過保護(読み)カホゴ

デジタル大辞泉 「過保護」の意味・読み・例文・類語

か‐ほご〔クワ‐〕【過保護】

[名・形動]子供などに必要以上の保護を与えること。また、そのようにされること。また、そのさま。「過保護に育てられる」「過保護な親」
[類語]温室育ちおんば日傘

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精選版 日本国語大辞典 「過保護」の意味・読み・例文・類語

か‐ほご クヮ‥【過保護】

〘名〙 (形動) 子どもなどを必要以上に大切にすること。また、そのさま。
恍惚の人(1972)〈有吉佐和子〉一「いわば姑の過保護から、少年のときの我儘を年をとっても持ち続けてきた舅なのである」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「過保護」の意味・わかりやすい解説

過保護
かほご

親(養育者)が過度の配慮干渉を子供に対して与える養育関係の型。現実の親子関係は多様であるが、これをいくつかの型に分類しようとする研究がさまざまに行われてきた。比較的有力なものの一つは、親子の優位関係を定める軸として支配服従を、愛情関係の軸として受容拒否を置く。この二つの次元を組み合わせると、支配的―受容的、支配的―拒否的、服従的―受容的、服従的―拒否的という四つの類型ができる。第一が普通にいう過保護型、第二が専制(残酷)型、第三が溺愛(できあい)型、第四が放任(無関心)型におよそ対応していると考えられる。これらのどれにも偏らない原点の位置が、理想型とみられよう。溺愛と過保護は混同されやすく、また実際の親子関係では両者が入り混じったり、状況によって交代したりすることも多いから、これらの型は明確に分かれるものではなく、むしろ比重の置き方の違いと考えたほうがよいが、こう分けると両者の違いがはっきりする。たとえば、過保護型では、子供は依存的―服従的であるが、自発性や積極性に乏しい。一方、溺愛型では攻撃的―反抗的である反面、過度の積極性や自信過剰がみられる。しかし、両者とも根底には親の受容度が高すぎるという共通点をもち、親や権威者後ろ盾を失ってしまうと自律性を保ちにくくなるという共通難点がある。この難点は成長過程で修正されうるが、成人後の人格にもなにほどかは引き続くことが多い。

[藤永 保]

『東京都総務局青少年対策部計画課編・刊『東京都青少年問題調査報告書』(1972)』『和田修二著『教育時代の喪失と希望』(1993・玉川大学出版部)』『依田明編著『少子化時代の子どもたち――望ましい家庭教育を探る』(1997・ブレーン出版)』『佐々木正美著、杉浦正明編『過保護のススメ』(2002・小学館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「過保護」の意味・わかりやすい解説

過保護 (かほご)

一般に,子どもが自力でできることまで,親が世話をし指図しようとする養育態度を指す。ひとりっ子,おばあちゃん子,体の弱い子などの場合に多く,依頼心の強い,神経質な,集団生活に不適応な性格が作られやすい。こうした特定条件下における過保護とは別に,日本では1950年代後半ころより社会現象としての過保護が問題になっている。これは第2次世界大戦後の核家族化による母子密着,子ども数の減少,主婦の余暇時間の増加,進学率の上昇などの要因により,母の子に対する支配が強まった状況を指し,独立心の弱い,依存的で無責任な性格を作りやすい。アメリカの心理学者サイモンズP.M.Symondsは,親の子に対する態度を,支配的か服従的か,拒否的か保護的かという二つの軸によって示し,過度の支配的・保護的態度をオーバー・プロテクションover protectionとした(1939)。しかし日本での過保護は,子を支配する面と同時に,子の要求に従う服従的な面をもつ場合が多く,溺愛とも共通する。日本には,江戸時代以前から,家父長的な〈家〉制度があり,嫁は母となって家の中での地位が安定するという関係から,母が子に依存し手をかけすぎるという傾向があった。とくに男子は家の後継者として祖母,母などにたいせつにされ甘やかされることが多かった。〈三分の飢えと寒〉〈玉とそだてて後に勘当〉〈姑息(こそく)の愛〉など,当時これを批判したことわざも多い。現代の過保護もまた,伝統的な母子密着を基礎にしているが,労働の場における父親の多忙,父権の喪失による父親の不在,母親が自分自身として社会的に認められないなど,労働問題,家族問題,婦人問題に起因する面が強い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過保護」の意味・わかりやすい解説

過保護
かほご

保護過剰」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の過保護の言及

【家族】より

…小核家族化の時代ほど,社会福祉の充実,そして社会連帯の精神に立脚したボランティア活動が望まれるのである。 日本の家族は,母子関係に鮮明に現れるように,甘え甘えられる情緒的相互依存が特徴といわれ,これが個人の自立を阻害し依存的パーソナリティを養うと批判されてきた(過保護)。しかし,アメリカの家族のように自立的個人の結合である場合とは違った,粘り強い凝集力をもつことになる。…

【ひとりっ子】より

…経験的,臨床的に記述されたひとりっ子の特性は,依頼心の強さ,神経質,身体虚弱,食欲不振,社交性欠如,わがまま,子どもらしさの欠如,早熟などがある。その原因としては,第1に,家族内の子ども同士の関係である兄弟姉妹がないことにより,子ども同士の関係のなかできたえられる社会性に不十分で,未熟な面がもたらされることと,第2には,子どもをひとりしかもたない親が,子どもを失うことを恐れて,過保護な育児態度に陥りやすいことがあげられる。前者については,子どもは他の子どもとの関係のなかで,相互に模倣しあってさまざまな能力を身につけ,要求のぶつかりあいによるけんかを通じて自己主張や妥協や規則を守ることの必要性を知り,競争することによって相手に負けまいと努力する態度が養われ,ひとりではできないことを協力してなし遂げる喜びを体験し,思いやりの気持ちが育てられるわけであるが,ひとりっ子はそのような経験をもつことができないために,それらの面での未熟さが残るといわれる。…

※「過保護」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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