日高山脈襟裳国定公園(読み)ひだかさんみゃくえりもこくていこうえん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日高山脈襟裳国定公園」の意味・わかりやすい解説

日高山脈襟裳国定公園
ひだかさんみゃくえりもこくていこうえん

北海道中南部にある国定公園。1981年(昭和56)指定。日高山脈に沿い南北約100キロメートル、東西約12キロメートルに及び、総面積1034.47平方キロメートルは国定公園としてはわが国最大。公園の特徴は氷食地形と海食崖(がい)の海岸景観である。北端の標高2000メートル前後の幌尻(ぽろしり)岳、戸蔦別(とつたべつ)岳のカール地形は日高山脈に氷期のあったことを示し、ここにすむナキウサギは氷期の遺存種として有名である。南の海岸近くのアポイ岳は標高800メートル余ながら高山植物の宝庫として知られ、南端の襟裳岬(えりもみさき)は海食段丘と海食崖が発達し、先端は海食台が太平洋に延び豪快な景観を呈する。アポイ岳の特別保護地区をはじめ、第1種特別地域など開発を厳しく制限した範囲は全域の68.5%を占め、全国立・国定公園中でもっとも自然の豊かな公園といえよう。観光客は夏季交通の便のよい、霧笛で知られる襟裳岬に集中する。

[柏村一郎]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日高山脈襟裳国定公園」の意味・わかりやすい解説

日高山脈襟裳国定公園
ひだかさんみゃくえりもこくていこうえん

北海道南部,日高山脈脊梁部と,広尾町から襟裳岬までの海岸線,および様似町南東部のアポイ岳一帯の三つの区域からなる日本最大の国定公園。面積 1034.47km2。1950年指定の襟裳道立自然公園と日高山脈を合わせて 1981年に指定。日高山脈は氷河期の名残りを示す圏谷(カール)が分布し,天然記念物のダイセツタカネヒカゲ(→タカネヒカゲ),カラフトルリシジミなどの希少な昆虫やヒグマ生息地として知られる。広尾町から襟裳岬にかけては高さ約 60mの急峻な斜面をもつ海食崖が広がり,また岬の先端からは約 1.5kmにわたって岩礁が連なる。この地域は夏に濃霧が発生しやすいうえ風も強く,航行難所となっている。アポイ岳では 80種以上の豊富かつ希少な高山植物が群生する。

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百科事典マイペディア 「日高山脈襟裳国定公園」の意味・わかりやすい解説

日高山脈襟裳国定公園【ひだかさんみゃくえりもこくていこうえん】

北海道中南部,日高山脈から襟裳岬にいたる一帯を含む国定公園。面積1034.47km2。1981年指定。日高造山運動で形成された急峻な幌尻岳(ぽろしりだけ),神威(かむい)岳,ペテガリ岳などの山容,カール地形,広大なミズナラ・エゾイタヤなどの混交林,エゾマツ・トドマツなどの針葉樹林,アポイ岳のヒダカソウなどの高山植物群落,ヒグマ,エゾシカをはじめとする動物,襟裳岬の海食崖や岩礁,アザラシ繁殖地などが主要な景観。

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精選版 日本国語大辞典 「日高山脈襟裳国定公園」の意味・読み・例文・類語

ひだかさんみゃくえりも‐こくていこうえん ‥コクテイコウヱン【日高山脈襟裳国定公園】

北海道中南部にある国定公園。日高山脈の氷食地形と襟裳岬の海食崖を中心とする。日高山脈にはヒグマ、エゾシカのほか、氷期の遺存種ナキウサギなどが生息。昭和五六年(一九八一)指定。

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デジタル大辞泉 「日高山脈襟裳国定公園」の意味・読み・例文・類語

ひだかさんみゃくえりも‐こくていこうえん〔‐コクテイコウヱン〕【日高山脈襟裳国定公園】

北海道の日高山脈襟裳岬などの海岸からなる国定公園。広大な森林氷食地形や海食がい特色とする。

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世界大百科事典内の日高山脈襟裳国定公園の言及

【えりも[町]】より

…また肉用牛,乳用牛,軽種馬が飼養される。町域の大部分は81年日高山脈襟裳国定公園に指定され,雄大な景観をもつ襟裳岬を訪れる観光客が多い。東海岸の庶野から広尾に至る国道30km余の区間は黄金道路と呼ばれ,1935年の完成までに多額の工費を要したためこの名がある。…

【襟裳岬】より

…東岸のえりも岬漁港に続く15kmの海岸は百人浜と呼ばれ,南部藩御用船が難破し,100余人がこの浜に打ちあげられたことからこの名があると伝えられ,遭難者供養のための一石一字塔がある。岬および周辺地域は1981年日高山脈襟裳国定公園に指定され,観光客が多い。【岡本 次郎】。…

※「日高山脈襟裳国定公園」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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