カール(英語表記)Karl

精選版 日本国語大辞典 「カール」の意味・読み・例文・類語

カール

(Karl)
[一] (五世) 神聖ローマ帝国皇帝(在位一五一九‐五六)。スペイン国王としては、カルロス一世(在位一五一六‐五六)という。宗教改革に反対したが、一五五五年、アウグスブルクの宗教和議で新教(ルター派)を公認した。(一五〇〇‐五八
[二] (一二世) スウェーデン国王(在位一六九七‐一七一八)。北方戦争を起こし、ナルバの戦いで勝利をおさめウクライナに向かったが、ポルタバの戦いでロシア軍に大敗した。(一六八二‐一七一八

カール

〘名〙 (curl) 髪の毛が巻き毛になること。髪の毛を巻くこと。また、その髪。〔外来語辞典(1914)〕
※アパアトの女たちと僕と(1928)〈龍胆寺雄〉八「僕は〈略〉捲毛(カアル)の消えかけた彼女のおかッぱへ斜に頤を載せた」

カール

〘名〙 (Kar) 氷河地形の一つ。山の頂上近くが氷河にけずられてできた、半欠けの椀(わん)状のくぼみ。圏谷(けんこく)

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デジタル大辞泉 「カール」の意味・読み・例文・類語

カール(Karl)

(1世)[742~814]フランク王。小ピピンの子。ゲルマン民族を統合し、西欧をほぼ統一。法制を整備して中央集権国家をつくり、800年、教皇から西ローマ帝国皇帝を戴冠。学術文化を奨励、その成果はカロリング‐ルネサンスとよばれた。カール大帝。シャルルマーニュ大帝。
(4世)[1316~1378]神聖ローマ帝国皇帝。ボヘミア王。ボヘミア王ヨハンの子。金印勅書を発布して皇帝選挙の手続きを確定。アビニョン捕囚中の教皇のローマ帰還を実現した。プラハ大学の創立者。
(5世)[1500~1558]神聖ローマ帝国皇帝。スペイン王としてはカルロス1世。生涯、内外の反乱の処理に終始。宗教改革に反対してルター派を弾圧、新教諸侯と争ったが、アウグスブルクの和議で、信教の自由を承認。
(12世)[1682~1718]スウェーデン王。列強のスウェーデン分割に対抗、北方戦争を起こしたが、ポルタバの戦いで敗北。

カール(〈ドイツ〉Kar)

氷河の浸食によって、山頂直下の斜面が、すくい取ったように円形に削られた地形。日本では飛騨赤石日高山脈などにみられる。圏谷けんこく

カール(curl)

[名](スル)
髪の毛を巻いた状態にすること。また、その髪。巻き毛。「内巻きにカールさせる」「ピンカール
曲げること。ねじること。

カール(Eric Carle)

[1929~2021]米国の絵本作家。色紙を切り張りするコラージュの手法を用いて、動物や昆虫などを描いた作品を数多く残した。作「はらぺこあおむし」「パパ、お月さまとって!」など。

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百科事典マイペディア 「カール」の意味・わかりやすい解説

カール

圏谷とも。山稜の直下に発達した氷河による氷食で作られた半球形の窪地(くぼち)地形。背後に半環状の急峻(きゅうしゅん)な(ときに垂直な)圏谷壁をもち,圏谷底はゆるやかな盆状の凹地となり,前面出口には末端堆石堤(堆石)が作られる。氷河が消滅したあとの深くえぐられた圏谷底には湖水をたたえることがある。雪食によっても小規模な圏谷ができる。飛騨山脈木曾山脈赤石山脈日高山脈にみられる圏谷群は山脈のおもに東側(風下側)に分布し,第四紀のウルム氷期に形成された。
→関連項目間ノ岳鹿島槍ヶ岳黒部五郎岳駒ヶ岳(長野)仙丈ヶ岳農鳥岳氷河遺跡氷河地形ペテガリ岳幌尻岳薬師岳

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改訂新版 世界大百科事典 「カール」の意味・わかりやすい解説

カール
Kar[ドイツ]

山岳氷河浸食作用によって形成された氷河地形の一種。谷氷河によってつくられた氷食谷(U字谷)の谷頭部に位置し,圏谷(けんこく)とも呼ばれる。山頂あるいは稜線との間は急な圏谷壁となっており,この谷壁で馬蹄形に囲まれるようにして,比較的平らな圏谷底がみられる。形態が円形競技場(ラテン語circus)に似ており,英・仏語ではcirqueという。圏谷が背中合せとなる稜線はぎざぎざなやせ尾根(ナイフ・リッジ)となり,グラートGrat,アレートarêteなどと呼ばれる。三つ以上の圏谷に囲まれた山頂は角錐形となり,ホルンと呼ばれる。圏谷底は周囲の圏谷壁からの崖錐に埋められやすいが,逆傾斜をするように深く圏谷底が削られた場合には圏谷湖が見られることもある。

 この地形は主として最終氷期(6万~1.4万年前)の氷河拡大期に形成されたが,現在でも氷河氷が残っているものもある。これを圏谷氷河という。圏谷底はほぼ雪線の高さに形成されるので,圏谷が形成された当時(最終氷期)の雪線の高さを復元することができる。これを現在の氷河の雪線の高さと比較してみると,世界的にみて約1000mほど現在の方が高くなっている。そこで1000mにつき約6℃という気温の高度減率を用いて,氷期には現在より気温が6℃ほど低かったなどと推定することができる。

 日本では日本アルプスや日高山脈で多数の圏谷地形を見ることができる。圏谷底の標高はそれぞれ2600m,1600mくらいで,いずれもほぼ森林限界に一致している。圏谷底より上では山地斜面はハイマツなどの灌木林や草地(お花畑)などとなっており,急峻な圏谷壁ともあいまって,典型的な高山景観となる。圏谷底は平たんなこと,水の便があることなどの理由から,登山のベース・キャンプ地となり,山小屋が造られることも多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カール」の意味・わかりやすい解説

カール
Karle, Jerome

[生]1918.6.18. ニューヨークブルックリン
[没]2013.6.6. バージニア,アナンデール
アメリカ合衆国の結晶学者。1937年ニューヨーク・シティ・カレッジを卒業。1943年にミシガン大学で物理化学の博士号を取得,1943~46年マンハッタン計画に参加し,その後海軍研究試験所で働いた。1940年代後半,海軍研究試験所でハーバート・A.ハウプトマン結晶構造の研究で共同研究を始めた。彼らは,X線結晶回折(→X線回折)の結果得られる写真フィルムの多くの点の配置を記述する数式を導き,1949年に発表。その後,この方法を利用して多くのホルモンビタミン抗生物質を含む数千もの低分子生体物質の三次元構造が決定された。1967年に海軍研究試験所の首席科学官となり,2009年に退官するまで研究生活を続けた。その間の 1985年,結晶によって X線が回折されたときに形成されるパターンから化合物の分子構造を推定する数学的方法を開発した功績によって,ハウプトマンとともにノーベル化学賞を受賞した。

カール
Curl, Robert F. Jr.

[生]1933.8.23. テキサス,アリス
[没]2022.7.3. テキサス,ヒューストン
アメリカの化学者。 1957年カリフォルニア大学バークリー校で博士号を取得。 58年ライス大学準教授などを経て,同教授。 85年 R.E.スモーリー,H.W.クロートとともに,黒鉛にレーザーを当てて気化させ新しい炭素分子を作り出す実験を行い,6角形と5角形の頂点に炭素原子をおいたサッカーボール状の構造をもつC60の生成に成功,ドーム構造で有名な建築家のバックミンスター・フラーにちなんで「フラーレン」と命名した。続いてラグビーボール状の C70 も生成。 C60 に関しては日本の大沢映二が 1970年にその理論的可能性を予言していた。非常に対称性が高く安定した性質をもつフラーレンは超伝導物質の材料や新しい複合材料など化学の分野を大きく発展させた。 96年スモーリー,クロートとともにノーベル化学賞を受賞。

カール
Kar; cirque

氷河地形の一種で,原語はオーストリア東部の言葉。圏谷ともいう。氷食地域の谷頭または山腹斜面に発達する半碗状の凹地。側壁は強い氷食の結果,急斜面をなし,底部は緩傾斜で,逆傾斜することもある。圏谷氷河の上縁付近に深い裂け目 (ベルグシュルント ) が生じ,底に達して底部の風化削剥を助ける。北半球では日射や西風の影響などで山地の東および北側斜面に多い。カール底に湖,末端にモレーンが発達する場合がある。日本では日高山脈,日本アルプスなどに存在する。 (→氷河作用 )  

カール
Cale(Cailler), Guillaume

[生]? メーロ
[没]1358.6. クレルモン
フランス,ジャックリーの乱の指導者。ナバール (ナバラ) 王シャルルの軍隊に捕えられ処刑された。

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知恵蔵mini 「カール」の解説

カール

株式会社明治が生産・販売するスナック菓子トウモロコシを原料とした一口大の生地を油で揚げずに乾燥させ、味付けしたもの。名称は、カールした菓子の形状と、昭和30年代に流行した玩具「カール人形」に由来する。イメージキャラクターは野良着姿の「カールおじさん」。1968年に発売された。以来、同社の代表的な商品として長年親しまれてきたが、売上の縮小や生産・販売体制の見直しなどにより、2017年8月生産分をもって中部地域以東(福井県・岐阜県・三重県以東)における販売を終了することが予定されている。以後は関西地域以西(滋賀県・京都府・奈良県・和歌山県以西)のみで「カールチーズあじ」と「カールうすあじ」が販売され、「カールカレーあじ」やその他のシリーズ商品については全国的に生産・販売が終了されることになっている。

(2017-5-30)

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化学辞典 第2版 「カール」の解説

カール
カール
Curl, Robert Floyd, Jr.

アメリカの化学者.テキサス州にあるライス大学で学び,1957年カリフォルニア大学バークレー校で学位を取得.ハーバード大学を経て,1958年母校のライス大学に赴任し,1967年教授となった.星間分子の研究者としてH.W. Kroto(クロトー)とは長年の親交があり,1985年KrotoをR.E. Smalley(スモーリー)に紹介し,フラーレン発見のきっかけをつくった.この発見に対して,1996年Kroto,Smalleyとともにノーベル化学賞を受賞した.

カール
カール
Karle, Jerome

アメリカの結晶学者.ニューヨーク市立大学で学び,1943年ミシガン大学で学位を取得.大学院時代に夫人のIsabellaと出会う.マンハッタン計画に従事した後,1946年海軍研究所に入所.1953年X線回折パターンから位相情報を得る直接法の数学的基礎を,同僚のH.A. Hauptman(ハウプトマン)とともに発表.その後,この方法をさまざまな結晶構造の解析に適用するため,同じく結晶学者である夫人のIsabellaとともに記号和の方法を開発した.結晶構造決定の直接法の開発で,1985年Hauptmanとともにノーベル化学賞を受賞した.

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デジタル大辞泉プラス 「カール」の解説

カール

株式会社明治が販売する菓子。トウモロコシを原料としたノンフライスナック。1968年チーズ、チキンスープが発売。その後カレーやコーンポタージュ味など様々なフレーバーが販売された。2017年、中部より東での販売終了。現在は「チーズあじ」「うすあじ」が西日本限定で販売されている。

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サーフィン用語集 「カール」の解説

かーる 【カール Curl】

波が崩れる直前の一番掘れている力のある部分。ライディング中、この場所にいつも居続けることがサーフィンの基本である。

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367日誕生日大事典 「カール」の解説

カール

生年月日:1862年11月29日
ドイツの政治家
1934年没

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世界大百科事典(旧版)内のカールの言及

【登山】より

…クロアール,リンネ,ルンゼなどいろいろの言葉が用いられるが,だいたい同義である。 カールKar[ドイツ]圏谷。氷河の頭頂部にある半椀状の地形。…

【木曾山脈】より

…また木曾山脈の樹木限界は,標高2500m付近にあるといわれているため,これより低い経ヶ岳・恵那山両地区では高山植生(お花畑や高木林)を観賞することはできない。駒ヶ岳地区の山稜部付近の砂礫地に生育する乾性高山植生は,濃ヶ池,駒飼ノ池,千畳敷,三ノ沢,池ノ平,摺鉢窪(すりばちくぼ)などのカールに見られる湿性高山植生と著しい対照をなし,高山景観に変化と情趣とを添えている。地質では経ヶ岳地区はおもに古生界からなり,駒ヶ岳・恵那山両地区はおもに中生代の貫入になる花コウ岩,流紋岩などからなる。…

【浸食作用】より

…既存の河食を受けた山地の起伏に順応して着生した氷河が山地氷河で,その氷食の結果は特徴的な高山地形alpine landformを現出する。谷奥にみられる圏谷(カール)の場合,圏谷氷河の底部は氷河の移動による圧力の変化によって凍結融解現象がおき,底部に接する岩石を破砕する。さらに巨大な氷体の圧力と独特の回転運動によって,氷と岩屑が削磨作用を及ぼし,平たんまたは凹形の圏谷底をつくる。…

【地形】より

…地形学が地学の中で一大分科をなしているのは,地質・岩石を超越して地形独自の一般性が認められるからである。例えば氷河による浸食地形の典型として圏谷(カール)地形がある。圏谷は山地氷河が谷頭部集水域で,氷体独自の回転運動,氷体の及ぼす底部への重圧と氷体周縁の霜の浸食作用が合作することにより形成される半環状の岩壁をめぐらした特徴的な地形である。…

【登山】より


[近代的登山の発展]
 近代的登山の幕開けとなったのはアルプスの最高峰モン・ブラン(4807m)登頂である。1760年,ジュネーブの自然科学者H.B.deソシュールはフランスのシャモニを訪れ,モン・ブランの初登頂者に賞金を出すことを提唱し,これにこたえ86年シャモニの医者M.G.パカールと案内人の水晶取りJ.バルマが登頂に成功した。ソシュール自身も翌年登頂している。…

【氷河地形】より

…またこれらの地形から,かつての氷河の流動方向を知ることができる。 5万分の1の地形図に表現される程度の大きさの地形としては,氷食岩峰,カール(圏谷),氷食谷などがある。谷の最上流部にはアイスクリームをスプーンでしゃくったような形をしたカールが形成される。…

※「カール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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