打合(読み)うちあわせる

精選版 日本国語大辞典 「打合」の意味・読み・例文・類語

うち‐あわ・せる ‥あはせる【打合】

〘他サ下一〙 うちあは・す 〘他サ下二〙
① 物と物とを互いに打って、うまく合うようにする。
(イ) 楽器などを打ってうまく合うように演奏する。合奏する。
源氏(1001‐14頃)御法「うちあはせたるつづみの声たえず、おもしろし」
(ロ) 合うようにぶつける。ぶつけ合わせる。
今昔(1120頃か)二八「或は己等どち頬を打合せて仰様に倒れ」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉好機会「夫人はわれと杯を打(ウチアハ)せて」
② (「うち」は接頭語) 互いに合うようにする。
(イ) 合唱する。
※源氏(1001‐14頃)宿木「按察もむかしすぐれ給へりし御声のなごりなれば、いまもいとものものしくてうちあはせたまへり」
(ロ) 二つの物を近寄せて、うまく合うようにする。かきあわせる。
※枕(10C終)七六「六位の蔵人の青色など着て〈略〉袖うちあはせて立ちたるこそをかしけれ」
(ハ) あわせて一つにする。いっしょにする。
史記抄(1477)四「こわけにわけたしをうちあわせて大なる一県として」
(ニ) 鷹狩りで、獲物をねらって鷹を飛ばせる。
※今昔(1120頃か)一九「少去て立てる鷹飼、鷹を放て打合せつ」
③ (「うち」は接頭語) 都合などがうまく合うように、前もって相談する。
暗夜行路(1921‐37)〈志賀直哉〉三「翌日汽車時間なども打合はせた」

うち‐あわせ ‥あはせ【打合】

〘名〙
① 物と物とをうまく合うようにすること。似合っていること。
俳諧鶉衣(1727‐79)前「うち合せの夫婦とはなりける」
能楽で、両手を大きく左右に広げてから前でハタと打ち合わせる型。
③ 楽器を合奏すること。
(イ) 雅楽で、打ち物だけの合奏。
(ロ) 三味線などの演奏で同一または類似の旋律を、半拍または一拍ぐらいずらして合奏すること。
※歌舞伎・曾我綉侠御所染(御所五郎蔵)(1864)六幕「胡弓尺八の打合(ウチアハ)せよろしくあって」
(ハ) 箏曲(そうきょく)や地唄で別の曲を合奏すること。全曲の場合と、曲の一部分だけの場合の二種がある。前者には「八千代獅子」と「万歳獅子」、「れん木」と「すり鉢」など、後者には「萩の露」と「磯千鳥」のちらしの部分などがある。
※歌舞伎・木間星箱根鹿笛(1880)二幕「あの琴の打合せも、定めし東京のお客であらう」
④ 前もって相談しておくこと。下相談。
※舞姫(1890)〈森鴎外〉「おほやけの打合せも済みて、取調も次第に捗り行けば」
⑤ ジャケット、コートなど洋服類の身頃の左右の重ねが合ったところ。うちあい。

うち‐あわ・す ‥あはす【打合】

[1] 〘他サ下二〙 ⇒うちあわせる(打合)
[2] 〘他サ五(四)〙
※坑夫(1908)〈夏目漱石〉「二三度上瞼(うはまぶた)と下瞼を打ち合して見たが」
※花間鶯(1887‐88)〈末広鉄腸〉上「充分打ち合(アハ)して置かねばなるまい」

ぶち‐あ・う ‥あふ【打合】

〘他ワ五(ハ四)〙 互いになぐり合う。代わる代わるなぐる。うちあう。
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)「投げてくれんと胸ぐら取、ぶちあひねぢあひたたきあふ」

ぶち‐あい ‥あひ【打合】

〘名〙 なぐり合うこと。うちあい。

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