間狂言(読み)アイキョウゲン

デジタル大辞泉 「間狂言」の意味・読み・例文・類語

あい‐きょうげん〔あひキヤウゲン〕【間狂言】

1曲を演じる場合、狂言方が加わって受け持つ部分。また、その役柄語りあい会釈間あしらいあいなどがある。能間のうあいあい。間の狂言
あいの狂言2」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「間狂言」の意味・読み・例文・類語

あい‐の‐きょうげん あひのキャウゲン【間狂言】

〘名〙
※竹沢先生と云ふ人(1924‐25)〈長与善郎〉竹沢先生とその兄弟「合(アヒ)の狂言の後に更に『熊坂』と云ふのを見て」
竹豊故事(1756)下「京大坂の芝居に野呂間麁呂間麁呂七麦間等と名を付道外たる詞色をなし、浄るり段物の間の狂言をなしたり」
歌舞伎で、陰暦一一月上演の顔見世狂言と、翌年正月の二の替わりとの間に興行される狂言。
洒落本・廓宇久為寿(1818)前「一寸(ちょっと)、あひの狂言(キャウゲン)に、忠さんお盃」

あい‐きょうげん あひキャウゲン【間狂言】

〘名〙
① 能一曲を演ずる場合、狂言方が受け持つ部分。前シテ中入りの間に、狂言師主題について説明する「語間(かたりあい)(しゃべり間)」と、一曲の中で劇を構成する人物として一つの軽い役を受け持つ「あしらい間(あい)」とに大別される。あいのきょうげん。あい。
※わらんべ草(1660)五「惣じて、間狂言によらず、一番一番に、少づつにても習(ならひ)なき事はなし」
人形浄瑠璃、歌舞伎などで、一つの演目中または二つの演目の中間に演ぜられる狂言、または喜劇的な寸劇。あいのきょうげん。
評判記・野良立役舞台大鏡(1687)服部次郎右衛門「六郎右衛門殿と申てちんさいと相狂言(アイキャウケン)

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改訂新版 世界大百科事典 「間狂言」の意味・わかりやすい解説

間狂言 (あいのきょうげん)

(1)能では,シテの中入のあと狂言方が出て演じる部分をいうが,能のアイ(間狂言)のみならず近世初頭の諸芸能では,たて物の芸能の間々に,種々の雑芸が併せて演じられた。それを〈アイの狂言〉または〈アイの物〉と呼ぶ。歌舞伎踊や浄瑠璃操り,幸若舞放下ほうか),蜘(くも)舞などの諸芸能の間でも,それぞれ間狂言がはさまれ,物真似(ものまね)狂言,歌謡,軽業,少年の歌舞などが演じられた。なかでも一番多く演じられたものが物真似狂言であり,演者は歌舞伎の座に主に所属する狂言方,後に明暦・万治頃から道化と呼ばれた人たちである。三国(みくに)彦作,けんさい,奴作兵衛(やつこさくひようえ),坂東又九郎らは初期の道化として名高い。また,それら有名な道外方(どうけがた)の,顔を模した道化人形も多く作られ,人形による上演も多かった。各種物真似の独芸,狂言をもどいた寸劇や新作のせりふ劇,その他歌謡,万歳,石引きや木遣りなどの芸能がその主な演目であった。(2)能取物あるいは能様式にのっとった舞踊劇では,能のアイと同様に,前後段のつなぎ役として軽い話術を演じる場合もある。それを〈間狂言(あいきようげん)〉という。《連獅子》の宗論や《鏡獅子》の胡蝶,《紅葉狩》の山神がそれに当たる。
アイ →野呂間
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「間狂言」の意味・わかりやすい解説

間狂言
あいきょうげん

能のなかで狂言方が担当する部分。その役をアイという。「語リ間(かたりあい)」「アシライ間(あい)」「劇間(げきあい)」に大別できる。語リ間のうちもっとも多いのが、シテの中入リの間に所の者などとして出、ワキの要請に応じ座って一曲の主題や関連する話題を語る「居語(いがた)リ」である。これに対し末社の神(まっしゃのしん)などが立ったまま社寺の縁起などを語るのを「立語(たちがた)リ」といい、変事の急を告げる「早打チ間(はやうちあい)」やアイの語リによって能が始まる「口開ケ間(くちあけあい)」も立語リに含まれる。アシライ間はシテやワキなどと演技的交渉の深いものである。劇間は複数のアイが出て、能の他の役とはかかわりをもたず、アイ同士が能のなかで演ずる寸劇をいう。また常と異なる特殊演出は「替間(かえあい)」とよぶ。アイはほとんどが所の者、太刀持(たちもち)、能力(のうりき)、末社の神など身分の低い役であるが、能の一役として曲の雰囲気を左右するので軽視できない。なお、能の現行曲約240番のうち40番ほどの曲には間狂言がない。

[小林 責]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「間狂言」の意味・わかりやすい解説

間狂言
あいきょうげん

(1) 能のなかで狂言方が担当する役およびその演技。能間,また間 (あい) ともいう。最も代表的なものは一曲の能の前半が終って,中入りの間に演じる。多くは所の者として登場し,曲の内容を語る語間 (かたりあい) で,居語 (いがたり) は舞台の中央にすわってワキを相手に故事を語り,立語 (たちがたり。立シャベリ,シャベリともいう) は常座 (じょうざ) に立ったまま曲の経過を物語り,伝令役の早打 (はやうち) 間と,末社 (まっしゃ) の神として出る末社間とがある。またシテ,ワキとともに演じる会釈 (アシライ ) 間がある。間狂言だけを独立した狂言として演じるものもある。
(2) 歌舞伎や人形浄瑠璃で,幕の間に演じられる軽い出し物のことをいう。

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とっさの日本語便利帳 「間狂言」の解説

間狂言

能の曲の中に狂言が入ること。普通は同じ舞台で交互に演じられる。

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世界大百科事典(旧版)内の間狂言の言及

【アイ(間)】より

…能一番のなかで狂言方の担当する役とその演技。間狂言(あいきようげん)とも,能間ともいう。もっとも一般的なかたちは,二場物の能で前ジテの退場後,後ジテの登場までのあいだをつなぐ役で,これに4種ある。…

【間狂言】より

…(1)能では,シテの中入のあと狂言方が出て演じる部分をいうが,能のアイ(間狂言)のみならず近世初頭の諸芸能では,たて物の芸能の間々に,種々の雑芸が併せて演じられた。それを〈アイの狂言〉または〈アイの物〉と呼ぶ。…

※「間狂言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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