり慎む。遠慮する。また、
気持の上でひっかかる。こだわる。
※
太平記(14C後)二九「さては此の軍墓々しからじと、気に障
(サワ)りて思ける処に」
⑤ 遊女を呼んだときに、すでに他の客がついている。
※洒落本・
遊子方言(1770)
発端「『なぜ人をよこしなんせんへ』『あいさどふで、さはってお出なん事を、ぞんじておりんすから』」
[
補注]他動詞「障
(さ)う」(障える)に対する
自動詞。
さ・ゆ【障】
〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の動詞「さふ(さう)」から転じて、室町時代頃から用いられた語。
多くの場合、
終止形は「さゆる」の形をとる)
※
日葡辞書(1603‐04)「Saye, uru, eta
(サユル)」
※幸若・和田宴(室町末‐近世初)「爰をばひたすら自にゆるさせ給へと、さゆる体にもてなし」
② 引き止める。
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)中「まづ言訳を御聞とたってさゆれば」
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「キニ sayete(サエテ)」
さや・る【障】
〘自ラ四〙
① 行手(ゆくて)をさえぎられる。さまたげられる。また、網、わななどにかかる。
※古事記(712)中・歌謡「鴫は佐夜良(サヤラ)ず いすくはし くぢら佐夜流(サヤル)」
② 立ちふさがる。さしつかえる。
※万葉(8C後)五・八七〇「百日(ももか)しも行かぬ松浦路今日行きて明日は来なむを何か佐夜礼(サヤレ)る」
さ・う さふ【障】
[1] 〘自ハ下二〙
① ひっかかる。つかえる。
※枕(10C終)九七「刺櫛(さしぐし)すりて磨く程に、ものにつきさへて折りたる心地」
② 気にさわる。感情を害す。
※浄瑠璃・一谷嫰軍記(1751)一「天下の為の謀御心にさへ給ふなと、忿をなだむる頓智の詞」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
障
しょう
āvaraṇa
仏教用語。悟りを得ることを障害するもの。また,煩悩の異名。2,3,4種などに分類されるが,煩悩障と所知障の二種障が代表的である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報