横座(読み)よこざ

精選版 日本国語大辞典 「横座」の意味・読み・例文・類語

よこ‐ざ【横座】

[1] 〘名〙
① 畳、敷物などを横ざまに敷いてある正座(しょうざ)上席
※宇津保(970‐999頃)吹上下「四人召されて、よこざにつきぬ」
※浄瑠璃・冥途の飛脚(1711頃)中「越後屋に走りつき内をのぞけば八右衛門よこ座を占めて我評判」
横手座席。横側にある座席。隣座。
※義経記(室町中か)四「土佐が居たるよこ座にむずと鎧の草摺を居かけて」
囲炉裏の奥正面家長のすわる席。この席だけ囲炉裏に沿って横長に敷物が敷いてあるところからいう。
※雑俳・福寿草(1747)「髭ぬいて横座一国亭主領」
④ (勘定奉行横目につけて置く役であるところからいう) 勘定吟味役の異称
[2] 狂言。各流。牛を拾った男が牛を引いていると持主の博労(ばくろう)と出会う。博労は、この牛は自分が座敷の横座(上座)に置いて育てた横座という名の牛であり、返してくれるように頼み、横座の故事などを牛に語って呼びかけ、牛も返事をしてついに取り返す。
[語誌]((一)③について) (1)全国的にみれば、土間(上がり口)から見て炉端の最も奥に位置する、家長の座を指すのが一般的である。
(2)客座や女房座を「横座」と称する地方も点在するが、これは最も奥の家長の座から見て横手の座との語源解釈が働いた結果であり、新しい呼称と考えられる。

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デジタル大辞泉 「横座」の意味・読み・例文・類語

よこ‐ざ【横座】

畳や敷物を横に敷いて設けた正面の席。上座。
いろりの奥の正面で、一家主人がすわる席。亭主座。
横手の座席。「火鉢横座に座る」
勘定奉行の横目につけておくところから》勘定吟味役かんじょうぎんみやくの異称。

よこざ【横座】[狂言]

狂言。二人の男が横座という牛の所有権を争うが、名づけ親の男が牛に故事などを語りきかせて名を呼び、牛に返事をさせて取り戻す。

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改訂新版 世界大百科事典 「横座」の意味・わかりやすい解説

横座 (よこざ)

イロリ(囲炉裏)の座の呼称。イロリには家族の成員の座る位置が定められていた。土間からみて奥の部分を横座といい,家の主人が座った。席の秩序を守ることは古くから重視され,家長の席はとくに尊ばれた。横座は,その家の本家の主人や僧侶などの特別な人以外は,客といえども座ることは避けられた。
囲炉裏
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「横座」の意味・わかりやすい解説

横座
よこざ

炉のある台所や居間をさす地方もあるが、全国的に共通するのはいろり端での家の主人の座席をさす名称。所によっては亭主席(四国)、奥座(近畿)、上座(かみざ)(新潟県)などともよぶ。その位置は、土間からみていちばん奥、正面の席である。古来、正座(せいざ)には敷物を横ざまに敷くのが習わしであるが、横座の名称はここに敷く敷物を横広げに敷いたことにちなむのであろう。今日、床の間の前の畳は横に敷くのも同じいわれによる。全国各地に「横座に座るは猫か馬鹿(ばか)」という類の諺(ことわざ)が伝えられており、これはたとえ主人が不在でも横座には他人は座ってはならないという諺で、横座はいわば戸主権の象徴であるといえよう。

[野口武徳]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「横座」の意味・わかりやすい解説

横座
よこざ

いろり端の主人の席のことで,土間から見て奥の正面にある。茣蓙 (ござ) または畳を横に敷くところからこの呼称があり,亭主座,だんな座敷,親座敷など,地方によっては異なる呼び名もある。戸主権の象徴とされる席で,主人が不在のときも他の者はこの席にすわらず,また横座を譲ることは隠居を意味する。

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世界大百科事典(旧版)内の横座の言及

【居間】より

…住宅で家族が共通して,くつろいだり,だんらんのために使う部屋。〈居間〉という言葉は,江戸時代以前には主として主人あるいは夫人の居室を指し,それが近代以降西欧住宅のリビングルームに対応する概念となり,第2次世界大戦後の住生活の変化の中で定着した。歴史的にみると,日本の住宅には常に現在の居間と同じ機能を果たす空間があった。アイヌの住宅の内部は1室だけで,アペオイと呼ばれる炉の周囲で家族の座る席が決まっている。…

【いろり(囲炉裏)】より

…照明機能としては,竪穴住居時代には,獣などの来襲を防ぐ役割を果たしていたと考えられるが,夜なべ仕事としてのわら細工の一部はイロリの明りでもおこなえた。家族の成員の位置づけとして,イロリには座の呼称があり,土間から見て奥の部分が横座で,家の主人が座った。横座に向かって右が嬶座(かかざ)で主婦が座り,嬶座の向いが客座であった。…

【上座】より

…イロリでは,土間から見て正面の席を上座とする。この座を横座と呼び,家の主人のみがすわる所とするのが全国的である。〈横座にすわるは猫・馬鹿・火吹竹〉などといい,主人不在の場合も他の者は横座にすわらなかった。…

【住居】より


【総説】
 住居の類語としては,すぐに住宅・住いがあげられる。住宅と住居を比べると,住宅のほうが人間のすみかとしての建物の側面を強く含意する。住い(すまひ)は〈すまふ〉の連用形の名詞化であり,当て字として〈住居〉を用いることがある。つまり住居と住いは一応同義ととらえてよいし,そこには住むという人間の能動的な営み,すなわち人の暮しが浮き出されている。《日本大辞書》(山田美妙著,1892‐93)によると,〈すむ〉には(1)居所を定める〈住む〉,(2)濁りがなくなる〈澄む(あるいは清む)〉,(3)事終わってすべて澄むの〈済む〉があてられており,《岩波古語辞典》では〈すみ(棲み・住み)〉は〈スミ(澄)〉と同根であり,あちこち動きまわるものが,一つ所に落ち着き定着する意とある。…

※「横座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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