日本大百科全書(ニッポニカ) 「蔵原伸二郎」の意味・わかりやすい解説
蔵原伸二郎
くらはらしんじろう
(1899―1965)
詩人。熊本県阿蘇(あそ)郡黒川村の生まれ。本名惟賢(これかた)。家は阿蘇神社の直系。評論家蔵原惟人(これひと)とは従兄弟(いとこ)。慶応義塾大学仏文科に学んだ。『葡萄園(ぶどうえん)』『三田文学』に詩を発表。また萩原朔太郎(はぎわらさくたろう)の『青猫』に感銘、その影響を受ける。のち『コギト』『四季』に拠(よ)る。1939年(昭和14)処女詩集『東洋の満月』を出版。詩は原始への郷愁を歌って男性的。晩年はしだいに存在への凝視を深めて寂寥(せきりょう)感を加えた。詩集に『天日の子ら』(1944)、『岩魚(いわな)』(1964)など。詩論書に『東洋の詩魂』(1956)、短編集に『目白師』(1939)、随筆集に『風物記』(1940)などがある。
[安藤靖彦]
『『蔵原伸二郎選集』全1巻(1968・大和書房)』