金融機能強化法(読み)キンユウキノウキョウカホウ

デジタル大辞泉 「金融機能強化法」の意味・読み・例文・類語

きんゆうきのうきょうか‐ほう〔キンユウキノウキヤウクワハフ〕【金融機能強化法】

《「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」の略称金融システム安定化のため、地方銀行信用金庫信用組合などの地域金融機関に対して公的資金を注入できるよう枠組みを定めた法律。平成20年(2008)3月末までの時限立法として、平成16年(2004)8月に成立。2兆円の政府保証枠が設定されたが、経営強化計画を達成できない場合は経営責任を厳しく問われることなどから敬遠され、適用は2件にとどまった。
[補説]平成20年(2008)12月、米国サブプライムローン問題に端を発する金融危機に対応するため一部改正され、公的資金の注入要件を大幅に緩和し、政府保証枠が12兆円に拡大された。平成23年(2011)7月、東日本大震災の被災者・被災企業に十分な資金を供給するため、被災地の金融機関が公的資金を導入しやすくする特例が設けられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金融機能強化法」の意味・わかりやすい解説

金融機能強化法
きんゆうきのうきょうかほう

国が予防的に金融機関に公的資金を投入できるよう定めた法律。正式名称は「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」。平成16年法律第128号。おもに地域金融機関を対象に、経済・金融情勢の急変時に、貸し渋りや金融システム不安が広がるのを防ぐ目的で、公的資金投入によって中小零細企業の経営や地域経済を維持・活性化するねらいがある。もともと2005年(平成17)4月のペイオフ完全解禁をにらみ、2004年8月にできた時限立法であった(2008年3月末で期限切れ、失効はせず)。しかしリーマン・ショック、東日本大震災、アベノミクスによる超低金利の定着新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行など金融機関を取り巻く環境が激変するたびに、改正・期限延長を繰り返し、2020年(令和2)改正で2026年3月末まで延期された。当初2兆円であった公的資金枠を15兆円に広げ、銀行のほか信用金庫、信用組合、農協農業協同組合)などの中央組織に資本注入することで中小金融機関の支援も可能となった。経営責任の追及再編、収益目標の策定、15年以内の返済などが投入の条件であったが、徐々に緩和。東日本大震災の際には被災地金融機関に限って、経営責任の明確化、収益目標の策定を求めず、再編を条件に返済免除を認める特例を設けた。新型コロナウイルス感染症の流行後の改正(2020年)では、特例を全国の金融機関に適用し、経営責任の明確化や収益目標の策定を不要とし、返済期限も撤廃した。2020年3月末までに、延べ37金融機関に6840億円の公的資金を投じた。

 銀行などの破綻(はたん)が金融システム不安につながらないよう、預金保険法が金融機関への資本注入を規定しているが、破綻前に予防的に資本注入する金融機能強化法は「第二の預金保険法」の意味を有している。預金保険法が定めた危機対応時と異なり、内閣総理大臣や関係閣僚らで構成する金融危機対応会議を開く必要もなく、機動的に投入できる。ただ当初、公的資金の申請条件に、経営責任追及や再編などが含まれていたため、申請した金融機関は紀陽(きよう)ホールディングス(和歌山県)と豊和(ほうわ)銀行(大分県)の2行にとどまった。その後、リーマン・ショックや東日本大震災の際に改正を重ね、責任追及、再編、返済条件などを緩めて申請しやすくした。金融機関の優先株だけでなく、劣後ローンや普通株などを国が取得することで公的資金の投入を可能とし、金融機関の使い勝手をよくした。

[矢野 武 2020年10月16日]

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