(読み)なのめ

精選版 日本国語大辞典 「斜」の意味・読み・例文・類語

なのめ【斜】

〘形動〙
① 傾いているさま。山や丘などがなだらかに傾斜しているさま。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※大唐西域記巻十二平安中期点(950頃)「山川邐迤(りい)となのめにして土地沃壌なり」
② ありふれているさま。平凡なさま。あたり前であるさま。普通。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「世の末、なのめに、はかなげにやはおはする」
③ (特に、普通でだめだという気持をこめて) すぐれたところがなく、不十分なさま。たいしたことのないさま。
源氏(1001‐14頃)葵「なのめにかたほなるをだに、人の親はいかが思ふめる」
④ 通りいっぺんで、いいかげんなさま。全力を挙げて当たらないさま。
※枕(10C終)二六二「世をなのめに書き流したることばのにくきこそ」
⑤ (「なのめに」の形で) 「なのめならず」と同意に用いる。
謡曲烏帽子折(1480頃)「この左折り烏帽子を折らせられ、君にご出仕ありし時、帝斜(なのめ)に思しめし」
[語誌](1)仮名書きの確例は上代になく、中古以降に初めて確認されるが、「ななめ」より早くに見られる。
(2)本来、ゆるやかな傾斜を表わし、垂直でもない、水平でもない、どっちつかずの状態を表現するという。本居宣長が「源氏物語玉の小櫛‐八(上ノ若菜)」で「すべてなのめは俗にたいがいなるといふ意」と注しているように、平凡やありきたりという②の意を表わすが、多くはその状態を否定的・消極的に評価・判断する気持が加わり、③④の意になる。
(3)「ななめ」が漢文訓読文に使われるのに対して、「なのめ」は和文に数多く見られる。中世以降は「なのめならず」の形がもっぱら行なわれ、単独原義用法は忘れられていって、「ななめ」がこれに代わる。

はす【斜】

〘名〙 ななめ。すじかい。はすかい。
※雑俳・柳多留‐四(1769)「文使むす子をはすにまねき出し」
※画の悲み(1902)〈国木田独歩〉「馬の顔を斜(ハス)に見た処で」

しゃ【斜】

〘名〙 垂直または水平に対して、かたむいていること。ななめ。はす。はすかい。すじかい。
※或る女(1919)〈有島武郎〉前「帯もなくほっそりと途方に暮れたやうに身を斜(シャ)にして立った葉子の姿は」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「斜」の意味・読み・例文・類語

しゃ【斜】

傾いていること。水平・垂直でないこと。ななめ。はす。
[類語]斜めはす斜交はすか斜掛はすか筋交すじか筋違いなぞえ袈裟けさ懸け斜面筋向かい

はす【斜】

ななめ。はすかい。「道をに横切る」
[類語]斜め斜面はすかい筋向かい斜掛はすか筋交すじか筋違いなぞえ袈裟けさ懸けしゃ

しゃ【斜】[漢字項目]

常用漢字] [音]シャ(漢) [訓]ななめ はす
傾いている。ななめ。「斜影斜光斜線斜面斜陽傾斜
難読斜交はすかい

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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