日本におけるおもな時代区分(読み)にほんにおけるおもなじだいくぶん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

日本におけるおもな時代区分
にほんにおけるおもなじだいくぶん

現行のおもな時代区分とその名称を3群に分けて掲げた。第一は原始~現代の系列、第二は大和(やまと)~江戸の系列で主として政権所在地を冠称するもの、第三は上古~近世の系列その他、である。第三のグループは、現在では使用が少ない傾向にある。

 *印は独立項目のあるものを示す。

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原始時代
 文明が発達せず未開な社会の時代。文献史料の存在しない時代で、文献によって究明される歴史時代以前の社会をさす。第二次大戦後用いられるようになった時代区分で、それまで考古学者によって研究されていた先史時代にほぼ相当する。考古学では、旧石器(先土器)時代、縄文時代、弥生(やよい)時代に細分。

古代
 原始時代のあと大和(やまと)、飛鳥(あすか)、奈良、平安時代をさす。ときに大和・飛鳥時代だけをいい、奈良・平安時代を上代と分けていうこともある。上古、上世、上代の意味にも用いられる。古代は奴隷制社会であり、日本では3~7世紀末に成立、8~10世紀中ごろを全盛とし、以後12世紀末までを崩壊期とする。

中世
 1185年(文治1)の平家滅亡、源頼朝(よりとも)が守護・地頭(じとう)の補任(ぶにん)を勅許されたころから、1600年(慶長5)の関ヶ原の戦いごろまで、細分して鎌倉、南北朝、室町、戦国、安土(あづち)桃山(織豊(しょくほう))時代をさす。ただし、安土桃山時代を次の近世に含める見解もある。封建制を土台とする社会で前期封建時代ともいう。

近世
 江戸幕府の創立(1603)から明治維新による東京遷都(1869)まで、あるいは関ヶ原の戦い(1600)以降大政奉還(1867)に至る間をさす。江戸時代と重なる。ただし、それ以前の安土桃山(織豊)時代を含めていう場合もあり、後期封建時代にあたる。

近代
 封建制廃止以後の時代。明治維新以降現代に至るまでをさす。明治維新の始期については、1840年代の天保(てんぽう)期、1853年(嘉永6)のペリー来航を契機とする説がある。近代の終期、現代の始期については、世界史的な帝国主義段階に入る1900年(明治33)説、1917年(大正6)の社会主義国ソ連の出現に置く説、1945年(昭和20)の第二次世界大戦終了に置く説がある。

現代
 始期については前項のとおり3説が考えられるが、1955年(昭和30)の保守合同以降とする説もある。かつては明治維新(1868)以後の時代を現代と称する向きもあった。

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大和時代
 律令(りつりょう)国家の成立以前、4~7世紀の大和朝廷を中心とする時代。都がほとんど大和国(奈良県)内にあったためこの称がある。ただし律令制の成立については、大化改新(645)、近江(おうみ)令の施行(671~689)、飛鳥浄御原(あすかきよみはら)令の成立(681以降)・施行(689)、大宝(たいほう)律令の完成(701)・施行などを画期とする諸説がある。考古学上の古墳時代にほぼ一致する。

飛鳥時代*
 大和時代のなかで、奈良盆地南部の飛鳥地方を都とした推古(すいこ)朝(592~628)前後から大化改新(645)とするのが普通である。なお、終期をさらに天智(てんじ)朝(661~671)あるいは平城京遷都(710)にまで下げる説もある。古墳文化に続くのがこの飛鳥文化の時代で、元来は美術史上の区分である。

奈良時代*
 元明(げんめい)天皇の平城京遷都(710)から、桓武(かんむ)天皇の平安京遷都(794)までの8世紀の大半をさす。天平(てんぴょう)文化の花開く時代。厳密には下限を長岡京遷都(784)までとする。

白鳳時代
 飛鳥時代に続く白鳳(はくほう)文化の時代。とくに美術史上の時代区分。7世紀後半から8世紀初頭まで。唐との交通がしきりで、その影響大きく仏教美術の制作が盛んな時代、次の天平文化へと続いていく。白鳳は天武(てんむ)朝(673~686)に用いられた私年号と考えられている。

天平時代*
 天平年間(729~749)を中心とする時代。とくに美術史上の時代区分。奈良時代のうち、天平年間からは天平感宝(かんぽう)(749)、天平勝宝(しょうほう)(749~757)、天平宝字(ほうじ)(757~765)、天平神護(じんご)(765~767)と年号も続き、白鳳時代に次いで美術史上で躍進的進歩を遂げた時代。

平安時代*
 桓武天皇の平安京遷都(794)に始まり、12世紀末の鎌倉幕府の成立までの約400年間、政権の中心が平安京(京都)にあった時代。なお、始期については長岡京遷都(784)、桓武天皇の即位(781)などとする説があり、終期(鎌倉幕府の成立時期)についても次項のような諸説がある。

鎌倉時代*
 12世紀末、源頼朝が鎌倉に幕府を開いてから、幕府の滅亡(1333)までをいう。幕府の成立時期については、(1)東国独立国家の成立、とくに源頼朝の住居完成のとき(1180)、(2)頼朝が東国の国衙(こくが)在庁指揮権を認められたとき(1183)、(3)頼朝が守護・地頭補任の勅許を得たとき(1185)、(4)頼朝が日本国総追捕使(そうついぶし)・総地頭の地位を確認されたとき(1190)、(5)頼朝が征夷(せいい)大将軍に任ぜられたとき(1192)、といった諸見解がある。

室町時代*
 足利尊氏(あしかがたかうじ)が政権を握って室町幕府を開いてから、将軍義昭(よしあき)が織田信長に追われ幕府滅亡(1573)するまでの約240年間。足利時代ともいう。その始期は、尊氏の建武(けんむ)式目制定(1336)あるいは征夷大将軍任命(1338)のときとされる。また、鎌倉幕府の滅亡(1333)または後醍醐(ごだいご)天皇の吉野遷幸(1336)から南北朝統一(1392)までを南北朝時代として、それ以後を室町時代とする説もある。さらに応仁(おうにん)の乱(1467~77)以後を戦国時代として区別する説もある。

南北朝時代*
 後醍醐天皇の吉野遷幸(1336)から、南朝と北朝の合一(1392)までをいう。吉野時代ともいう。なお、鎌倉幕府の滅亡(1333)以後の3年間を含める場合もある。

戦国時代*
 1477年(文明9)応仁の乱がほぼ鎮まり戦国大名が割拠して戦いを始めてから、1568年(永禄11)織田信長の上洛(じょうらく)、あるいは1575年(天正3)長篠(ながしの)の戦いまでの約100年をいう。豊臣(とよとみ)秀吉が天下を一統するまでの時代をいう向きもあるが、これは群雄割拠のときまでにとどめ、その余は次の安土桃山時代に入れるべきである。

安土桃山時代*
 織田信長と豊臣秀吉とがそれぞれ政権を掌握した時代の名称。織豊(しょくほう)時代ともよばれる。安土時代は、信長が足利義昭を擁して上洛した1568年(永禄11)または義昭を追放して室町幕府を滅ぼした1573年(天正1)から、1582年の本能寺の変までとされる。桃山時代はそれ以降、秀吉が没した1598年(慶長3)、あるいは関ヶ原の戦い(1600)までをいう。また終期を江戸幕府の開設(1603)までとすることもある。呼称は、秀吉が晩年に築いた伏見(ふしみ)城を後世桃山城と称したことに由来し、豪壮・華麗な桃山文化といわれる、美術工芸史上の一時代をなした。

江戸時代*
 徳川家康が1600年(慶長5)関ヶ原の戦いに勝利して以降、1867年(慶応3)の大政奉還に至る260余年間の幕藩制国家の時代をさす。厳密には、江戸幕府の開設(1603)から、事実上の東京遷都(1869)までをさすこともある。徳川時代ともいう。

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太古
 太は甚だ遠いの意で、一般には遠く隔たったむかし、おおむかし。歴史上では上古・中古・近古の系列の上古、上世・中世・近世の上世、あるいは上代などとも同意義に使用されている。

上代
 一般的には、おおむかし、かみつよ、上古、上世。また、むかし、古代の意に用いて奈良時代をさす(奈良・平安時代あるいは平安時代だけをいうこともある)。文化史的時代区分としては、飛鳥・奈良・平安時代を総称する。上古・中古・近古の系列の上古と同様、大化改新(645)まで、あるいは平安遷都(794)までをさしていうこともある。上代歌謡、上代文学、上代仮名などとして用いられている。

上世
 一般的には、おおむかし、かみつよ、いにしえ、上古、上代をいう。中世・近世の前代をいう。また、下世(かせい)(下っての世、後世)の対(つい)にも用いられる。

上古
 一般的には、おおむかし、かみつよ、太古、上世、上代をいう。中古・近古に対する語。歴史上の時代区分では、文献を有する限りでもっとも古い時代。蘇我(そが)氏の滅亡、大化改新のころまで、あるいは大和時代にあたっている。

中古
 なかむかしをいい、中世に対応し、また上古(太古)・近古の間の時代。歴史上の時代区分としては、646年(大化2)の大化改新の詔(みことのり)から1192年(建久3)源頼朝が鎌倉幕府を開いたころまでをいう。文学史では、一般に平安時代を中心にした時期をいう。

近古
 多くの年代を経ていないむかし、すなわち近いむかしをいう。上古・中古に対して用いる語。歴史上の区分では、中古と近世との間の時期をさす。日本の場合、鎌倉幕府開設の1192年(建久3)から、室町幕府滅亡の1573年(天正1)、あるいは江戸幕府の創立1603年(慶長8)までの約380年から410年ほどの間。近古文などとよく使用される。

近世
 現在に近い世の中。近古と現代の間をいう。なお、古代・中世・近世と続く系列の場合は別項に示した。

[小野信二]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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